研究課題/領域番号 |
19K01603
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 神奈川大学 (2021-2022) 富山大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
岩田 真一郎 神奈川大学, 経済学部, 教授 (10334707)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 高齢者 / 住宅資産 / 住宅価格 / 労働供給 / 労働時間 / 就業 / 相続 / 親子 / 同居 / 引退 / 持ち家 / 資産移転 / 交換動機 / 介護 |
研究開始時の研究の概要 |
高齢者世帯の総資産額は約6700万円にのぼり、その7割が宅地を含む住宅資産とされる。本研究は高齢者の資産活用に注目し、①高齢の親が引退後の生活維持のために、住宅資産を遺産として残す代わりに、子の介護支援を引き出せるかを、②住宅取得に係る贈与税率緩和が、親からの子への金融資産の世代間移転を促進し、子の住宅取得額を増加させるかを、③住宅資産価格の変動が、高齢者の引退時期に影響を与えるかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は高齢者が所有する住宅資産を活用してどのように生活維持を試みようとしているのかを『日本家計パネル調査』の個票データを用いて実証的に分析することである。取り組んでいるテーマは次のテーマ①とテーマ②である。テーマ①は「高齢の親は所有する住宅資産を子に相続させることで、生前に子からの金銭的支援を引き出せる」という仮説の検証であり、テーマ②は「住宅資産が予想外に積み上がると、高齢者は労働供給を減らす」という仮説の検証である。本年度はテーマ②について、国内外の学会での発表や国外研究者との討論を通じて完成を目指した。 住宅価格が予想外に上昇して住宅資産が積み上がると、所得に余裕が生まれるため、持ち家所有者は余暇時間を増やし、労働供給を減らすかもしれない。この仮説を検証するため、本研究では持ち家所有者の住宅価格を過去の住宅価格や築年数などに回帰し、説明できない部分を予想できない住宅価格と定義し、労働時間をこの予想できない住宅価格に回帰した。 その結果、労働参加率や労働日数については有意な影響は確認できなかったが、労働時間については、60歳以上の非正規で働く女性と65歳以上の正規で働く男性の間で、それを有意に減らすことを確認した。 このような結果が得られた理由として、住宅市場および労働市場の流動性の低さが考えられる。日本では既存住宅の転売が容易ではないため、住宅を売却しても現金を得にくい。また、勤続年数が長くなるほど賃金が高くなる傾向にあるため、仕事を辞めたり、仕事日数を減らしたりすると収入が大きく減少してしまう。したがって、住宅価格が予想外に上昇したからといって、仕事を辞めたり、仕事日数を大幅に減らしたりすると、使える現金の量がかえって減ってしまうかもしれない。このため、仕事時間の減少という微調整に止めていると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
テーマ②については国内外の学会での発表や泉原美佐教授(ブリストル大学)の研究室での議論の結果、問題点などが解消され、論文の改善が進んだ。また、高性能なパソコンを新規に用意した結果、計算速度が高まり、様々な推計を試す時間を確保できた。 一方、テーマ①については新たな変数の考案、作成に追われ、データの分析や論文の執筆まで至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
テーマ②については論文がほぼ完成しているため、校閲後、査読付き学術誌に投稿したいと考えている。 引き続き、テーマ①の推計に移り、論文にまとめる予定である。
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