研究課題/領域番号 |
19K01626
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
関 絵里香 大阪大学, 大学院経済学研究科, 招へい教授 (40611695)
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研究分担者 |
竹内 あい 立命館大学, 経済学部, 准教授 (10453979)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 河川流域環境管理 / 経済実験 / Collective action / Uncertainty / Waste diposal / Flood hazard / Ambiguity / Waste disposal / Flood harzard |
研究開始時の研究の概要 |
河川流域環境の上流と下流住民の行動の依存関係と、流域に起こる環境・健康被害や被災の不確実性を顕示した行動理論モデルを構築しどのような情報制度が流域住民の「社会を省みる性向(social mind)」を活性化し、流域環境管理への自律的貢献意欲や行動を促すか、経済実験の手法で精査する。多様なステークホルダーの自主管理への協力行動を促す為の情報提供の仕組みを考察する。
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研究実績の概要 |
【1】理論モデルの再構築 確率分布関数の3種類の形状(限界確率逓減 (Concave)、一定 (Linear)、逓増 (Convex))をベータ分布の(α,β)を(2,1) (1,1) (0.5,1)に対応させ、既存の廃棄物量を所与とし、確率分布関数が既知の場合の理論分析を行った。(1) リスク中立性の下での対称均衡貢献は、確率分布関数がLinearな場合はゼロ(ただ乗り均衡)のみ、ConcaveとConvexの場合、既存の廃棄物量に応じて協力均衡が存在することが解った。 (2) リスク回避性を考慮に入れた期待効用分析によると、対称均衡貢献はそれが存在するとき、確率分布関数がよりConcaveになるにしたがって増えることが解った。一方、リスク回避性と確率分布関数の形状との絡み合い(リスク回避性の下での対称協力均衡が存在する条件、リスク態度と均衡貢献量との関係)の分析は取り組み中である。 【2】実験2の実施 2022年8月および10月に社会経済研究所経済実験室の協力を得て287名の参加者を募り実験2(オンライン)を行った。確率分布に関する情報(情報有り(Full-info) 無し(No-info))と確率分布関数の形状に応じて以下の4処理を行った。処理1:No-info・Linear; 処理2:Full-info・Convex; 処理3:Full-info・Linear 処理4:Full-info・Concave。実験1(2020~2021年度に実施)と同様、4人一組のグループ(組み換え無し)で12回意思決定を繰り返した(4つの異なる既存廃棄物量を3回ずつ)。実験2では実験1で提供した各回の結果(被災したか否か)をフィードバック情報に含まなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要【1】(2)に記述したように、リスク回避性と確率分布関数の形状との絡み合いついての分析はまだ未完である。実験2の結果の暫定分析の概要は以下の通り。i) 確率分布関数の情報有り (Full-info)の 処理2、3、4の結果によると、平均貢献量は Convex, Linear, Concaveの順に増えた。ii) 確率分布関数の情報なし(No-info)の 処理1の平均貢献量はFull-info・Linear 処理3とFull-info・Concave 処理4の間に位置した。
再構築したモデルに則った実験2のセッションは8月に開始したが、なかなか十分な参加者が集まらず、10月までずれ込んだ。この遅れの影響で実験1と実験2の結果の統合的分析には至っていない。これまでの暫定分析の概観から実験1と2の間に予期しない差異が見受けられた。それは実験1ではすべての既存廃棄物量でFull-infoの平均貢献量はNo-infoの平均貢献量より少なかったが、実験2のFull-info・ConvexとNo-info・Linearの平均貢献量の大小関係は、既存廃棄物が比較的高いとき、逆転する傾向があった。この差異には実験1と2のフィードバック情報内容の違い(実験1では各回の結果(被災の有無)をフィードバックしたのに対し、実験2ではフィードバックしなかった)が影響したと考えられる。実験1のフィードバック情報がNo-infoの参加者に何らかの学習効果をもたらしたか考慮する必要がありそうだ。また個人レベルの分析で、曖昧性回避性またはリスク回避性と確率分布関数の形状との絡み合いについて掘り下げることも有意義かもしれない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の背景にある実社会課題は、途上国で特に深刻化している、河川流域の上流から漂流、下流域に滞留し洪水災害や健康被害をもたらす廃棄物の問題である。本研究では、社会的に望ましい行動(例えば地域住民によるごみ処理活動)を支える「社会を省みる性向 (prosociality)」を非可塑な個人属性とせず、情報提供の仕組みによってを活性化する可能性を模索する。その第一歩として、滞留廃棄物が誘発する洪水被害確率についての情報の提供が、自律的な廃棄物処理への協力行動を促すか、を検討する。
これまでの研究活動(フェース1~3)と今後の方策は以下の通り。フェース1:事例研究地域での越境資源管理問題を分析するために妥当な行動モデルを構築。フェース2:行動モデル(上流域から漂流する既存廃棄物量および洪水被害確率とごみ処理行動との関係)を用いて洪水確率に関する情報提供が自発的貢献(自律的ごみ管理への協力行動)にどのような影響があるか推論。フェース3:行動モデルが想定する状況下での行動が、理論予測と整合するか(内的妥当性)経済実験で検討。最終年度ではこれまで行った実験1と実験2の統合的分析を行い、フェース3を完結する。
実験結果の暫定分析は確率分布関数の形状が貢献行動に影響すること、客観的確率分布の情報提供が社会的に望ましいか否かは、現状での主観的確率分布の形状にも拠ること、を示唆している。今後、本研究の背景にある実社会課題に取り組むには、洪水災害確率予測の現状や、河川流域での堆積廃棄物と洪水確率の関係に関する知見のほか、事例研究地域の住民が認識している主観的な確率分布の形状を明らかにする手法を模索することが必要である。そこで最終年度では、これまでの研究結果をまとめてコメントに付すとともに、実社会課題に立ち返りつつ、将来の展開フェース(外的妥当性を検討するフィールド実験)につなげる機会を模索する。
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