研究課題/領域番号 |
19K01655
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
木村 雄一 大分大学, 経済学部, 准教授 (80419275)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2020年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 土地所有制度 / 信用アクセス / 労働移動 / 所得分配 / 政治参加 / 土地利用・労働移動 / 土地利用 / 資金市場・資金アクセス / 土地所有分配 |
研究開始時の研究の概要 |
中国で施行されつつある公的な土地権利改革は、全国から選別された限られた地域で社会的に施行 されているところである。本計画は、過去数年および現在施行段階にある新しい土地制度変更によ り農業家計にもたらされた賃料貸与権、資金借入のための担保権が、農村家計・組合による土地 取得や利用、土地への投資に関する選択、農村の市場経済化と所得向上にどう影響するか、所得 分配への影響、特に不本意な土地売却にどう影響するか、3) これらの制度変更がもたらす、土地の 実質的な私的所有権拡充が、農村住民の政治参加への含意を持つか、の3つの論点ついて、地理的 分断設計の社会実験データ収集と分析によって検証する。
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研究実績の概要 |
本計画は現地調査によるデータ収集、それに基づく計量経済学的な分析に依存する。当初から計画期間を2019年から2021年の3年間に設定していたが、調査を実 施できないまま最終年度まで経過、2022年度に延長、2023年度に再延長した。2023年度終了時点で予備調査も本調査も実施できていない。したがって当然データ はなく、その分析結果もない。つまり「研究実績の概要」に相当する内容は全く作り出し得ていない。
中国のコロナ感染状況と国の感染防止政策の動向に注視してきており、2022年度開始前の希望的観測としては、2022年夏までに予備調査、2022年度後期末の春 に本調査をできることを念頭に置いていた。実際は、2022年夏には感染状況・中国政府の方針により入国不可、さらに 2023年2月には国家主席3期目就任が 関係した党大会の直後であり、コロナ収束直前であったが感染対策のデモ騒動が重なり、国内が政治的に緊迫した状況になった。さらに国際関係の緊迫が重な り、年明けから日本人のみならず、一時は中国人でも日本からの帰国が困難になった。
2022年度中には、渡航可能になった場合に備え、質問票の準備だけは進めた。これ以外では、ビザ取得、そのための招聘状取得の可能性に向けて各方面にアプ ローチしたのみであった。引き続き、渡航情報に注視するとともに、招聘状・ビザ取得に向け、大分市と武漢大学を通じる経路と、2023 まで修士課程学に在学していた学生と山東省社会科学院を通じる経路でアプローチしていたが、現在1年間経過し、これらの経路いずれでも進捗はない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
筆者はこの年度の春季休業中の2023年度2月に中国国内にある調査予定地への渡航を目指してビザの取得の可能性を探った。結果は芳しくなく、ついに渡航する 事はできなかった。渡航のための努力過程、および事情は下の通りである。 2022年度を通じて、引き続き、コロナウィルス蔓延の影響から、また中国と日本の外交関係から、日本人の中国渡航は厳しい状況にあった。ビザ取得には、この 年から、中国国内の事業所または機関からの招聘状を必要とする制度の厳格化があった。この招聘状の取得が最も困難であり、 3通りの方法で取得の努力をし た。まず、大分市のJICA事務局を通じてJICA北京事務所、さらに調査予定地である山東省と寧夏省へ発行依頼してもらう方法、次に、大分市と姉妹都市協定を結 んでいる武漢大学に、大分市の国際部を通じて発行依頼してもらう方法、最後に、筆者が担当する修士課程学生の親戚で山東省、社会科学院に勤務する研究員の 方を通じて、山東省社会科学院発行を依頼する方法であった。 結果はいずれの経路でも招聘状発行に至らなかった。困難は中国国内の諸事情による。これらの方法を模索した2022年10月から1月にかけては、国家主席3期目 就任を決定する党大会の前後であったことにより、国内のあらゆる機関が政治的に慎重な態度であったこと、引き続きパンデミックが収まっていなかったこと、 日中関係に困難が生じていることなどである。2022年年末から年明けにかけて、日本人は完全な入国停止措置がとられたし、上述の中国人、大学院生さえ、入国 が不可能であった。 1年経過し、参考に本年度中国人の渡航状況を見ると都市近郊農村への調査渡航は一応の可能性があるようである。しかし日本人についてはかなり厳しい状況が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
中国農村の調査地への日本人入国が厳しい状況が続く間、研究課題を再検討する作業をしてきた。 従来、本計画は土地権利と土地に関する制度が、農業家計の農業投資、および土地以外の経済的選択:教育投資、移住、職業選択などにどう影響するかを検証することを主題として設定していた。 この土地制度と経済行動の関係についての研究計画は、農村家計の行動選択の自由度を向上させる目的で、概ね善意の政府が制度設計を改革する状況を観察しようとするものであった。新たに策定した計画は、善意の政府ができるかできないか、次いで制度形成がどのように為されるか、そしてそれらによって、経済成長と貧困削減の成果の違いがどのように影響されるか、という根本的な問いを探究するものである。これらを踏まえ、制度形成を内生的に捉え、所得向上や貧困削減の成果の違いに対する要因分析が、より重要な研究課題であると見定めるに至った。制度の形成経路の違いに対して最も重要視される要因は、社会階層間の利害一致・摩擦の度合である。 制度形成と世界の地域間所得格差に対して、旧植民地諸国をサンプルにした Acemoglu et al. (2001)、外国介入の制度形成への悪影響を明示的に取扱った研究として、英帝国介入がインドで施行した zamindari(徴税代理人制度) と民主制度形成、所得水準への影響を分析した Banerjee and Iyer (2005)、冷戦期のソ連、アメリカによる秘密作戦および軍事介入が及ぼした被介入各国の制度形成への影響に関するEasterly et al. (2013) などがある。これらの先駆的研究も、土地所有構造・権力構造の初期条件と制度形成経路については明示的でない。200年ほどの長期の制度形成と大国介入の影響、現在の社会厚生へのインパクトを、土地所有・権力構造への影響を明示的に考慮して分析する余地がある。
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