研究課題/領域番号 |
19K01667
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
池田 真介 小樽商科大学, 商学部, 教授 (90598567)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 自殺 / 電源立地地域対策交付金 / 孤独 / 孤立 / リアルオプション / 自殺リスク / オプション価値 / 実証研究 / 孤独死 / 孤立死 / 孤立リスク |
研究開始時の研究の概要 |
孤立リスクと、その重大帰結である自殺や孤立死への理解を深め、将来の政策提言の基礎を得るための本研究の概要は以下の通りである。第一に、孤立死亡者数の行政データを収集し、申請者がこれまで構築してきた市区町村自殺パネルデータベースと接合したうえで、両者の関連を計量経済学的に分析する。特に、ハイリスク地域の異質性を表現可能な動学パネル分位点回帰に経済厚生の下方不平等度を説明変数として導入し、自殺や孤立死との関連を探る。第二に、フィールドワークから質的情報や上記の量的情報に基づき質問票を作成・精査し、それによるアンケート調査を実施することで、個人の「孤立リスク」や社会経済状態を計測し、両者の関連を探る。
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研究実績の概要 |
1.2009年度から2022年度に全国で実施された「電源立地地域対策交付金」(以下「電源交付金」と称する)事業のデータのうち、事業主体(地方自治体名)、事業名称、事業概要、総事業費、交付金充当額等、備考、を記した表データのpdf文書を資源エネルギー庁ホームページ及び国立国会図書館アーカイブからダウンロードし直した。次に、pdf文書上に残っている表構造を利用して、(1)pdf上でCtrl+Aで全選択したデータをWord文書に表として貼り付け、(2)それをExcelで読み込み、(3)多少のクリーニングをすることで、表データとしての構造の大部分を温存したままデータの読み込みと電子化に成功した。当該データは数値計算ソフトウェアMatlabで読み込んで鋭意分析を進めており、テキスト分析の手法を用いた事業概要の分類に取り組んでいる。 2.電源交付金事業データと組み合わせる本邦の自殺データを厚生労働省「自殺の統計:地域における自殺の基礎資料」ページからダウンロードし、鋭意クリーニング(特に2009-2014の市町村再編にまつわり散らばっているデータの再編成)を進めている。 3.孤独・孤立の自殺リスクに関するサーベイ調査に取り掛かるにあたり、社会調査方法論の近年の学術的な発展を調べている。特にウェブ調査における「総調査誤差」枠組みの理論的な把握や実証上の含意、ウェブ調査に取り掛かる際の調査会社の選定やその調査方式の長短、およびウェブ調査における質問票や質問のインターフェイスが回答者の回答行動に与える影響に関する先行研究のレビューを行っている。 4.ワークステーションを購入し、研究代表者長年の課題である自殺のリアルオプション理論の数値シミュレーション分析を再開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者がサバティカル休暇に入っているため、これまで学内・教育業務に費やしてきた時間の大部分を研究に充てられている。これにより研究実績1のような電源交付金事業のデータをより正確で扱いやすい形に捌くことが可能となった。また当該データと格闘したことから研究代表者にテキストデータの処理のスキルが蓄積し、本研究課題開始当初よりも格段に効率的なデータ処理が可能となった。さらに昨年度末から開始した本邦弱者男性に関する研究に伴う知識の増大により、これまで本課題の懸案であった調査方法論の体系的な吸収が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
1.電源交付金事業の概要をテキスト分析の手法で分類する。特に、保健・厚生分野での「人件費」や「給料」などのキーワードを概要に含む事業は地域の孤独・孤立・自殺リスクを低減すると期待される。また、2011年の福島第一原発の事故により全国的に高まった原子力行政への不信感を契機に、原子力の理解促進を目的とする事業が増え保健・厚生分野の事業が減った可能性について確認し、地域の自殺率への影響を探る。 2.市町村再編に関わる自殺データの処理について厚生労働省に問い合わせる。また、電源交付金事業の総事業費を「交付金充当額」と「それ以外」に分解し、保健・厚生分野の人件費に充てられている電源交付金事業のダミー変数を組み合わせて、保健・厚生分野での人件費が地域の自殺リスクを抑制しているのかを地域パネル回帰分析で調べる。また2011年前後の非被災地で自殺率が電源交付金対象地域とそれ以外の地域で系統的に異なっているのかを検証する。 3.社会調査の学術的知識を基に、孤独・孤立リスクを測る指数を構成するために複数の質問からなる質問票を作成し、調査会社に調査依頼する。それにあたり、調査実施前に、できる限り標本に母集団の人口学的構成を反映させるべくクロス抽出や事後層化が実行しやすい調査デザインを検討し、プリテストを行っておく。また質問票には回答者の「弱者性」に関する項目を入れておくことで、本邦男性弱者の孤独・孤立・自殺リスクの関連を探る。 4.自殺のリアルオプションモデルのドラフトでは2010年頃までの本邦男性各年齢階層の粗自殺率データに基づき自殺リスクのシミュレーションを行っていたが、これを2022年のデータにまで拡張したうえで再推計する。
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