研究課題/領域番号 |
19K01683
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
坂本 徳仁 東京理科大学, 教養教育研究院野田キャンパス教養部, 准教授 (00513095)
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研究分担者 |
吉原 直毅 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 客員教授 (60272770)
後藤 玲子 一橋大学, 経済研究所, 教授 (70272771)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 福祉指標 / 選択機会の価値 / 非帰結主義 / 厚生経済学 / 社会選択理論 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、国内総生産に代わる豊かさの指標として、人間開発指数や多次元貧困指標などの指標が提案・活用されているが、これらの指標には個人の「選択機会」や「手続き」の価値を無視するという問題がある。本研究では、①選択機会や手続きの価値を明示的に組み入れた評価方法を理論的に検討すること、②差別と格差が深刻なインドにおける訪問面接調査から得られるデータを用いて、従来の指標と選択機会や手続きの価値を考慮に入れた豊かさの指標を比較分析すること、といった作業を行い、代表的な福利の評価方法や非帰結主義に基づいた評価方法にどのような優位性ないし欠陥が生じるのか実証的に解明し、その改善方法を模索することを目的とする。
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研究実績の概要 |
2022年度の研究実績の概要は以下の4点である。 第一に、研究代表者が発見し、公理的に特徴づけた「一般化レキシミン」の論文を修正・再構成の上で、現在査読誌に投稿・査読中の段階にある。 第二に、累積的な剥奪(所得、教育水準、健康状態、家財の保有状況、市民的諸権利、政治的自由などの人間の福利水準や生活水準の良さを構成するさまざまな要素において不利な状況にあること)を評価するための理論的な枠組みを一般化することに成功し、非常に一般的な公理系のもとで機会の不平等を評価するための数学的な枠組みを解明することに成功した。さらに、累積的な剥奪と機会の不平等を評価するための非常に利用しやすい実用的な方法論の開拓にも成功した。これらの大きな諸成果を論文にまとめている最中である。 第三に、2021年度にかけてまとめた実証分析の研究(代表的な福利指標を比較分析し、等価所得アプローチが優位性原理を満たさない頻度を実証的に解明した研究)については、以前の研究で得られたデータを用いる形で複数の代表的な指標(①金銭指標、②等価所得指標、③多次元貧困指標、④生活満足度)のもつ統計上の問題点を解明する形で論文にまとめて、最終的にSpringer Nature社より公刊される予定のOpen-accessの書籍に収録されることとなった。 第四に、累積的剥奪、多次元貧困、機会の不平等、従来の主要な福利指標のもつ諸問題を考慮するために先行研究を調査し、これらの研究に関する歴史的な流れを把握・解説する論文を執筆し、この分野における国際的な指導者であるマーク・フローベイ教授の総説論文の邦訳とともに、訳者解説という形で出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の理論と実証の分析においては、前年度から仕上げていた研究を公刊するべく努力し、一部は公刊されることになった。さらに、社会評価問題の実践上、大きな課題とされていた累積的な剥奪を評価するための理論的・実用的な枠組みを整備することに成功し、理論的な分析結果と実用的な応用の方法論を論文にまとめているところである。以下、現在までの進捗状況を3点にまとめる。 第一に、研究代表者の発見した一般化レキシミンの論文は学術誌で公刊できるように投稿・改訂の作業に努めた。 第二に、2021年度から進めてきたコンセンサス・アプローチを実践的に使用するための研究を進めることで、累積的な剥奪と機会の不平等を評価するための理論的な枠組みを一般化することに成功した。この研究成果は当初の想定を遥かに上回る重要な成果であるため、現在ワーキング・ペーパーにまとめている最中である。 第三に、累積的剥奪評価と機会の不平等の評価の研究に大きな進展が見られたため、後藤玲子教授、吉原直毅教授(両名とも研究分担者)との共同研究である①選択機会の価値を考慮する資源配分ルールの公理的特徴づけ(効率性、相対ランクの保存性、匿名性、均等対応の原理)、②すべての人が享受できる共通の選択機会を極大化することがもつ均質化の問題(共通機会を極大化することは、多様な資質・能力をもつ個人間で多様な選択機会が享受できる可能性を排除してしまうという問題)、の研究については論文にまとめる作業が滞り、結果的に2023年度にまとめることを目標としている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究活動で当初の想定以上の大きな進展を得ることができたので、累積的剥奪と機会の不平等を評価するための理論的な成果と応用上の方法論の結果についてワーキング・ペーパーにまとめ、国際学会・研究会で報告し、学術雑誌での公刊を目指すこととする。 以下、最終年度における研究の推進方策は以下の三点にまとめられる。 第一に、現在学術誌に投稿・査読中の「一般化レキシミン」の研究の公刊に努める。第二に、実践的な応用例である分位平均比較法と区間人口比比較法を諸外国の状況比較や多次元の変数(とりわけ潜在能力アプローチ)に応用するための新たな枠組みを検討する中で生み出すことに成功した機会の不平等や累積的剥奪の実践的な評価の方法論を論文にまとめる。この結果は社会評価の実践において非常に重要なものであるため、一部の分野の学術上の交流のみにとどめず、学問領域を超えた学際的な交流および実務家との交流とともに、国際的に著名な研究者たちとの連携も強化する形で、成果の普及および改善に努める。そのためにも、著名な研究者を招聘する形で研究会を開催するとともに、一般向けの解説の執筆にも努める。第三に、2022年度中に予定通りには進めることができなかった潜在能力アプローチの理論研究を完成させるために、研究分担者の吉原氏、後藤氏の協力のもとで共同研究を強力に進め、ワーキング・ペーパーにまとめる。とくに、選択機会の平等を表現する二つの概念(潜在能力集合の「評価値の平等」と「共通部分の極大化」)の違いがもたらす数学的な性質を明確化することで、望ましい選択機会の評価の在り方を理論的に整備する。
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