研究課題/領域番号 |
19K01707
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
座主 祥伸 関西大学, 経済学部, 准教授 (40403216)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 法と経済学 / 包括担保 / 特定性の原則 / 担保制度 / 包括的制度 / 特定性の原理 / 担保 / コーポレート・ファイナンス / 英米法 / 大陸法 / 破産 / 保証 / 再スタート / 個人保証 / 起業行動 / コーポレートファイナンス |
研究開始時の研究の概要 |
起業行動は、企業の新陳代謝を通じ、イノベーションや経済成長を推進する重要な要素である。 しかし、日本の開業率は低迷し続けている。この原因の一つとして、融資の際に経営者が個人保証や 外部担保を設定しなければいけないことが起業を抑制しているという懸念が挙げられている。他方で、起業が盛んな米国でも多くの中小企業経営者は企業融資の際に個人保証や外部担保を拠出している。このことは、個人保証が起業を妨げている原因ではなく、他の制度が影響している可能性を示している。本研究では、個人保証に加えて外部担保・内部担保、破産時の差押禁止財産も考慮に入れ、契約理論のアプローチによって起業を促す法制度を考察する。
|
研究実績の概要 |
企業の在庫や売掛債権等、現在存在していない将来資産への担保の設定が英米法の国と大陸法の国では特徴的な違いがある。一般的に英米法の国では、floating chargeと呼ばれるような担保を包括的に設定する。一方、大陸法の国では特定性の原則と呼ばれる法概念が働き、担保を種類別や個別に担保として設定しなければならない制度の傾向がある。本研究では、このような制度の違いが、融資契約を通じて、起業家のインセンティブや、担保とする財産の相違、信用市場と株式市場に与える影響について考察し、比較法の経済分析を行っている。 日米での担保財産の違いを見ると、日本では不動産を担保する割合が高く、米国では在庫や売掛債権を担保する割合が高い。この違いを説明する一つの仮説として、担保制度の違いが挙げられる。担保制度の違いが、担保財産の違いを生み、起業のインセンティブに影響を与えている可能性について、考察した(論文1)。この論文は、23年度、あるジャーナルに投稿していたが、リジェクトされた。レフェリーからのコメントを参考に、別のジャーナルに再度投稿するために、再度分析を行っている。この分析をまとめた後、投稿を行う。 別の論文として、日本では相対的に信用市場が発展しており、米国では相対的に株式市場が発展している。企業の研究開発を念頭に、外部ファイナンスとして企業が融資を利用できる場合に加えて、株式で資金調達する場合も検討している(論文2)。 これら二つの論文に加えて、企業外の資産を担保とする外部担保(経営者の自宅不動産等が対象となる場合が多い)、企業内の資産を担保とする内部担保、個人保証の比較を行い、まとめている(論文3)。論文3では、その際、従来の分析では明示されていない第二の債権者との関係と併せて分析を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究論文1は、23年度中に国際誌での公表を目指したが、残念ながらリジェクトされたため、再度投稿を行うために、レフェリーからのコメントを参考に再度分析を行い、再投稿の準備中である。別の論文として、日本では相対的に信用市場が発展しており、米国では相対的に株式市場が発展している。企業の研究開発を念頭に、外部ファイナンスとして企業が融資を利用できる場合に加えて、株式で資金調達する場合も検討している(論文2)。この論文についても、論文1のレフェリーをコメントを参考に、再度、考察を加えている。これら二つの論文に加えて、企業外の資産を担保とする外部担保(経営者の自宅不動産等が対象となる場合が多い)、企業内の資産を担保とする内部担保、個人保証の比較を行い、まとめている(論文3)。論文3では、その際、従来の分析では明示されていない第二の債権者との関係と併せて分析を行っている。担保は、債権者間の優先順位をつけるに過ぎない、すなわち、債権者の分配には影響を与えるが、効率性には影響を与えないという考え方がある。第一の債権者が第一優先順位の担保権者で、第二の債権者がそれに劣後する担保権者であるとすると、外部担保と内部担保は、モラルハザードを防止する手段としては機能しないことを得た。ただし、外部担保と内部担保では起業家の利得に与える影響は異なる。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は、上記論文1,2,3それぞれについて投稿し、出版を目指す。論文1の査読結果を受け次第、レフェリーレポートに従い、論文を改訂し、再投稿を行う。論文2については、改訂終了後、海外学術誌に投稿する。論文3については、追加分析を行った後、論文としてまとめ、投稿する。
|