研究課題/領域番号 |
19K01737
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 武蔵大学 (2022-2023) 東北学院大学 (2019-2021) |
研究代表者 |
北村 智紀 武蔵大学, 経済学部, 教授 (80538041)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 公的年金 / 財政状態 / 繰り下げ受給 / 老後準備 / 金融資産 / 資産運用 / 証券投資 / 税制メリット / 公的年金財政状態 / シミュレーション / 退職行動 / 情報提供 / 長寿リスク / 老後保障 / 支給開始年齢 |
研究開始時の研究の概要 |
既存研究では公的年金の繰下げ受給により、長寿リスクの低減が可能であることが示されているが、現実にはそのような家計は多くない。本研究は、この理論と現実の乖離要因を分析し、インセンティブ(優遇政策)や、ナッジ(情報提供のあり方で家計の行動を変える方法)により、乖離を縮小できるかを研究する。具体的には、(A) 公的年金の繰下げ受給の促進が年金財政状態に与える影響の分析、(B) 公的個票データを利用した家計の退職行動の分析、(C) アンケートを利用した政策のあり方の検証、(D) 経済実験を用いた現実への適用可能性の検証、(E) 政策提言を行い、望ましい老後保障制度のあり方を検証する。
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研究実績の概要 |
公的年金の繰下げ受給により、長寿リスクの低減が可能であることが理論的に知られています。しかし、現実にはそのような家計は多くなく、理論と現実の乖離が生じています。本研究は、この乖離の要因を分析し、優遇政策やそれが有利であることがわかる情報提供のあり方により、乖離を縮小できるかを研究しました。具体的には、研究計画書に沿って以下のことを行いました。(A) 公的年金の繰下げ受給の促進が年金財政状態に与える影響のシミュレーション分析、(B) 個票データを利用した家計の退職行動の分析、(C) アンケートを利用した優遇策や情報提供のあり方の検証、(D) 経済実験を用いて、優遇策・情報提供の現実への適用可能性の検証、(E) 政策提言を行い、望ましい老後保障制度のあり方を検証。特に、当年度の研究については以下の通りです。(A) 公的年金の財政状態や給付水準に関する確率的シミュレーションを実施して論文にまとめ、国際学術誌で公表しました。(B) 高齢者の退職と消費・金融資産蓄積に関する分析を行い、論文を国際学術誌に投稿しました。(C) 上記の分析結果を踏まえ、既存データを利用して、在職老齢年金の廃止と就業継続・年金受給延期の関係を分析し、論文を国際学術誌に投稿しました。また、確定拠出年金及び確定給付企業年金制度の導入効果や金融資産蓄積に必要な投資信託への有効な規制について分析し、それぞれ国際学術誌に投稿しました。加えて、公的年金の受給延期に有効なインセンティブについて分析し、論文を国際学術誌に投稿しました。在宅勤務による就業促進の可能性も分析し、結果を論文にまとめ、日本財政学会で報告しました。(D) 検証すべき内容を検討し、予備的な経済実験を実施し、回答者の反応について事前の予想と異なる点を整理しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究で予定していた計画のうち、特に(C) アンケートを利用した検証と(D) 経済実験を利用した検証について、過年度における新型コロナ感染症拡大に伴う外出抑制や対面授業縮小の影響で遅れが生じたため、本研究の進捗は遅れていると判断しました。 (A) 公的年金の財政状態や給付水準に関する確率的シミュレーションを実施し、以下の論文として公表しました。Kimura, S., Kitamura, T., and Nakashima, K. (2023) "Investment risk-taking and benefit adequacy under automatic balancing mechanism in the Japanese public pension system", Humanities and Social Sciences Communications, 10(494). (B) 退職後の消費・金融資産の増加が確認され、高齢者家計の行動が経済学の伝統的な理論とは整合的でないことがわかりました。これらの結果は論文にまとめ、国際学術誌に投稿しました。(C) 在職老齢年金の特定の廃止方法が年金受給の延期と就業継続に有効であることが判明し、これらの結果を論文にまとめ、国際学術誌に投稿しました。また、確定拠出年金の導入が中小企業で促進されたことや、金融資産蓄積に必要な投資信託への規制が多くの場合有効でないことが確認され、それぞれ論文にまとめ、国際学術誌に投稿しました。加えて、公的年金の受給延期には就業促進が重要であるという既存研究からの示唆を受け、在宅勤務による就業促進の可能性を分析し、結果を論文にまとめ、日本財政学会で報告しました。さらに、金銭的インセンティブが公的年金の受給延期に有効であることを確認し、この結果についても論文をまとめ、国際学術誌に投稿しました。
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今後の研究の推進方策 |
今年度以降の研究の推進方策は以下の通りです。(B) 個票データを利用した家計の退職行動の分析については、専門家の意見を精査しつつ、引き続き分析を継続する予定です。 (C) アンケートを利用した優遇策や情報提供のあり方の検証については、検証内容やアンケート質問項目について国内外の専門家との議論を踏まえて再検討し、2024年度中にアンケート実査を実施する予定です。(D) 経済実験を利用した優遇策・情報提供の現実への適用可能性の検証について、2024年度中に本実験を実施する予定です。(E) 望ましい老後保障制度のあり方を検討し、政策提言について予備的な検討を実施する予定です。
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