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貨幣の価値尺度の機能からみた最適通貨圏の決定メカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 19K01740
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分07060:金融およびファイナンス関連
研究機関日本大学

研究代表者

豊福 建太  日本大学, 経済学部, 教授 (60401717)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
キーワード金融危機 / 流動性 / 銀行論 / 金融論 / 資産同質化 / 共通通貨 / 最適通貨圏
研究開始時の研究の概要

本研究の目的は、二つある。一つ目は、既存の最適通貨圏の議論では捉えられてこなかった共通通貨を採用することのデメリットを貨幣の価値尺度の観点から明らかにし、最適通貨圏に関する新たな理論を提唱することである。二つ目は、この理論分析で導出した結論を用いて、近年のユーロ圏が抱えている経済格差を実証研究によって示すことである。以上の二点を遂行することで、最適通貨圏に関する研究に貢献するだけでなく、今後の共通通貨のあり方に対しても有益な政策的含意を導くことを目指す。

研究実績の概要

本年度は、ショックに対する共通通貨の持つリスク分担の機能を応用し、銀行間の共通資産がリスク分担機能を持つことを見出し、銀行間の資産共有化(asset commonality)が発生するメカニズムとそれが銀行システムと経済に与える影響に関する理論研究を行なった。
本研究では、銀行間の資産共有化は、・まずここの銀行の資産分散の結果として発生すること、・次に銀行間のリスク分担の結果として発生することを示した。特に後者の結果においては、各銀行が共通資産を保有することが、ショックが大きい状況では戦略的補完関係が生じることを見出した。銀行のこのような行動によって、各銀行はショックが大きい状況でも必要な流動性を確保できる結果、銀行システムの健全性を保つことができる。しかし、経済全体で見ると、共通資産への融資が過剰に行われるようになるため、総産出量に占める共通資産の割合が大きくなり、共通資産のショックが総産出量の変動に大きな影響を与えることになり、経済の変動が大きくなってしまうという関係も示した。
こうした問題を踏まえ、本研究では中央銀行による流動性保険の機能を備えた流動性供給の意義について議論を行った。また、銀行間の異質性が高まることによって銀行システムの安定性も高まることから、ring-fencing policyなど業務間の垣根を残した銀行規制の意義についても議論を行った。
以上の結果は、世界同時金融危機前の銀行の資産保有行動について理論的に説明することに成功していると考える。また、中央銀行による流動性供給のあり方や規制当局による監督のあり方についても政策的含意をもつ結論を見出していると考える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題では、共通通貨の持つリスク分担機能に着目した理論研究を行なった。現在は、その研究テーマについては一定の成果を得られたため、さらに発展的なテーマとして、銀行資産の持つリスク分担機能に着目した銀行行動の理論的メカニズムの解明についてのテーマを行なっている。その意味では、順調に進展していると考えている。ただし、本研究課題で予定していた研究会や学会への参加(特に海外)はコロナ禍においては実現できず、十分な研究発表の機会を得ることができなかった。そのため、国内外の研究者とのディスカッションを経て研究を精緻化することは十分にはできてはいなかったと感じている。
そうした中、昨年度は日本経済学会秋季大会に参加し、討論者から大変貴重なコメントを得ることができ、本研究を改訂する上で大いに役に立った。本年度は、現在日本金融学会春季大会(埼玉大学)とWestern economic association international (Seattle)への参加を予定している。両学会ともに討論者などからのコメントを得ることができるため、今後の研究を改良していくためのディスカッションをしていきたいと考えている。この他にも、他大学での研究会での発表などを行い、本研究内容を広く知ってもらうだけでなく、さまざまなコメントを得る機会を積極的に活用して、研究を完成させていきたいと考えている。

今後の研究の推進方策

今後は、本研究をさらに応用し、金融危機の発生メカニズムについて検討したいと考えている。現在、金融危機前に銀行の資産共有化が発生する理論メカニズムを示すことができた。ただしその際、銀行は預金者への支払いを常に行なっており、流動性制約を常に満たしていることを条件としていた。そこで、今後はこの条件を緩和し、預金者からの取付が起きうるbank runのモデルへと拡張し、銀行の資産共有化が金融危機をいかに引き起こすかという点について理論研究を行いたいと考えている。
具体的には、Liu(2019)などで示されている預金者間の戦略的補完関係と他銀行の預金者間の戦略的補完関係を考慮したbank runのモデルに対し、銀行間の資産選択に戦略的補完関係が生じる状況をさらに考慮したモデルを構築する。この研究の意義は、複数の銀行間の資産共有化が各銀行の預金者や投資家への行動に与える影響とその相互作用を明らかにできる点にある。
本年度は、まず2つの銀行において、資産共有化とbank runが生じる可能性についてglobal gameという均衡選択の分析手法を使ってその関係を明らかにしたい。そして事後的な取付の可能性が事前の銀行の資産選択に与える影響について考察し、そこでの銀行間の戦略的補完関係を見出したい。その結果、銀行の異質性が高く取付が起きる確率が低い均衡と、銀行の異質性が低く取付が起きる確率が高い均衡の二つが導出できるのではないかと考えている。以上のような研究を進め、金融危機が発生するメカニズムについて新たな知見が提供して行きたいと考えている。

報告書

(5件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 2019 実施状況報告書
  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Risk sharing and asset commonality in the financial sector2022

    • 著者名/発表者名
      Kenta Toyofuku
    • 雑誌名

      Economics bulletin

      巻: 0

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Unit of account, sovereign debt and optimal currency area2021

    • 著者名/発表者名
      Kenta Toyofuku
    • 雑誌名

      Journal of international financial markets, institutions and money

      巻: 75 ページ: 101441-101441

    • DOI

      10.1016/j.intfin.2021.101441

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Risk Sharing, Asset Commonality in the Financial Sector2021

    • 著者名/発表者名
      Kenta Toyofuku
    • 雑誌名

      Working paper series, 21-03, Research Institute of Economic Science, College of Economics, Nihon University

      巻: -

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会発表] Asset commonality and liquidity allocation in the banking sector2023

    • 著者名/発表者名
      豊福建太
    • 学会等名
      日本経済学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2019-04-18   更新日: 2024-12-25  

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