研究課題/領域番号 |
19K01798
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
菅 一城 同志社大学, 経済学部, 教授 (70276400)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | ニュータウン / イギリス / 20世紀 / バジルドン / 公営住宅 / 住民参加 / サッチャー主義 / 福祉国家 / 社会資本整備 / 道路 / 下水道 / 産業誘致 / ロンドン / 都市計画 / 人口分散 / 戦後 / 開発公社 / 公共企業体 / 中央政府 / 地方自治体 / 20世紀後半 |
研究開始時の研究の概要 |
この研究課題は、とくに戦後英国のニュータウン開発の事例をつうじて、都市環境の社会的な側面と物理的な側面の相互作用、その歴史的意義を明らかにすることを目的とする。ニュータウン開発は、物理的な環境として都市をつくりだすだけでなく、経済的・社会的な活動もうみだした。この研究課題は、戦後半世紀のイギリス一国の経済・社会・技術の変化が都市生活に及ぼした影響、そして首都圏や地元の歴史的な経緯が及ぼした影響を、1986年に解散して2017年に史料が全面公開されたバジルドン開発公社の事例をつうじて明らかにし、現代都市史の領域を開拓する。
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研究実績の概要 |
当該年度には、1949年から1986年にかけてのバジルドン・ニュータウンの開発をつうじてイギリスのニュータウン開発について検討するなかで、とくに住宅政策の実態を明らかにした。その内容は以下のとおりである。戦後の住宅難を背景に1950年代前半までに量産体制が確立された住宅供給事業は、1950年代半ばには年産1,000戸の供給体制を構築し、また、ニュータウンの工場に就業する熟練労働者を中心に高所得者・高齢者・単身者などに多様な住宅を供給した。しかし、1970年代の石油危機以降に公共支出が削減されると、しだいに住宅政策は低所得者に焦点をあわせた。とくに1979年に登場したサッチャー政権が公営賃貸住宅を圧迫するなかで、ニュータウン政策が当初から掲げた「均衡のとれた共同体」という理想は、住民に最大限の賃貸住宅の選択肢を残すことを意味するようになった。 このような成果の意義は、以下のとおりである。戦後ニュータウン政策は、1940年代後半の福祉国家形成期に登場した政策であったが、その対象については明確な見解がなかった。戦後の住宅難のなかでの住宅困窮者への関心が指摘される一方で、福祉国家の普遍主義的な考え方の影響、戦前からの採算性を重視する公営住宅の延長線上に位置づけられる所得水準に基づく入居者の選別も明らかであったためである。上記の研究成果は、実際にニュータウン政策には、そのような多面的な性格があったことを明らかにするとともに、中央政府において福祉国家的な理想や住宅困窮者救済の関心が薄れていくとともに、むしろニュータウン開発の現場ではそのような理想・関心が強く意識されたことを明らかにした。 都市史は1950年以降について十分に研究されていないが、この事例研究は、一国史が提示する戦後イギリス社会像と異なる理解を示した点に重要性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初の予定どおりの研究成果を発表を維持しているため。 また、2021年度は、予定していたイギリスでの史料収集が新型コロナ感染症に伴う行動制限のために実施できなかったが、2022年度末にロンドンでの史料収集を実施でき、当初予定していながらも閲覧できなかった史料の一部を閲覧することもできたため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定どおり、最終年度は、共同体形成に貢献することが期待された各種の社会施設の整備について検討する。形式的には、事例研究を1つ増やすだけであるが、内容としてこれまでの議論を総括するものになると考える。 新型コロナ感染症による行動の制限が緩和されることを受けて、史料収集を再開することができたので、これを継続する。再び渡航が制限される場合には、上記のように、新しい事例の研究としての側面よりも、これまでの総括としての側面に重点を置き、適宜、すでに確保済みの史料に基づいて議論する。
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