研究課題/領域番号 |
19K01860
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 東京都立産業技術大学院大学 |
研究代表者 |
三好 祐輔 東京都立産業技術大学院大学, 産業技術研究科, 教授 (80372598)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 働き方改革 / エンゲージメント / 労働生産性 / KPI / ふるさと納税 / 返礼率 / 地方交付税交付金 / 資本コスト / ハードル・レート / SDGs / CSR / ESG投資 / ホテリング / 構造型推計 / 共起ネットワーク / カーシェアリング / EVA / 地域活性化 / 無形資産 / Tobinsq / 同族企業 / 瀬戸内圏 / 企業形態 / エクイティーカーブアウト / 経営戦略 / Economic Value Added |
研究開始時の研究の概要 |
経営学の視点から、これまでの企業価値の評価に関する理論研究をサーベイし、申請者が地域企業活性化のために利用してみてはと考える、財務管理の分野でも理論的な裏づけがあると評価されてきた経営指標を提示する。そしてケース・スタディを通し、地域企業が地元で存続するための、ファイナンス的アプローチの有効性を試みる。分析対象は、地域活性化に重要な役割を果たす同族企業の多い瀬戸内圏内の企業である。ただし、実際の地域の企業のデータに基づいた実証的研究は、これまでほとんど実施されておらず、類似する研究は存在しない。地域学関連の研究に対しても大きな影響を与える点からも、本研究を行う意義は非常に大きいと考えられる。
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研究実績の概要 |
本年度は、事業場の指標と働き手の活動の因果関係に着目し、企業価値や地域貢献を意識的に取り組める企業とそうでない企業の違いは何に由来するかについて考察を行った。これまで、多くの中小企業では働き手の活動が、事業場の指標や経営指標の何にどの程度影響しているのかを把握できておらず、合理的な施策を打ち出せずにいる(内閣府経済財政報告書[2017])。 今回の研究を通して、働き手の離職率を下げて労働参加率を高めるエンゲージメントの向上施策が、中小企業の生産性を向上させ、その結果、地域で企業の存続に繋がることが期待できるということを明らかにした。多くの先行研究でも言及されているが、これらの経済指標が同士の関係は必ずしも線形であるとは限らず、また加重(ウエイト)を示す係数を単一の数値で表すことは困難である。本研究では、各経済的指標の関係を知るためにKPIツリーを作成し、店舗別の売上げとアンケートから収集した顧客の満足度を軸にSEMを用いて多くの分析を試みた。その結果、たとえば、アンケートの評価が1P上がることで数週間後には馴染みの顧客数が10倍近く上昇する結果が得られた。これは、金銭的条件が一定であるという仮定の下であっても、働く環境を変えれば働き手の意欲が高まることを通して売上の上昇に間接的に繋がることを明らかにしたことでもある。データを入手することも困難であり、協力企業がなかなかないため、これまでの先行研究では触れることがなかった内容でもあった。学会発表を行った際にも、討論者から今後の研究の進展に十分寄与できるものと評価されたことで、ケーススタディ(症例研究)になるが、論文にするため現在推敲している。さらに、昨年以来実施してきた地域におけるふるさと納税返礼率引き下げに関するテーマを扱った論文は現在投稿中で、今年度末までブラッシュアップに時間をかけ、掲載に向けて準備を粛々と進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
働き手のエンゲージメント向上が間接的ではあるが、中小企業の売上にどう繋がるかを実証実験を通して検証できた点で、次のステップへ進める見通しが立った。また、地域の店舗による企業の理念(e.x.経営者が考える従業員教育)に対する従業員の理解の差が生じていること、さらにアンケート集計による不適切な回答層がが存在することによるデータの補正を行うことにより、店舗の特徴を洗い出した。こうした地道な手順を踏んだことにより、固定効果を用いたパネルの重回帰分析では不明確な結果(相関関係が見られない)であったものが、データのクリーニングとグルーピングを施すことで、企業業績と非財務情報の働き手の指標の間に因果関係があることを示すことに成功した。これにより、当初考えていた仮説の採択に繋がる可能性が高まり、研究の見通しを立てることができた。つまり、当該分野の研究ではこれまで着手されてこなかった、店舗間の相違に着目したこと及び財務及び非財務データの結合したマイクロデータ分析を試みることができたことにより、研究の展望を開かせることができた。今回の実証実験により、表面的には見えない店舗における実行力の差の存在が存在すること、そしてそれが個別の企業の業績に実は影響を及ぼしていることが判明したことは、この分野における今後の研究の飛躍に十分に繋がると考える。こうした地域研究を進める際、遂行者の研究能力だけでなく、データ提供側の協力度(こちらの意向を汲んで協力してくれるかどうか)に大きく依存する。来年度が最終年度になるが、成果に繋がる研究を進めてゆく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、地元資本発生の企業を対象に、創業家による企業統治と同族の創業理念に基づいた経営戦略に関する資料収集そして瀬戸内圏内で工場を残す展望があるか、聞き取り調査を行う。さらに、アンケートの自由記述で収集した従業員の働く以前と現在のモチベーションの違いを明確化するなどの分類を行うことで、指標間の関係性のモデルの見直しを実施することにより、構造方程式モデルの適合度を改善させることができるのではと考えている。
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