研究課題/領域番号 |
19K01903
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
辻田 素子 龍谷大学, 経済学部, 教授 (40350920)
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研究分担者 |
伊達 浩憲 龍谷大学, 経済学部, 教授 (30278501)
松岡 憲司 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (40141668)
神吉 正三 龍谷大学, 法学部, 教授 (50337284)
白須 正 龍谷大学, 政策学部, 教授 (60780088)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 長寿企業 / ファミリービジネス / 革新活動 / 地域社会 / コミュニティ / 老舗 / コミュニティー / 長寿ファミリー企業 / ネットワーク / 地域間比較 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、長寿ファミリー企業(以下長寿FB)における企業家活動のダイナミズムを分析するのが目的である。関西地域の長寿FB企業を対象にアンケートとヒアリングを実施し、独自に集めたデータをもとに、長寿FBの企業家活動や企業家的志向性の差異を類型化し、どのような類型の長寿FBが、いかなるコミュニティーに埋め込まれているのか、当該コミュニティーは企業の革新活動や存続にどのような機能を果たしているのかなどを明らかにする。そのさい、長寿FBの企業家活動や企業家的志向性と、京都、滋賀、大阪といった地域性についても検討を加える。
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研究実績の概要 |
2023年度はおもに以下の4点に取り組んだ。 京都市から“革新的”と認定された「オスカー」企業を対象に、長寿FBの特徴を分析した『長寿ファミリー企業のアントレプレナーシップと地域社会――時代を超える京都ブランド』(新評論)を2003年春に出版し、革新的な長寿企業に関する研究成果の発信に努めた。2023年6月24日には、オスカークラブ総会・交流会で、企業経営者や市幹部ら約130人に報告した。 また、近江商人系長寿FBのツカキグループ(京都市)を対象に、現経営者、後継者、経営幹部、元社員らに丹念なインタビューを実施し、後継者教育、別家制度、地域社会とのかかわりなどを分析した。上述本で明らかになった、多くの長寿FBがファミリーでの事業継承に強い意志を持ち後継者教育に熱心であること、地域社会が後継者教育にあたって重要な役割を担っていることを再確認するとともに、企業の存続可能性を高める要素として、創業家(経営者ファミリー)と社員との関係性も重要であるとの仮説が得られた。 さらに、創業100年を経過し「京の老舗」として京都府から顕彰された2000社超の長寿企業を対象に、その後の状況を調査した。京都府(「京都老舗の会」事務局)の手持ちデータや帝国データバンクの企業情報などを活用し、2000社超の企業を「存続」、「廃業・倒産」、「不明」等に分類し、約3分の1の企業は存続が確認できない状況にあることを明らかにした。 長寿FBの廃業・倒産事例として、江戸時代に京都で秤座を仕切っていた神家の調査を開始した。明治に入ってその特権を失った神家は、新興のイシダなどの後塵を拝するようになり、1994年、380年を超える暖簾を下した。現在、神家関係者の協力を得て、土蔵にあった文書の整理を進めている。幾多の困難を乗り越えた長寿FBもそのさらなる存続は決して容易ではないことが浮き彫りになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で、都道府県を超えたフィールド調査が困難だったため、地元である京都の長寿FB研究を先行させた。その結果、京都の長寿FB研究の成果は上述の書籍にまとめることができたが、他地域の長寿FBの実態把握が手つかずの状態にある。 2023年度は、国内他地域ととして北陸地方の調査を予定していたが、2024年1月1日の能登半島地震により延期を余儀なくされている。2024年度に実施する方向である
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今後の研究の推進方策 |
京都の革新的な長寿FBに関する研究は一定の進展が認められた。今後は、以下の取り組みを本格化する。 1.100年、200年の歴史を有する長寿FBといえども、倒産や廃業にいたる企業も少なくない。京都府が1967年から顕彰してきた「老舗」(創業100年を超える企業を「京の老舗」として表彰)約2000社を調査した結果、約3分の1は消滅している。消えた長寿企業と残った長寿企業の違いは何か。これまであまり議論されてこなかったが、極めて重要な問題である。 2023年度に調査を始めた神家は「京の老舗」として1967年に顕彰されたが、1994年に廃業した。最後の当主が記した日記を読み込みながら、廃業に至る経緯や理由を分析したいと考えている。こうした定性的な分析に取り組むとともに、帝国データバンクの企業情報なども活用しながら、定量的な分析も行い、長寿企業の中で、どのようなタイプの企業が市場から退出しているのか、要因は何か、FBは長寿性にどのような形でプラスあるいはマイナスの機能を果たしているのかなどを分析する。存続企業と退出企業を比較分析することで、FBの強みや弱みをより詳細に議論できる可能性がある。 2.老舗FBの地域特性の分析を始める。京都と東京、大阪などで地域差があるのか、あるとすれば、なぜそうした差が生じているのかを、産業の中分類や小分類、主業と従業が入れ替わったかどうかなどのパネルデータで解析する。帝国データバンクの企業データを活用すると同時に、現地調査も実施する。
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