研究課題/領域番号 |
19K01982
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
君島 美葵子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (50645900)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 電子商取引 / ICT / デジタル化 / 会計責任 / 管理会計 / 業績評価 / 収益責任 / 利益責任 / 収益配分 / レベニュー・ドライバー / 販売 / バンドル / 管理会計システム / EC / 中小企業 / 業績測定 / 電子化 / 顧客接点 / 情報通信技術 / 価格決定 / 収益 / アカウンタビリティ / アウトリーチ / 原価計算 / 営業費 |
研究開始時の研究の概要 |
近年の電子商取引は、企業間取引のみならず、企業消費者間取引も含まれる。そのため、取引顧客との接点に焦点を当てる経営管理は、さらなる収益獲得機会をもたらすことが期待される。本研究では、電子商取引における顧客接点マネジメントに有用な管理会計システム、及び管理会計情報を考察する。これらの考察にあたり、営業費会計・マーケティング管理会計研究の学問的体系化を図り、その体系に沿って日本企業の管理会計活用実態を明らかにする。
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研究実績の概要 |
2022年度の研究実績は,研究論文1本と研究発表1回で公表した。研究論文は「アカウンタビリティの概念比較─管理会計とマーケティングの接点に着目して─」(単著,『横浜経営研究』第43巻第1号,2022年),研究発表は「中小企業における管理会計導入要因の分析:老舗企業の事例をもとに」(宗田健一氏との共同報告,中小企業会計学会第10回全国大会,2022年)である。 君島(2022)では,国民生活におけるICT(情報通信技術)利用の高まりとそれに伴って生じる電子商取引市場の成長に着目し,デジタル化が進むマーケティング環境の元で提示された「マーケティング・アカウンタビリティ」という定義を管理会計領域の文脈で新たに考察することを試みた。 その結果「マーケティング・アカウンタビリティ」は,管理会計領域の文脈によると,管理可能性原則を基底とする点で,階層的なアカウンタビリティに該当しないことを指摘した。それに対して,マーケティング施策が全社的な戦略を志向するにつれて,企業組織内の様々な職能から選出された従業員によって構成される組織を設定する場合,「マーケティング・アカウンタビリティ」は,非階層的なアカウンタビリティに該当することを指摘した。 君島・宗田(2022)では,中小企業経営において課題とされている「企業の貴重な経営資源を散逸させない事業承継の取組み」に焦点を当てながら,経営管理のノウハウとしての会計技法の継承を研究対象とした。そして,事業承継時に伴う経営者変更によって生じる経営上の課題解決のために,いかに会計技法が継承,新規導入されるかをインタビュー調査で明らかにした。 その結果のうち,電子商取引に関わる項目では,顧客数増加や顧客セグメントの多様化のために,管理会計技法として顧客セグメント別損益管理を使用することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の実施計画は,当初予定では本研究の研究成果のとりまとめであった。しかし,感染症の拡大期間とインタビュー調査予定期間が重なったことから,本研究の研究目的の達成に向けて,実態調査の他,質的データ分析で用いる各種定義の形成と具体化にも取り組んだ。したがって,2022年度は,このような定義を念頭に実態調査を実施し,分析を行うための研究期間として位置づけられる。 君島(2022)では,AMAの「マーケティング・アカウンタビリティ」の定義を管理会計領域の文脈に沿って分析した。その結果,AMAの定義は,管理可能性原則を基底とするという点で,階層的なアカウンタビリティとは言えず,全社的な戦略を志向するマーケティング施策を実施するときの会計責任を果たすという点で,非階層的なアカウンタビリティと言えることが明らかになった。 君島・宗田(2022)の研究発表では,中小企業が抱える経営管理上の課題を解決するために管理会計を導入する一連のプロセスを明らかにした。その中で,電子商取引に関して聞き取った質的データを分析すると,企業が製品の販売規模を拡大するための販売促進において管理会計技法が使用されていることが明らかになった。 以上のことから,2022年度は過年度の研究内容を補いつつ,当初研究計画に沿った研究活動を実施できたことから,本研究がおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策として,基本的な考えと具体的取組は以下のとおりである。 2022年度は,電子商取引における顧客接点マネジメントで必要なマーケティング領域の知識の中から「マーケティング・アカウンタビリティ」に焦点を当てて,管理会計領域の文脈を通じて新たな解釈を導いた。また,企業へのインタビュー調査を通じて,新たな販売チャネルとしてインターネットを通じた電子商取引を展開する際に必要とされる管理会計技法を明らかにすることができた。 2022年度に入り,対面によるインタビュー調査を受けてくださる企業が増えてきたことを実感している。そのため,上記のような「マーケティング・アカウンタビリティ」の新たな解釈が,電子商取引市場に関わる企業において,いかに認知されているかを本研究の研究期間内で明らかにしておきたい。 また,2023年度は,本研究の最終年度である。そのため,これまでの研究成果を振り返り,総合的に考察することによって最終的な研究成果を提示したい。
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