研究課題/領域番号 |
19K01994
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
太田 康広 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 教授 (70420825)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 防衛調達 / 原価計算 / 原価監査 / 交渉ゲーム / 契約監査 / インセンティブ契約 / 契約理論 / インセンティブ / モラル・ハザード |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、防衛装備品の調達契約の効率化を理論的に研究することである。 防衛装備品には市場価格がないので、原価計算に基づいて予定価格を算定する。しかし、原価については納入業者のほうが詳しく、原価を増やすと利益も連動して増えるので原価低減インセンティブがないという構造上の問題がある。また、過去には過大請求事案もあり、防衛装備庁による原価監査も行なわれている。 本研究では、防衛装備品調達を防衛装備庁と納入業者のあいだのゲームと捉えて、調達契約や原価監査のやり方を工夫することによって、防衛装備品調達価格を抑制する仕組みを探求する。
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研究実績の概要 |
防衛当局と納入業者のあいだの防衛調達を記述するために、これまで納入業者が先に先行価格プロポーザルを提出する逐次手番ゲームを想定して分析してきた。しかし、現実の防衛調達においては、納入業者が1社しかない場合であっても、防衛当局と納入業者のあいだで交渉が行なわれる。こういった双方独占の状況を分析するにあたっては、ナッシュ交渉解の考え方を使うのが有効である。しかし、製造コスト情報について納入業者のほうが詳しいと想定するならば、不完備情報ゲームとして定式化するほかない。この場合は、一般化ナッシュ積を最大化するインセンティブ整合的交渉解を用いることになる。 そこで先行価格監査も発生原価監査もない状態を想定し、このベンチマーク状況のナッシュ交渉解を分析することにした。この分析は、比較静学まですでに終わっている。次に、先行価格監査だけがある状況を設定し、一般化ナッシュ積を最大化するインセンティブ整合的交渉解の計算に取り掛かっている。4つのサブケースのうち3つのサブケースまでの分析が終わっており、あともう1つのサブケースの分析が終了すれば、納入業者の先行価格プロポーザルを決定する手番の最大化問題を解くことができる。交渉解の一意性と存在を証明したあとは、比較静学を実施する。また、監査のないケースと比べて、どのような違いがあるのかを調べる予定である。 次に発生原価監査のみがある状況を分析する予定である。最終的には先行価格監査と発生原価監査がある場合の分析を目指している。先行価格監査戦略と発生原価監査戦略のあいだの関係もあるはずである。計算が複雑になるのは、一般化ナッシュ積の指数の部分にベイズ改訂された条件付き確率が入ってくるからである。結果として、交渉解は計算できたとしてもかなり複雑な式になる。その性質を調べるには工夫が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先行価格監査がない設定で、納入業者が先行価格プロポーザルを提出する逐次手番の防衛調達ゲームの分析は終わっており、一定の意義ある結果が出ている。先行価格監査をモデル化していないので、分離均衡とならず、一括均衡となる。弱い原価低減インセンティブ契約は機能しないが、強い原価低減インセンティブ契約は機能する。 これは独立した論文になりうる。ただし、この論文を先に公表してしまうと、不完備情報の交渉ゲームの分析結果の学術的意義が小さく評価される畏れがあるため、不完備情報の交渉ゲームの論文を先に投稿したい。そのため、1つめの成果の公表を控えている。さらに、先行価格監査を導入して分離均衡が出てくる条件を特定することも考える。 不完備情報の交渉ゲームについては、現在までのところ、先行価格監査のみのケースについてはある程度解法が見通せている。発生原価監査のみのケースについても大きな障碍なく解けるように思う。先行価格監査と発生原価監査の双方があるケースでは、どのような結果になるのか、実際にある程度分析可能な程度に整理できるのかどうか、現段階ではまったく見通せない。 数学的な分析ができないほど複雑な結果が出てきた場合には、不本意ではあっても数値計算で分析することを考えている。その場合は、学術的意義は限定的になる。 少しずつ分析を進めると研究できる状態まで理解を戻すのに時間がかかり効率が悪いので、研究に集中できるまとまった期間を設定して分析を進めることとしたい。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍もかなり収束し、海外渡航も現実的になってきたので、できるだけ早く研究成果を論文にまとめ、海外の学会で報告することとしたい。 分析手法が、会計学界で使われている標準的なものと異なり、防衛調達の契約監査というテーマもかなり特殊なので、ゲーム理論や公共調達の学会に参加することも考える。
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