研究課題/領域番号 |
19K02019
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
小西 範幸 青山学院大学, 会計プロフェッション研究科, 教授 (80205434)
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研究分担者 |
宇佐美 嘉弘 専修大学, 経営学部, 准教授 (60255966)
池本 正純 専修大学, その他部局等, 名誉教授 (80083608)
為房 牧 岐阜協立大学, 経営学部, 准教授 (70756593)
稲積 宏誠 青山学院大学, 社会情報学部, 教授 (00168402)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 企業家機能 / 統合報告 / サステナビリティ情報 / テキストマイニング / 資金主体論 / 企業家の機能 / ステークホルダー経営 / テキストマイニング分析 / オクトパスモデル / ナイーブベイズ法 / ステークホルダー論 / 会計主体論 / サステナビリティ会計 / マーシャルの経済学 / シュンペーターの企業家論 / 企業家論 / サステナビリティ / リスクマネジメント / 統合思考 |
研究開始時の研究の概要 |
企業家たる経営者からの働きかけによって経済社会のサステナビリティが実現し,その働きかけこそが統合報告であるとの考えに基づき,本研究では,企業家論における経済とビジネスの考え方を手掛かりにして統合報告の研究に着手することで,企業家論に立脚した統合報告モデルの考察を行う。それは,経済・経営・会計の一体的な考察の可能性を追求するものである。 そこでは,「統合報告書」(日本:統合報告書,英国:戦略報告書,米国:サステナビリティ報告書)の国際比較と公表企業へのアンケート調査を通して,企業家の機能(①ビジネスモデル発案機能,②危険(リスク)負担機能,③組織管理機能)と統合報告モデルの関係を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では,統合報告書のトップメッセージから企業家機能を抽出して統合報告書の分析を試みている。 理論的な考察として,次の2点を明らかにすることで,統合報告によって健全なコーポレートガバナンスが促進されて,企業経営と同時に経済社会のサステナビリティが実現されることを明らかにしている。(1)国際統合報告評議会(IIRC)の「統合報告フレームワーク」の考え方の根底には企業家機能の重要性が認識されていることを示した上で,ビジネスの世界にイノベーションを促進していくための1つの仕組みが統合報告であることを明らかにしている。そして,(2)資金主体論を介したステークホルダー経営と企業家機能の観点から統合報告の理論形成を行った上で,サステナビリティ情報開示の根拠を明らかにしている。 実証的な考察として,機械学習における「教師アリ」学習を用いて,統合報告書(英文)のトップメッセージから,3つの企業家機能(ビジネスモデル発案機能,リスク負担機能,ガバナンス機能)の有無と各機能を予測するモデルの構築を,ナイーブベイズ法を用いて行ってきた。現在まで,日本企業を含む10か国から各国5社の計50社の統合報告書(英文)を対象とした予測モデルと,日本企業だけ70社の統合報告書(英文)を対象とした予測モデルの構築を行っている。その結果,一定以上の予測精度が得られていることから,世界各国で共通の企業家機能があることの推測が可能となっている。 予測モデルからの精度向上については,昨年までの直接法と2段階法を組み合わせたハイブリット型の検討を引き続き行っている。また,当該トップメッセージに企業家機能を示す文(あるいは段落)が極端に少ないケースは,通常の学習方法では予測精度が低下することから,特別なデータの加工を行って改善を図っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国ごとや業種ごとの学習対象に基づく予測モデルについて,学習対象に強く依存した性質をもつか否かについては,その予測精度の向上の検討とともに進めている。現段階では,いくつかのケースで予測内容の違いがみられることから,その予測モデルの特性の分析を進めているところである。 2017年度に統合報告書を公表している142社の日本企業に対してアンケート調査を行っており,91社の有効な回答を得ている。その中から,英文の統合報告書を公表している製造業に対して,日本企業を対象とした予測モデルを適用してみた。その結果をアンケート調査結果と突き合わせを行うことによって,企業家機能によっての統合報告書の特徴づけを試みたが,サンプル数が少ない等の要因によって有効な結果を得ていない。
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今後の研究の推進方策 |
理論的な考察として,国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)からサステナビリティ報告基準が2023年6月に公表予定のことから,その公表を待って,アメリカ会計学会(AAA)等に出席して情報収集を行い,その基準の内容についての理論的な考察を経済学と会計学の観点から試みる。 実証的な考察としては,2017年度に統合報告書を公表している約142社の日本企業に対してアンケート調査を行った中から有効な回答を得ている91社から得た予想モデルを用いて企業家機能を抽出して,そのアンケート調査結果と突き合わせることによって,企業家機能による統合報告書の特徴づけ行う。今後は,日本語のトップメッセージからの予測モデルも構築して,その適用を行う。 ハイブリッド型や不均衡データ分析手法の導入については,いくつか実験を行った結果,それぞれをどのように組み合わせていけば精度向上につなげることができるのか,いくつかの知見を得ることができている。これらを新規データに適用させることによって,提案手法の有効性の検証を進めていく。また,引き続き,国ごと,業種ごとの特徴によっての分析を可能にするために,予測モデルの精度向上を図っていく。 さらに,特徴的なフレーズの抽出を進めている。これは,企業家機能を示している段落の中に含まれる特徴的な語の組み合わせを求め,それぞれの企業が各機能をどのように表現しているのか,その典型的なパターンを抽出しようとするものである。これは,今後,統合報告書を分析する際のケーススタディとしての題材を提供することが期待される。
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