研究課題/領域番号 |
19K02025
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
山田 康裕 立教大学, 経済学部, 教授 (20335160)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | Penman / 包括的な利益 / 純利益 / 純損益 / 価値 / リスク / クリーン・サープラス / その他の包括利益 / リサイクリング / 概念フレームワーク / 包括利益 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,国際会計基準審議会が新たな概念フレームワークを決定した現在においても,いまだに議論の決着がついていない業績報告の問題(純損益とその他の包括利益の区分,リサイクリングの是非,議論の混迷の根源)について考察するものである。 これらの問題は,ややもすれば古い解決ずみのテーマであると感じられるかもしれないが,2012年以降の概念フレームワークの改定プロジェクトのなかで国際会計基準審議会の主張は二転三転して一貫していない。にもかかわらず利益は会計情報の重要な要素であることはいうまでもなく,これらの問題は,古くて新しい喫緊の課題であるといえる。
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研究実績の概要 |
S. Penmanは,その著書Financial Statement Analysis and Security Valuationにおいて,財務諸表の諸要素を事業活動に関するものと金融活動に関するものとに区分して組み替えた組替財務諸表を提唱しているが,この組替財務諸表の考え方は,桜井久勝『財務諸表分析』や笠原晃恭・村宮克彦『実証会計・ファイナンス』といったわが国のテキストでも採用されている。しかも,この組替財務諸表は,斎藤静樹が主張する事業投資と金融投資とに分けて成果を捉える考え方につうじるものである。すなわち,事業投資による成果は事業活動をつうじて投資資金が回収され,その余剰が成果となる。これに対して,金融投資による成果は金融商品の売買をつうじて成果が生み出される。成果の生み出され方の違いに着目し,その違いをふまえた財務諸表分析を試みたものが組替財務諸表である。このようにPenmanの主張と斎藤の主張には共通性があるものの,異なる点もある。それは,想定される利益概念の違いである。Penmanは包括的な利益(comprehensive income;普通株主以外の利害関係者への分配を控除した利益)を想定しているのに対して,斎藤は純利益(またはリスクから解放された利益)を想定している。本年度は,主に,かかる違いが生み出される理由は何なのか,またその含意としてどのようなことがいえるのかについて考察を行った。さらには,Penmanの主張するリスクのための会計の議論と,斎藤の主張するリスクからの解放の概念との同異についても検討を行い,斎藤のリスクからの解放の概念の展開可能性について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまで研究では利益や収益に係る基準設定の過程における議論を基礎的な概念に照らして,その問題点等を明らかにしようとしてきた。ここでは,実現やクリーン・サープラスといった基礎概念が分析視覚となっていた。これに対して,Penmanの研究は財務諸表分析の観点からのものであり,そこから基礎概念を抽出するのに予想以上の時間がかかった。次年度こそは,これまでの研究をまとめたい。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに検討したPenmanの諸概念を用いて,国際会計基準審議会の基準設定における議論を検討し,純利益やリサイクリングの意義を明らかにするための考察を鋭意進めていく。なお,本研究によって得られた知見については,2024年度中に学外の商業誌において公表予定である。
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