研究課題/領域番号 |
19K02042
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山口 響 長崎大学, 核兵器廃絶研究センター, 客員研究員 (80828707)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 長崎 / 原爆 / 浦上 / 復興 / 慰霊 / 都市空間 / 郊外 |
研究開始時の研究の概要 |
「辺境」かつ「郊外」とみなしうる浦上(うらかみ)地区が原爆被災の中心となった長崎市における都市空間再編の諸相とその要因を問う。とりわけ、被災後の浦上地区が放逐されるのではなく、逆に長崎市全体の都市構造に統合・包摂されていく側面に本研究は着目する。対象時期は1930年代から1960年代末まで。 方法的には、生活の物理的な基盤である〈都市空間の再編〉を媒介項に、政治経済的な面と記憶・表象・文化的な面が相互に影響を与え合うとの視角を採る。 また、〈都市空間の再編〉を当該都市の自閉したプロセスとみなさず、外在的でグローバルな要因である大日本帝国・アジアとの連関やアメリカ占領軍の動向との連関をとらえる。
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研究成果の概要 |
国内外の資料館・図書館等での資料収集により、次のようなことを明らかにできた。①原爆被災の中心地であった浦上地区の原爆投下から数年間の人々の生活の一端を明らかにできた。②戦後の長崎市の経済開発が、原爆によって壊滅的な被害を受けた浦上方面に主として伸びてきた事実を確認できた。③爆心地近辺の変遷に関する資料、④浦上のカトリックコミュニティーに関する資料、⑤米原爆傷害調査委員会(ABCC)の長崎での活動に関する資料を、それぞれ一定程度収集できた。 ただし、コロナ禍のために米国での資料収集を行いえたのは最終年度の2023年に入ってからであったため、収集資料を用いての論文執筆はこれからの課題となる。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
長崎はしばしば、広島と比較して、原爆の記憶の保存・継承や反核メッセージの発信にあまり熱心ではないとされ、「祈りに沈潜していた」との宗教的な背景が指摘されることがある。都市政策的な面からは「浦上地区が開発から取り残され、住民は原爆被害に関して沈黙を余儀なくされた」という観点もさらに付け加わる。 これに対して本研究はむしろ、開発の波に浦上が十分取り込まれたがゆえに、原爆被災の記憶は封じ込められることになったと見る。本研究で収集した資料のみでそれを十分に証明することはできていないが、「大規模災害後の被災者たちの沈黙」というテーマ自体は広がりのあるものであり、本研究もその解明の一助になると考える。
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