研究課題/領域番号 |
19K02058
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
酒井 千絵 関西大学, 社会学部, 教授 (30510680)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ジェンダー / 専門職 / 女性研究者 / 社会学史 / 雇用 / 社会調査 / 社会学方法論 / フィールドワーク / 労働 / シカゴ学派社会学 / 社会問題 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、19世紀末から20世紀前半にかけてのシカゴ学派社会学が、女性の行動や逸脱を事例としてどのように社会問題を記述してきたのか、そして女性が研究対象として客体化されると同時に、社会を記述する側として主体化を実現してきたのかを検討する。特に女性が書き手となった社会学的モノグラフに注目し、従来シカゴ学派社会学の主流と見なされてきた男性の手による研究と比較し、対象の選択や分析内容の相違を明らかにする。さらに、シカゴ社会学の事例を通して得られた知見を日本の社会学を対象に応用し、都市や労働の分析における女性の役割に考察を広げていく。
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研究実績の概要 |
2022年度は、引き続きコロナ禍で国外研究機関に訪問できず、その結果研究計画の主要な内容である20世紀前半の社会学史に関わる研究を十分に進めることができなかった。それに代わって、現代日本社会における専門職女性の経験を調査、分析する作業を進めた。2022年秋には、広島大学ダイバーシティ研究センターと連携し、製造業企業の従業員11名に聞き取り調査を行った。女性が出産や育児を経て働き方をどのように変えてきたのか、男性が管理的・指導的地位の大半を占める組織で、育児・介護負担を主に負担する女性の業績を正当に評価することを阻害するのは何か、という観点から、2021年度までの聞き取りデータと合わせた50件あまりのライフストーリーを分析した。また、日本人からの海外移住経験の中で、ジェンダーが移住の動機や経験に相違をもたらしていること、国際移動の女性化という観点が、女性の社会科学研究者によってもたらされてきたことについて、先行研究や過去の調査結果をまとめ、論文を執筆した。この論文は、Brill社から出版された書籍、Expatriation and Migration: Two Faces of the Same Coinに掲載された。これらの研究実績は、当初の研究計画から逸脱しているようにも見えるが、以下2点の基本的な問題意識を共有している。1点は、ジェンダーと就労やライフスタイル選択の関わりである。女性は男性と同等、あるいはそれ以上の教育を受けても、職業機会や経済的な安定については男性ほど恵まれているわけではない。女性がこうした問題に対し、どのように認識し戦略をとってきたのだろうか。第2点は、専門家としての女性研究者の視点である。女性研究者が関わることで、これまでの研究関心は議論はどのような影響を受けるのだろうか。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年以降、新形コロナウイルスの影響で国外渡航が困難になったため、本調査課題で当初予定していたシカゴでの調査研究の遂行は計画の変更を余儀なくされた。2022年度も海外渡航制限が少しずつ緩和されたが、シカゴへの渡航は実現できず、新規の資料を収集することが出来なかった。代わって現代日本のジェンダー関係が、専門技術職の働き方やキャリアにどのような影響を及ぼしてきたのか、また女性研究者が積極的に議論や調査に関わることで、この問題に対する解釈や問題意識はどのように変化してきたのかについて、調査と分析を行ったが、2022年度中には論文や研究報告としてかたちにすることが出来なかった。これらについては、2023年度中に調査や研究業績の発表を進めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
パンデミックが修了した2023年度は、これまで行えなかったシカゴを含むアメリカでの調査と資料収集を行い、これまでに収集した資料と合わせて分析を進めたい。20世紀シカゴ学派と女性研究者の状況については、まず資料とその解説を公表するウェブサイトの作成を計画している。また、2022年度までに行った現代日本の事例について、国内、国外の学会で報告するとともに、論文執筆、公表を行う予定である。
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