研究課題/領域番号 |
19K02071
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
高山 龍太郎 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (00313586)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 不登校 / 教育機会確保法 / フリースクール / 義務教育 / 学校選択 / 普通教育 / 教育支援センター / 社会統合 / 未来の教室 / バウチャー / 不登校特例校 / 教育バウチャー |
研究開始時の研究の概要 |
2017年の教育機会確保法施行を機に、不登校児童生徒一人一人の個別ニーズに応じた個別的な義務教育の実施が求められている。本研究は、学校外で不登校児童生徒の学び場を四半世紀にわたって作ってきたフリースクールに着目することで、私事化に抗しながら、個別ニーズに応じた義務教育による社会統合の可能性を考えることである。それは、共通性に基づいて社会統合を促進してきた従来の義務教育のあり方を問い直すことである。
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研究実績の概要 |
前年度に引き続き、高知県土佐町教育支援センターの民間委託をめぐる対立について検討した。その研究成果の一部は、第96回日本社会学会大会で発表した。 本年度は、これまでの研究成果を総括する作業を行った。一つは、教育機会確保法を中心とする日本の不登校施策の整理である。教育機会確保法は、フリースクール等の学校外の民間施設も不登校児童生徒の義務教育として認めるものである。これらの施策は、子どもよりも制度に働きかける点で、障害学でいう社会モデルに該当する。その起源は「再登校を促すと、子どもを追い詰める」という1980年代にフリースクールが広めた認識にあり、教育機会確保法の成立に熱心だったのもフリースクール関係者であった。しかし、学校外の民間施設を義務教育と認めることは、不登校の子どものニーズに適う一方で、広範な学校選択をもたらし、公教育の規制緩和と民間委託への道を開くことでもある。これらの研究成果の一部は、明石書店から2024年9月頃に刊行される書籍に収録される予定である。 もう一つは、学校選択をめぐる近年の状況の整理である。学校選択において最も賛否を呼ぶのが教育バウチャーである。教育機会確保法を機に、フリースクール等へ通う家庭へ地方自治体が費用補助をする例が増えているが、これも一種の教育バウチャーと言える。一般に、規制のない教育バウチャーは格差を拡げると考えられており、国レベルの広範な教育バウチャーを導入したチリでも、格差拡大の反省から規制強化が行われた。しかし、教育バウチャーの本家であるアメリカでは、教育バウチャーに似た「教育貯蓄口座」(Education Savings Accounts)を導入する州が増えている。学校選択は、理論的・実証的・政治的にも結論がない状況であり、さらなる研究が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究が当初の予定より遅れている理由は、新型コロナウイルスの影響やその後の諸事情により、予定していた現地調査が困難になったためである。この影響で、研究方法を公刊された資料や論文・著作等を中心とした文献研究に変更した。これにより、計画が遅延する結果となった。しかし、情報公開が進んだことにより、インターネットを介した資料収集が容易になり、多くの情報を収集することができた。さらに、生成AIや機械翻訳技術の進歩により、外国語の資料の読解が迅速に行えるようになり、研究の効率化も図ることができた。これらの技術を利用することで、一部の遅れを補いつつ、質の高い研究を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は補助期間の最後の年であるため、研究報告書の作成を最優先とする計画である。研究報告書では、これまでの研究成果を総合的にまとめ、分析・評価していく一方で、資料の収録も充実させ、他の研究者の二次分析に供したい。また、研究成果の普及を図るために、学会での発表も積極的に行っていく。 研究報告書の質を担保するために、複数の専門家による査読を実施する予定である。このフィードバックを反映させ、最終的な報告書をさらに精緻化することで、研究の信頼性と精度を向上させることができる。また、研究成果を広く社会に還元するために、インターネットを通じて研究報告書を一般向け公開することも考える。 このように、2024年度の活動は、研究成果の集大成とその普及に重点を置いたものである。これを通じて、研究プロジェクトが持続的な影響を与え、続く研究への道を開くことを目指している。
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