研究課題/領域番号 |
19K02083
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 関西学院大学 (2020-2023) 東北学院大学 (2019) |
研究代表者 |
金菱 清 関西学院大学, 社会学部, 教授 (90405895)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 五感 / 生ける死者 / 霊性 / 災害 / 不条理 / vulnerability / 悲嘆経験 / ヴァナキュラー / 死者 / 記録 / 手紙 / 震災と行方不明 / あわい / 曖昧な喪失 / 生きられる死者 / 幽霊 / 夢 / 行方不明 |
研究開始時の研究の概要 |
東日本大震災において様々な脆弱性に直面した。世界に比して大災害による死亡・行方不明者が多数に上るわが国において、喪失や悲嘆経験を理解し克服する方法や教訓は多岐にわたるが、心理学・宗教学・社会学・民俗学等の各分野に散らばり、総体的・実践的な説明体系や仕組みがない。申請者は現在まで「東日本大震災の被災者はどのように死を受け入れるのか」を主題に、即座に彼岸に送れない死者の存在(幽霊、夢、行方不明等)に対する調査を継続している。生死の中間領域における「霊性」の視角を活用し、喪失や悲嘆経験を克服する体系的手法を編み出し、自己表出の困難な人びとの現実世界を開示する、社会学的な調査方法論を模索したい。
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研究実績の概要 |
申請者は現在まで「東日本大震災の被災者はどのように死を受け入れるのか」を主題に、即座に彼岸に送ることができない死者の存在(幽霊、夢、行方不明、慰霊碑など)に対するフィールドワークを継続している。申請者が見出してきた生死の中間領域あわいにおける「霊性 spirituality 」の視角を活用し、喪失や悲嘆経験を克服する体系的手法を編み出し、同時に自己表出の困難な人びとの現実世界を開示する、社会学的な調査方法論の洗練化を模索した。 これまで東日本大震災の被災地・被災者への調査研究を通して、死者が過去の存在として過去形や過去完了形ではなく、“現在進行形”であたかも生者であるかのように語られる事例(幽霊との遭遇、夢の中の亡き人との邂逅)を収集してきた。こうした人びとのふるまいは、本来は存在しないものを人びとの現実世界に立ち上がらせる。すなわち、社会科学が依ってたつ時制(過去→現在→未来)とは異なり、震災後に立ち現れた幽霊や亡き人との邂逅は時間性を持たず、現在進行形でのみ知覚されうる。津波で亡くした子が「あれから」成長した姿など、過去の死者が今の時制と共存する世界を、震災遺族は経験している。 時空間を侵犯する「永遠性」(過去=現在=未来)を伴い、震災の死者を介したこうした被 災地固有の霊魂観、新たな“霊性”の現れを理解するには、私たちの死生観や宗教性にまで考察を深く掘り下げなければならない。本研究の独自性は、過去も未来も、現在性で語られ る“生きられる死者”を包摂し、ポスト記憶論として社会学的な理論展開を行うことにある。 具体的な研究成果として、編著『五感でとらえなおす阪神・淡路大震災の記憶』(関西学院大学出版会)と単著『生ける死者の震災霊性論―災害の不条理のただなかで』(新曜社)を公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「東日本大震災の被災者はどのように死を受け入れるのか」を主題に、即座に彼岸に送ることができない死者の存在に対するフィールドワークを継続している。コロナも落ち着いたなかで、研究計画にもとづき東北沿岸部の被災地調査(フィールドワーク)を行うことができ、聞き取りを進めることができた。 申請者が見出してきた生死の中間領域あわいにおける「霊性 spirituality 」の視角を活用し、喪失や悲嘆経験を克服する体系的手法を編み出し、同時に自己表出の困難な人びとの現実世界を開示する、社会学的な調査方法論の洗練化を模索するためのデータを抽出中である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に続いて引き続き申請者はこれまで東日本大震災や阪神・淡路大震災等の被災地・被災者への調査研究を通して、死者が過去の存在として過去形や過去完了形ではなく、“現在進行形”であたかも生者であるかのように語られる事例(幽霊との遭遇、夢の中の亡き人との邂逅)を収集する予定である。 こうした人びとのふるまいは、本来は存在しないものを人びとの現実世界に立ち上がらせる。すなわち、社会科学が依ってたつ時制(過去→現在→未来)とは異なり、震災後に立ち現れた幽霊や亡き人との邂逅は時間性を持たず、現在進行形でのみ知覚されうる。津波で亡くした子が「あれから」成長した姿など、過去の死者が今の時制と共存する世界を、震災遺族は経験している。 時空間を侵犯する「永遠性」(過去=現在=未来)を伴い、震災の死者を介したこうした被災地固有の霊魂観、新たな“霊性”の現れを理解するには、私たちの死生観や宗教性にまで考察を深く掘り下げなければならない。本研究の独自性は、過去も未来も、現在性で語られ る“生きられる死者”を包摂し、ポスト記憶論として社会学的な理論展開を行うことにある。
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