研究課題/領域番号 |
19K02149
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 大阪経済法科大学 |
研究代表者 |
呉 泰成 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (00795528)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 難民申請者 / 非正規滞在者 / 子ども / 教育 / 学習権 / 滞在権 / 在留特別許可 / 合法化 / 難民 / 人道的特別滞在措置 / 入管法 / 韓国 / アフガニスタン / 収容期間 / 外国人政策 / 非熟練労働者 / 収容 / 仮放免者 / 被収容者 / 難民認定申請者 / コロナ禍 / 大村 / 朝鮮人 / 仮放免 / 長期滞在 / 外国人 / 移民 / 入管政策 / 難民認定制度 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日本の入管体制と難民制度が交差する収容、仮放免の課題を、収容そのものが生活者として外国人の全般に及ぼす影響を東アジアの文脈のなかで把握することである。主に、難民認定申請者を対象とし、収容、仮放免などを含む日常の経験を明らかにすることで、そこから見られる構造的制約と、それに対する主体的な対応を社会学的手法で明らかにすることである。 本研究の問いは、以下のような点である。入管法違反であれば、だれでも収容する全件収容主義は、難民認定申請者とその家族の生活においてどのような影響をもたらすのか。収容と仮放免など脆弱な法的地位に置かれる難民認定申請者は、どのように日本において生き残りをはかるのか。
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研究実績の概要 |
韓国は日本と同じく難民認定率が低く、近年には難民申請者が増加している傾向である。日本と類似した状況であることから、韓国の対応は示唆する点が多いと考え、2023年夏に韓国における難民関連の団体や関係者の聞き取り調査を行った。それを基にして、子どもの教育に焦点を当てて、その対応から日本との相違点を比較して論じた。まず、教育へのアクセス(学習権)は以前に比べて人道的配慮から大幅に緩和されているものの、滞在と定住できる権利(滞在権)は、あまり変化が見られなかった。 韓国では日本でいう「外国にツールがある子ども」を「多文化子ども」と呼ぶが、全児童生徒の3%を占める。その「多文化子ども」の76%が「国際結婚」により、国内で出生した子どもであるが、残りの一部は外国人同士の子どもである。国内生まれのいわゆる「ハーフ」が多数を占める状況は、日本に比べて国籍や言語取得を取り巻く問題が表面化しない。他方で、難民申請者などに限って言えば、日本に比べて子どもの数が少ない。多くが家族同伴よりは、大人だけが先に入国し、難民申請をする傾向があり、日本で目立つクルド人のケースも見当たらない。 日本との比較から明らかにされたのは、難民申請者や不認定者と関連する在留資格がない非正規滞在者への対応が、子どもの学習権や滞在権に影響をもたらしている点である。すなわち、低い認定率は共通しているものの、日本では在留特別許可という形で言語・文化的同化、人道的配慮などを理由に個別的に合法化される。その反面、韓国では日本のように個別的な対応となる在留特別許可ではなく、合法化ではない集団的な出国猶予で対応している。言語・文化的に同化したとしても、いずれに帰国することを前提とする政策であり、難民申請者でさえも非正規滞在者と同じく教育権と滞在権が分離されている傾向は、この合法化政策と関連しているのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、昨年から取り込んでいる「在日朝鮮人の1960年代~70年代における仮放免経験」は、当事者へのアクセスと資料収集が思うように進んでない状況である。当事者へのインタビューは、知り合いを通じて依頼はしているものの、当事者の高齢などを理由になかなか進まない状況である。また関連資料などもいろいろ当たってはいるが、一部の時期に偏っているので、肝心な時期(1965年以降)の資料がまだ見つかっていない。 もう一つ、進めている「地域におけるクルド人の調査」は、クルド人が集住する地域における支援団体の活動に参加しながら、具体的な内容を詰め込んでいる。ラポール形成のために、引き続き日曜日の日本語教室に参加したり、当事者や団体がかかわっている活動に参加しているので調査準備はできている。予定していた中心テーマは「収容経験」であったが、コロナ禍や2024年6月に施行予定の改正入管法の施行で収容関連の状況は大幅に変化しており、現状を踏まえれば「子どもの教育」も合わせて調査する必要性が生じた。 その理由は、収容されるよりは、仮放免で外で生活するケースが多いこと。また近年トルコで大きな地震もあり、子どもを同伴して入国し、難民申請をする事例が増加していること。また改正入管法施行の前に特例として日本生まれで、日本で教育を受けている一部の子どもに対して在留特別許可が与えられることになったことである。現在、地域では子どもや教育問題が注目されている。この調査テーマに関するもののほかに、調査における言語問題、とりわけ通訳問題を抱えている。一部を除いて日本語でコミュニケーションを取るのは難しく、簡単に通訳を見つけることも困難である。さらに、通訳者の選定(当事者か或いは日本人か。男性か女性か。年齢はどのくらいがいいかなど)にも問題があり、現在、適切な人を探している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年の夏に行った韓国調査で、難民支援団体や弁護士などに対する聞き取りができたので、今年は日本国内を中心に、以前から予定していた2つの取り組みをできる範囲でまとめていく予定である。 まず、在日朝鮮人の仮放免経験である。当事者へのアクセスは引き続きいろいろ試みてみるが、高齢などの理由でアクセスが困難であることを念頭にしつつ、過去に書かれた文献、資料を中心に分析する方法を取ることで研究を進めたい。夏以降の学会報告に向けて、大まかなまとめができるように、引き続き取り組む予定である。 次は、クルド人の調査である。通訳問題は支援団体の関係者と相談してできるだけ早く解決し、収容経験、子どもの教育を中心とするクルド人の生活全般にかかわる調査票を作成する予定である。現在日本語教室に参加する当事者を中心に聞き取り調査を行い、その対象を広げていく予定である。年末に投稿ができるように準備を進めていきたい。
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