研究課題/領域番号 |
19K02159
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
嶌末 憲子 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (80325993)
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研究分担者 |
小嶋 章吾 国際医療福祉大学, 医療福祉学研究科, 教授 (90317644)
坂井 博通 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (60249191)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | F-SOAIP(生活支援記録法) / ミクロ・メゾ・マクロ / リフレクション / IPW / PDCA / AI / リアルワールドデータ / ソーシャルアクション / F-SOAIP / 生活支援記録法 / PDCAサイクル / DX / ICT / 地域共生社会 / 好循環 |
研究開始時の研究の概要 |
研究目的は、医療福祉のIPWでのミクロ・メゾ・マクロレベルにて、生活支援記録法(IPWの各レベルの実践過程を、生活支援の観点から、当事者ニーズや観察、支援の根拠、働きかけと当時者の反応等を、F-SOAIPの項目で可視化し、PDCAサイクルに多面的効果を生むリフレクティブな経過記録)導入のための研修やOJTが、もたらす革新的好循環のモデル構築を図ることである。本研究は、量的・質的な混合研究方法とし、選定した本記録法研修受講者の各レベル前後での質問紙結果、生活支援記録法ワークシート【初回・導入・OJT版】とリフレクション結果を分析し、ICT活用等も含め革新的好循環モデルの全体像を明示する。
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研究実績の概要 |
コロナ禍や本研究の関連施策・他研究事業の動向と前年度までの実績をふまえ、再整理した6つの観点(①ICT化への社会実装・PDCA、②教材・分析、③ミクロ・メゾ・マクロ展開、④普及と社会的評価、⑤フィールド協力、⑥横断的ソーシャルアクションのプロセス評価)より総括する。 ①F-SOAIP搭載による4つのICT化の内、1つはAMED事業ではAI認知症ケア補助システム(DeCaAI:でか~愛)にてデータ源の記録法にF-SOAIPが採用され、保育記録は厚生労働科学研究費補助金にて進められた。また、自治体の地域共生社会を見据えた「福祉相談支援システム」では、①~③の観点から、PDCAサイクル促進やデータ利活用に資する分析の可能性を提示した。F-SOAIPの導入希望を有する医療機関や自治体等よりニーズや諸課題を把握し、新たなシステムベンダーに搭載を提案した。②他の全観点より動画教材の有効性を確認し、F-SOAIPの経過記録をRWD(リアルワールドデータ)として利活用できることは、アンケート等とは異なる分析意義をもたらすと提言した。そこで、③ミクロ・メゾのレベルでは、既存のICTを工夫してもF-SOAIPデータによる定量的分析ができることや、根拠が確認されている学習療法とケアプランを連動できる質的分析法を提示した。また、各種専門雑誌にて監修した実践報告を分析対象とし、ミクロ・メゾ・マクロレベルの好循環モデルを提示した。④自治体・職能団体等へのF-SOAIP研修の実施等により、研究成果の普及に努めた。病院機能評価や福祉サービス第三者評価の他、BCP、医療介護連携やACPへの活用、適切なケアマネジメント、生活困窮者自立支援や児童虐待予防等を中心とした⑥ソーシャルアクションを通じ、⑤モデル自治体等と協力関係を図った。⑥の一環として次年度に英語版書籍の刊行を準備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍にて見直した調査計画を終了できていないため、前述の①~⑥別に自己点検した結果をまとめる。 ①~③では、ICT化の政策が推進される中、F-SOAIPの社会実装は進んでいると評価できる。また、F-SOAIPが注目のChatGPT等の生成AIにも有用であるといった知見も見出したが、我が国でのルールが未定であるため、次年度に検討する必要がある。④~⑥については、F-SOAIPが実践現場にて普及していることや、社会的評価を得て幅広く活用されているという観点からは、計画以上の進展と評価できる。他方、F-SOAIPによる実践が社会課題解決に役立つ好事例として発信しても、研究費やテーマ別の縦割り、既定の枠組み等により横展開や政策貢献ができない環境にあることが確認されたため、本研究を進めるにあたり取り組んできた⑥を記録化しておくことが、今後、イノベーションにつなげることができる可能性のある横断的テーマの研究推進に有用であると言える。F-SOAIPのミクロ・メゾ・マクロ的効果は、現政府や厚生労働省が掲げる課題解決に資するものであるため、⑤専門雑誌等で実践報告した複数自治体と強力関係に至ったことは評価できる。ミクロ・メゾ・マクロレベルでの成果を実現した導入者等を対象とした横断的質問紙調査や、インタビュー調査による後向き調査に加え、システムベンダーにF-SOAIPによるリアルワールドデータの利活用がAIやマクロレベルでのイノベーションを創出する分析手法を検討できたことは意義があった。⑥は①~⑤に影響することや、イノベーションに関与する変化は10年以上のモニタリングが必要であることから、政策関係者への有効なアプローチを整理して記録化しておく重要性を認識できた。また、対人支援全般に汎用性のあるF-SOAIPに関するソーシャルアクションを我が国において効果的に進めるべく英語版書籍の刊行を準備した。
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今後の研究の推進方策 |
システムの標準化自体が政策の影響を受け、生成AIのルール等を審議する最中では、ミクロ・メゾの展開に数年、マクロレベルまでは5年を要すると推察している。事前に継続的調査を計画実施することは困難であるため、既にマクロレベルの展開が少しでも把握されている地域の内、Cov19の影響を受けにくい方法や地域にて効果を後ろ向き調査にて確認する。 ①F-SOAIPを搭載したICTベンダーと協力し、各システムに合った②を見直すとともに、分析可能な方法をベンダーに提案しモデル化を進める。ミクロ・メゾレベルでのF-SOAIP活用がリアルワールドデータとして、LIFE(科学的介護情報システム)等によるPDCAサイクルを促進するといった好事例の抽出を進める。 ③実践報告から質的分析にて導かれたミクロ・メゾ・マクロの「好循環モデル」を、導入者に対するリフレクションデータも追加したモデルとして精緻化を図る。モデルや多様な効果を確認した上で、④普及・社会的評価を受けている地域や団体を対象とし、これら条件を満たす⑤フィールドとともに⑥効果と関連した政策について提言を目指す。 本研究は、ICT化によるデータの利活用が、マクロレベルでの効果を高めるといった仮説により、政策化されても課題を有するLIFEや求められている認知症ケア、領域を超えた虐待予防等の課題解決のための理論、アプローチ(学習療法や課題解決のAI化など)に着目し、F-SOAIPを活用して効果を挙げた法人や医療機関、自治体等については、好事例として全国発信できるよう進めていきたい。 以上をふまえ、③と④を中心としながらも①~⑤を統合する観点として⑥F-SOAIPの導入によるマクロレベルの諸施策へのイノベーションを合意できるよう、ソーシャルアクションのプロセスを可視化し、モデルとして提示する。なお、英語版書籍の刊行を進め、海外発信も強化する予定である。
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