研究課題/領域番号 |
19K02169
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
布川 日佐史 法政大学, 現代福祉学部, 教授 (70208924)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 市民手当 / 制裁 / 資産調査 / 協力義務 / 子ども基礎保障 / 求職者基礎保障 / 社会参加 / ハルツⅣ / 社会保護パッケージ法 / 社会的労働市場 / 雇用創出 / 生活保護 / 生活困窮者自立支援 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ワークフェア的性格の公的扶助制度である「ドイツ求職者基礎保障(社会法典Ⅱ)」(以下、求職者基礎保障)において、社会参加を目標とした施策が多様に展開していることに着目する。本研究は、多様な施策の展開の全体像を把握しつつ、具体的な二つの施策に重点をあてる。一つは就労準備としての福祉的社会参加支援であり、法第16a条にもとづくものである。もう一つは、本年度から実施されている労働を通じた社会参加支援、法第16i条である。これらを通じ、社会参加が求職者基礎保障にどのように制度化され、実践に移されているかを検討し、現代の公的扶助制度が直面している課題を明らかにする。
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研究実績の概要 |
求職者基礎保障は、2023年1月1日から「市民手当(Buergergeld)」に替った。新たに実施された市民手当がどのようなものか、2022年8月に連邦労働社会省(BMAS)が提出した法案をもとに検討した。その際、ハイル連邦労働社会大臣の法案趣旨説明に触発され、制裁と協力義務に関する制度改革に検討の焦点を置き、一方の極に立って、受給者を就労意欲のない制度依存者と見て制裁強化を主張するのでもなく、また、もう一方の極の無条件のベーシックインカム論の立場から制裁がなくなっていないと批判するのでもない視点から検討した。それは、連邦憲法裁判所2019年判決が示した提起をふまえて法案の内容を検討するということである。具体的には、受給者の協力義務規定や、協力義務違反への制裁・給付削減規定の見直しが、自己決定を尊重した支援の改善と関連して再編されようとしている点への着目である。 市民手当法案は、制裁という言葉を使わなくなったことに象徴されるように、連邦憲法裁判所2019年判決をうけて受給者の信頼を強化し、対等性や自己決定を尊重する方向で、具体的制度を構築しようとしているのであった。 その後、法案は野党が多数を占める連邦参議院で否決され、調停委員会での妥協により大きな変更を余儀なくされた。受給者を信頼し資産調査を大幅に緩和する「猶予期間」は2年間でなく1年間に短縮された。また容認される資産の上限額も引き下げられた。受給者を信頼するという方向に制度を転換させる改革の中心であった「信頼期間」に関する条項は削減され、法律上の規定となることはなかった。 法案審議の紆余曲折の中から、市民手当に残された課題と、これからの手掛かりを浮き彫りにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献・資料にもとづく研究と、ドイツ現地の研究者とのメールでの意見交換によって、新たに導入された市民手当の要点をつかみ、制度の具体的な内容を明らかにすることはできた。 ただし、コロナ禍が続く中、ドイツ現地での支援現場への訪問調査ができず、現場で生じている課題や成果をくみあげて研究を進めることができなかった。文献研究による制約から、重要な論点を見落としていないかの確認もできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、文献・資料をもとにする研究を引き続き進めるのと合わせて、10月にはドイツ現地での訪問調査を行い、現場で生じている課題や成果をインタビューし、研究に生かすようにしたい。
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