研究課題/領域番号 |
19K02314
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
南 道子 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70272432)
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研究分担者 |
櫛山 暁史 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (30435820)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 食物繊維 / 健康寿命 / 食餌中の脂質含量 / 動物実験 / 遺伝子発現 / アンケート調査 / 血液生化学分析 |
研究開始時の研究の概要 |
研究代表者らは、食物繊維摂取減少に着目して研究を遂行する。食物繊維の摂取は野菜におっている事が多いが、その1日摂取量は目標量の350gを超えない状態が続いている。特に若年層での摂取不足が顕著である。本研究では各世代の実態調査をして摂取量減少の理由等を明らかにし、食物繊維摂取量の実態を調査する。さらに本研究では、加齢や生活習慣病と、食物繊維による腸内細菌叢の変動の血中サイトカイン量、及び臓器障害に対する交絡や健康寿命の観点から検討を行う。以上のように、生化学・生物学的な手法に加えて統計学的手法を用い、食物繊維量摂取の視点から健康寿命延伸をするための新たな可能性の提案を行うものとする。
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研究実績の概要 |
食物繊維は、近年注目されている第6の栄養素とも言われるように、近年腸内の微生物の生育環境を変化させる事で生体の環境を整える事が知られている。そのほかには、腸からの脂質や糖質の吸収を抑えることで、生活習慣病の改善をも行っている事は数十年前から知られている。 本研究計画では、現代の若年層の食事において、食物繊維を中心として食事内容が実際はどういった内容であるかという観点からの文献調査および調査研究をおこなう計画と並行し、その実際の食物繊維の摂取状況によって遺伝子発現はどう変化するのか、またその発現が実際にどのような影響を体に与えるのかということについて動物実験を同時に進め、生活習慣病の未病予防・発症予防・重症化予防について役立てることを目的とする。 大学生に対する調査研究に関しては、今年度は日本栄養食糧学会主催のThe 22nd International Congress of Nutrition (Tokyo)で発表を行った。日本栄養食糧学会では、大学生の食生活への意欲を聞くとともに、大学生の食生活に対して、新型コロナウィルス感染症対策の為の登校自粛期間がおよぼした影響を尋ねた結果を報告した。一方The 22nd International Congress of Nutrition (Tokyo)では再現食調査として行った大学生26人の食事内容の分析(1週間分の写真に撮影し、それを基に再現調理)と24時間思い出し法として行った大学生(1324人)の1日分の食事内容(24時間思い出し法に準ずる)についての調査を基にして、実際に摂取している食品の種類、食事内容を食材量や栄養素量の面から分析した。 一方、動物実験に関しては、2021年度に採材したサンプルを元に予備的な解析を進めている。現時点で、肝臓と白色脂肪における炎症関連遺伝子の発現様式に違いがあることがわかってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大学生に対する調査研究に関しては、2018年から継続して行ってきた調査研究の内容をまとめて、2つの学会での発表を行った。日本栄養食糧学会では、大学生の食生活への意欲と新型コロナウィルス感染症対策の為の登校自粛期間が食生活におよぼした影響を尋ねた結果を報告した。一方The 22nd International Congress of Nutrition (Tokyo)では、再現食調査(大学生26人の食事内容の再現および分析)と24時間思い出し法(大学生1324人の1日分の食事内容の聞き取りおよび分析)から、実際に摂取している食品の種類などを基にした、若年層による食事内容の詳細に関する報告である。すでに大学生の食事を栄養面から分析すると、不足しがちな栄養素があることを報告され、さらに国民栄養調査の結果との比較によると、若年層では国民栄養調査の結果よりもさらに栄養素の摂取が少ない事がわかっているが、若年層の食事内容を詳細にとらえると、それらの不足しやすい栄養素の摂取量を上げる工夫を学ぶことができる可能性を示唆した。いずれも投稿準備中である。 また、高脂肪食摂取による遺伝子レベルの発現を検討した論文を比較検討することで、食物繊維と肥満や糖尿病、がんなどの生活習慣病発症との関連を調査している。これについては、1990年頃から徐々に論文数を増やしていて、多くの研究者がこの分野に興味を持っている事が伺える。高脂肪食とがんについての研究は一定数行われているものの、割合を経時的に減少していっている。糖尿病については常に一定の割合で研究がされている。 一方、動物実験に関しては、2022年度もコロナ禍の影響が出てきたため、新たな飼育計画を進めることができなかったが、2021年度に採材したサンプルを元に解析を進めており、肝臓と白色脂肪における炎症関連遺伝子の発現様式に違いがあることがわかってきた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、主たる研究責任者が大学における教育業務が軽減されるため、大学生に対する調査研究に関しては、解析に用いるデータの再検討を終了させ、論文投稿を行うようにしたい。さらに2022年度に行った高脂肪食摂取による遺伝子レベルの発現を検討した論文を総括していきたい。 一方、動物の飼育計画に関しては、主たる研究責任者が、共同研究先である明治薬科大学でも動物実験が行えるように準備を始めている。加えて、飼育計画全体の再検討を行った。上記における調査研究で得られたデータから、実験食として使用される飼料の再検討が必要であると考えられるため、その対応および計画を至急終了させ、飼育を開始する予定である。加えて、2022年度から継続して行っている2021年度に採材したサンプルに対しての解析を継続して得られた結果を踏まえて、飼育計画自体を、健康長寿の観点から実験食による長期飼育が高齢マウスにおよぼす影響(遺伝子発現の変化など)を検討することとした。実験食としては現代の若年層で食生活に問題のあると考えるグループが好んで食べる「食の欧米化」の影響を色濃く受けた食事内容を反映するような高脂肪で野菜不足に相当するような内容の飼料を再現する予定である。実験食を長期間それぞれに与え、飼育期間中にも食事内容を変化させることによって、体重や各臓器での遺伝子発現にどのような影響があるかを調べる。マウスは飼育施設の置かれる所属機関において定められている適切な安楽死処分を行いながら、サンプルを採材する。その後、炎症関連遺伝子など考え得る今後若年層が罹患する可能性の高い肥満や糖尿病、がんなどの生活習慣病発症など疾病に関連する遺伝子の発現様式などを分析しながら、各飼料別の群間比較を行う予定である。
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