研究課題/領域番号 |
19K02406
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
坂田 仰 日本女子大学, 教職教育開発センター, 教授 (70287811)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | いじめ防止対策推進法 / いじめ重大事態 / 第三者委員会 / 教員の懲戒処分 / いじめ裁判 / いじめの定義 / いじ重大事態 / いじめ |
研究開始時の研究の概要 |
いじめ防止対策推進法の施行から5年が経過した。しかし,同法の学校現場への定着は未だ不十分な点が多い。特に,同法が規定する「重大事態の調査」に関わっては,青森市女子中学生いじめ自殺事件,茨城県取手市女子中学生いじめ自殺事件等,その在り方を巡って被害者側と教育委員会,学校側が対立し,混乱が生じている。 本研究は,いじめ防止対策推進法,国のガイドライン「いじめの防止等のための基本的な方針」等の貫徹にあたって,第三者委員会がどのような課題に直面しているかを明らかにし,法が掲げる理想と現実の学校運営,教育行政の調和という視点からその限界と解消策を見出し,学校,教育委員会へと還元していく予定である。
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研究実績の概要 |
2022度に引き続きいじめ重大事態に関わる裁判例の分析といじめ重大事態調査「第三者委員会」の委員経験者に対する聴き取り調査とその分析を進めた。 2023年度は,特にコロナ禍の影響により遅れていたいじめ重大事態調査「第三者委員会」の委員経験者に対する聴き取り調査に力点を置いた。ヒアリング対象者からは,「与えられた権限と比較し,費やす労力と調査結果に対する責任が重すぎる。」という声が複数寄せられた。いじめ重大事態調査「第三者委員会」は,調査に当たって,警察などの捜査機関とは異なって何らの強制力を有していない。たとえ加害とされる児童・生徒であったとしても,要請を行い「任意の協力」を待つしかないのが実情である。当然,調査に対する協力を得るまでに時間を費やすことなるとともに,得られた調査結果には限界が存在している。にもかかわらず,民事訴訟等に調査報告書が証拠として提出されるのみならず,調査報告書を主たる根拠とし,対応に当たった教員を懲戒処分にする例も散見されるようになっていること等がその理由と考えられる。 関係教員の懲戒処分に関わって,水戸地方裁判所判決令和6年1月12日は,調査報告書の記述について否定したり,別の解釈がありうることを示したりし,その信憑性に疑問を投げかけ,懲戒処分の取消を命じている。与えられた権限とのバランスという視点において,いじめ重大事態調査「第三者委員会」の調査結果を関係教員の懲戒処分の根拠として使用することについては慎重な姿勢が求められるべきと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
いじめ重大事態に関わる裁判例の収集,分析については順調に進み,所期の目的を達成したと考えている。 コロナ禍の影響を受けて,教育委員会,学校現場の実態調査の部分に遅れが生じている。2022年度と比較して一定程度の進捗を見たものの,現状,なお生徒指導担当教員,教育委員会等の生徒指導担当者に対するヒアリング調査,アンケート調査に遅れが出ていることがが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
まず,これまで延期となっている教育委員会の生徒指導担当者と学校現場で実際にいじめ対応を行っている管理職,教員に対するヒアリング調査を優先的に実施し,遅れを回復したいと考えている。 次に,これまで蓄積してきたいじめ問題に関わる裁判例の精査を進め,その類型化をより精緻なものにしていく予定である。 最後に,これら作業を受けて,研究成果の公開に向けて報告書の作成を進めていく予定である。
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