研究課題/領域番号 |
19K02429
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 法政大学 (2021-2022) 広島大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
久井 英輔 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (10432585)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 社会教育 / 団地 / 新中間層 / 高度成長期 / 自治会 / 都市 / 地域社会 / 共同性 / 農村 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究で検討する事象はいずれも、高度成長期(1950年代後半~1970年代前半)の範囲に基本的に限定する。まず、団地住民と社会教育をめぐる当時の関係者の認識枠組みを把握するとともに(①)、団地住民に対する当時の社会教育行政の対応を把握し(②)、当時の全体的状況を概観する。その上で、団地における社会教育実践の具体的な展開とその団地住民への影響について、事例調査によって検討する(③)。以上を踏まえて、高度成長期における団地の社会教育実践が住民たちにもたらした成果とその限界、またそれらを規定していた社会的要因について考察する(④)。
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研究実績の概要 |
本研究は、高度成長期の団地を対象とした社会教育の展開を検討事例として、都市新中間層における共同性形成に対して社会教育が果たした役割や、表出した問題点を明らかにしようとするものである。2022年度は、前年度までに行った研究計画①(団地住民と社会教育をめぐる当時の関係者の認識枠組み)、②(団地住民に対する社会教育行政の対応)を踏まえ、③(団地における社会教育実践と住民変容の事例研究)に着手した。 具体的には、自治会等が主導した社会教育実践が見られた事例として東京都板橋区の高島平団地をとりあげ、自治会が主催した学習活動の1970年代における動向を確認するとともに、これらの学習活動に対して自治体社会教育行政の事業がどのように影響を与えたか、どのような関係を切り結んでいたかを検討した。 検討の結果、第一に、当時の社会教育行政が団地住民の多様な学習活動を十分に捕捉できておらず、一方で団地住民の学習活動にとって行政の支援は必ずしも必須の要件と見られていなかったことが示された。しかし第二に、婦人学級の事例に見られるように、社会教育行政と自治会が連携し、住民の発展的活動の基盤となるケースがあったことも確認された。 当時の社会教育行政関係者らは、団地住民が形成する共同性に対して、都市における新たな地域社会形成への希望を見いだそうとしていたが、他方で団地住民の活動は、行政による総体的把握に必ずしも馴染まない性格を有していた。しかし社会教育行政による支援は、住民の学習活動を豊かにする機能も部分的にではあれ果たしていた。この時期の団地住民の学習活動の実態からは、拡大する都市新中間層に対応する当時の社会教育行政が有していた可能性と困難の双方を看取できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では2022年度中に研究を全て遂行する予定であったが、2020年度にコロナ禍の影響を受け、資料調査のための出張が計画通り行えなかった。また、2021年度に現在の本務校へと異動したが、同年度中は前任校の補充人事の遅れにより、前任校と本務校両方の授業を担当する必要があったため、十分な研究時間が確保できなかった。 これらの理由により、特に個別の団地を対象とした事例研究の進展に遅れが生じた。このため、本研究については研究期間の1年延長を申請している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、前年度に引き続き研究計画の③(団地における社会教育実践と住民変容の事例研究)に取り組む予定である。 高度成長期の団地における社会教育実践には住民主導/行政主導という違いが地域によって見られた。この相違が実践の成果・課題にもたらした影響も確認するため、今年度は前年度に扱った高島平団地とは対照的な事例として、社会教育行政・公民館が主導した社会教育実践について検討する予定である。現在、小港団地(横浜市)、芝園団地(川口市)などを対象事例として予定しているが、詳細は未定である。具体的な研究作業としては、当該自治体社会教育担当課の保管資料、公民館報、婦人学級に関連する資料、などを予定している。 以上の事例検討が終わり次第、研究計画に記した①~③の検討結果を踏まえ、団地住民における共同性の形成という観点から、高度成長期の団地住民を対象とした社会教育理念・実践の性格、実践がもたらした成果と課題、その背景にある要因について、総括的な考察を行い、研究成果全体を収録した報告書を年度内に刊行する予定である。
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