研究課題/領域番号 |
19K02481
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
吉岡 真佐樹 京都府立大学, 公共政策学部, 研究員 (80174895)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 教師教育 / ドイツ教員養成 / 教師教育センター / 教育学院 / 教職課程 / 教員養成 / ドイツ総合大学 / 教師教育制度 / 教員養成センター / ドイツ / 教員養成課程 / 開放制教員免許制度 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、今日のドイツ総合大学において初等・中等学校教員の養成がどのような教育組織・機構のもとで行われているか、またその改革をめぐってどのような議論がなされているかを体系的に解明しようとするものである。 この間ドイツはEU統合に伴う高等教育改革とそれに連動する大規模な教員養成制度改革を実施したが、その結果、教職課程を支える組織・機構の改革ないし再編成が求められることとなった。それは「教員養成センター」や「教育学院」などの全学組織の再編成と機能強化を図る改革となっているが、本研究ではその動向を各州ごとに分類するとともに、代表的な大学(5~10校程度)を事例にその特徴と課題を具体的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
今年度は3年ぶりに、次の3大学を中心に現地調査をおこなった。①ケルン大学(ノルトライン・ヴェストファーレン州)、②ロイファナ大学(ニーダーザクセン州)、③ミュンヘン工科大学(バイエルン州)。いずれも本研究にとって重要な事例であった。 ①はドイツを代表する大規模大学の一つであり5万人を超える学生が在学するが、教職課程履修者も1万人近くを数える。この大学の教職課程の特徴は、「教員養成センター」が養成教育の中心に位置づけられていることである。「センター」の役割は、狭義には、経済-社会科学部、数学-自然科学部など5学部に所属する教職課程履修生の教育実習を行うことである。しかしそれにとどまらず、教職をめざす学生に対して継続的で系統的な履修指導を行っている。「センター」の創設は2011年であるが、以来今日まで着実にその機能を拡大・強化してきている。 ②は、5学部からなる比較的小規模な大学であるが、教員養成の伝統校である。この大学で教員養成の中心となっているのは、2008年創設の陶冶学部(Fakultaet Bildung)である。この学部が全学の教職希望者に対して陶冶諸科学、教科教授法および関連する専門科目を総合的に提供している。この実績から、この学部が、近年各地で試みられている「教育学院(School of Education)」の役割を実質的に最初に確立したものと評価されている。ただしこの大学では、ギムナジウム教員養成課程は設けられていない。 ③は、理工系および医学系の8学部を擁する著名な工科総合大学である。この大学では、ギムナジウム教員、職業学校教員などの養成を行っているが、それらは2009年に創設された「教育科学部」を中心に行われている。物理、化学、数学などの教員志望者は、この学部に入学し、教職関連の学修を行いながら、それぞれの関連学部において専門教科の学修を行うことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
一昨年および昨年とコロナ禍のもとで現地調査がまったく行えず、研究が停滞した。制度研究ではあるが、大学ホームページなどによる情報収集では状況を十分に分析することが難しいためである。本研究にとって、現地調査を行い、実態について具体的に調査することがきわめて重要である。 今年度、ようやく調査を再開し、上記3大学などの調査を行うことができたが、引き続き予定していた大学への現地調査を急ぐとともに、これまでの調査結果を踏まえて調査大学の再検討を行う必要がある。 あわせて、本研究に関するドイツでの議論状況を再整理・分析する作業が求められている。コロナ禍のもとでドイツの学校、大学および教職課程は大きな影響を受けた。加えて、教員不足の深刻化、非常勤教師の増加、生徒の学力低下など、この間、教師教育をめぐる状況の悪化が指摘されている。これらの今日的な議論と本研究との関連についてさらに検討する作業が求められている。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査を着実に実現したい。調査大学については再検討が必要であるが、今年度は、①ニーダーザクセン州およびノルトラインヴェストファーレン州の代表的大学、②ベルリン自由大学、フンボルト大学ベルリン、ベルリン工科大学、を中心に検討を加えて調査を行いたい。 ドイツはメルケル政権のもとで、「教師教育の積極的質向上プログラム」を策定し、2014年~23年に5億ユーロを投下して大学の教員養成課程の改善を図る国家的プロジェクトを行っており、今年がその最終年にあたる。本研究の当初の目的に加えて、この政策の結果と、そのなかでの教員養成組織・機構の変化について体系的に検討したい。 あわせて、学校教育の質向上の課題、教員不足問題、非常勤講師の拡大問題、教職課程を修了せずに教職に就いている教師の問題など、教員養成をめぐる今日的な議論が、大学での教員養成の組織・機構の再編に対してどのような影響を与えているかについても分析を行いたい。これらを総合的に検討したうえで、大学での教師教育制度の改革の展望と課題について考察を行い、本研究のまとめとしたい。
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