研究課題/領域番号 |
19K02485
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
小野 文生 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (50437175)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ホモ・パティエンス / 弱さに基づく知 / 技術的合理性 / ユダヤ思想 / レヴィナス / アガンベン / 石牟礼道子 / 鶴見俊輔 / 受難経験 / ユダヤ |
研究開始時の研究の概要 |
否定的にとらえられがちな人間の弱さ(無力さ・ままならなさ・傷つきやすさなど)に価値を見出した知や思想に着目し、人間形成論や教育思想において弱さに基づく知がどのような固有の意義を持つのか、哲学的・人間学的根拠を与えることを試みる。そのために、弱さに基づく知の系譜をたどり、ユダヤ思想やホロコースト、水俣病、ハンセン病などの受難経験をめぐるフィールド調査や思想分析を行うと同時に、技術的合理性についての批判的考察を進める。それらを、人間の経験をかたちづくる「弱さの知」として統合的に意味づけなおし、「ホモ・パティエンス(受苦する人)の人間学」として構想する。
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研究実績の概要 |
2023年度の研究は、研究計画で設定した4つの研究軸にしたがって、ひきつづき文献・資料の調査・分析と理論的状況の把握に努めた。(1)「弱さに基づく知の系譜の思想史的検討」については、鶴見俊輔、花崎皋平、石牟礼道子などの思想を手がかりに考察を進めた。(2)「ユダヤ思想における受苦思想の遺産の考察」については、ショア関連、ブーバーの思想などを手がかりに考察を進めた。(3)受難経験から生み出される思想の検討/フィールド研究」については、新型コロナ・ウィルス感染拡大の影響で活動を著しく制限されたが、水俣でのフィールド調査を進めた。また、関連する領域として原爆の記憶、沖縄の記憶に関する研究も参照しつつ研究を進めた。ハンセン病療養所は訪問できなかったが、ハンセン病関連の文献を読解し、また、長島愛生園の園内雑誌『愛生』の読解を少しずつ進めた。(4)「技術的合理性に関する哲学的考察」については、ひきつづきフランクフルト学派の技術思想のほか、技術哲学と呼ばれる領域の文献読解を進めた。 こうした活動の一環として、国際シンポジウムでの英語による発表のほか、マルティン・ブーバーに関する英語論文、および「原爆の絵」プロジェクトをテーマにしたドイツ語による論文の執筆を進めた。さらに、現在、ひきつづき本研究の主題にかかわる単著『ホモ・パティエンスの人間学――もろい部分にたつ思想のために』(東京大学出版会)を、本研究の成果の集大成として準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
延長申請をおこなった結果、5年目に当たる本年度は、昨年度に総括的な成果として出版した単著『<非在>のエティカ――ただ生きることの歓待の哲学』(東京大学出版会)を礎石にして、ひきつづきやり残した研究を推進した。それを承けて、さらに成果として『ホモ・パティエンスの人間学――もろい部分にたつ思想のために』(東京大学出版会)を上梓すべく、鋭意執筆中である。このように、一方においては「おおむね順調に進展している」と評価することができるが、他方で予定していた国内フィールドワークや海外渡航が大幅に制限されたこともあって、研究の一部に関しては「やや遅れている」と言わざるを得ない部分もあることはたしかである。よって、本研究は延長申請をおこない、来年度さらに研究の充実を図りたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究の根幹にかかわるような、特別な推進方策の変更の必要性は、現段階では感じていない。ただし、新型コロナ・ウィルスの感染拡大によるフィールド調査、海外渡航などが多少とも制限されることが予想される。今後の動向を見極めながら、可能な調査の方法を考え、場合によっては計画変更をおこない、研究活動の道を探っていく。
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