研究課題/領域番号 |
19K02520
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 弘前大学 (2020-2022) 北海道大学 (2019) |
研究代表者 |
宋 美蘭 弘前大学, 教育推進機構, 准教授 (70528314)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 代案教育機関に関する法律 / オルタナティブスクール / 教育実践 / 学びの内実 / 持続可能可能な教育 / 代案学校の卒業生 / 韓国 / 若者 / キャリアパス構築 / 代案学校 / 学校から社会への移行 / 非主流社会を生きる若者 / AS卒業生 / 社会的困難 / オルタナティブスクール卒業生 / 社会的困難を生きる若者 / 卒業後の移行 / キャリアパス支援 / 若者のキャリアパス / 多様な学びの保障 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は社会的困難を生きる若者の実態分析と彼・彼女らのキャリアパス構築に必要な支援のあり方、またそれを可能とする条件について、とりわけ、学校制度の周縁や外側に位置している韓国のオルタナティブスクールの卒業生を対象に明らかにする。近年韓国において、若者の失業、不安的な就労、ニートなどの急激な増加にともない、社会的困難を生きる子ども・若者の支援に対する関心が高まっている。 本研究では、第1に、社会的困難を生きる韓国の若者の実態の整理、分析を試み、第2に、とりわけ、ASで学ぶ・学んだ経験を持つ若者に焦点を当て、彼・彼女らのキャリアパス構築における支援のあり方とその特徴を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
2022年度は、現地に出向いて対面による調査を実施することができた。具体的には、①NPO法人代案教育連帯(非認可代案学校の団体組織=代案教育中間支援組織)(ソウル市)、②堤川ガンジー代案学校(忠清北道堤川(チェチョン)市)、③チャムピッ代案学校(釜山市)、④セドンネ学校(江原道原州市)などを対象にインタビュー調査を行い、④の学校では、教師及び生徒との実践交流会を持つことができた。 ①のNPO法人代案教育連帯では事務局長である、李・ホンウ氏に訪問し、近年成成立した「代案教育機関に関する法律(2022.1)」の制定・施行される前の論争および、その後の政策の動向や現在、全国の非認可代案学校の実態・現状について聞き取り調査を行った。その結果、「代案教育機関に関する法律」が制定・施行され、これまで公教育の外部に位置づけられてきた「非認可代案学校」が、今後、学歴が認められる教育機関として歩める新たな可能性が示唆された。しかし同時に、多くの非認可代案学校は依然として財政的な困難を抱え、「学校」そのものの運営・維持できないことから「学校」を閉鎖されることが余儀なくされていることが分かった。財政支援の具体化が今後の非認可型代案学校の歩みに大きな影響を与えることが鍵となる。 そして、代案学校の実態調査では①管理職、②保護者、③代案学校卒業生、④地域のキーパーソンを中心にインタビューを行った。韓国の代案学校の教育実践に共通して言えることは、これらの学校はきちんとした学習の枠組み(体系化されたテキストや教授法など)を持って実践されるフォーマルな伝統教育とは異なっている。しかしながら、インフォーマルな場において偶発的で内発的に立ち上がってくるそれらの学びの内実にこそ、「持続可能な教育開発を促進するための必要な知識及び技能」が内在し、本物の教育的価値があるのではないかと調査から浮き彫りになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの不完全な社会状況の中で対面・非対面の両方の良さを活かし、研究調査を遂行することができ研究成果を十分かつ誠実に達成することができたと言える。本年度は本研究を更なる発展を図るために、韓国調査のみならず、日本及びアメリカ調査も同時に遂行する事ができた。研究者自身が民間助成金などの競争的外部資金で獲得した 、ヒロセ国際財団「多様な学びを保障する『もうひとつの学校』に関する国際比較研究ー日・韓・米・フィリピン4カ国におけるオルタナティブ教育実践に着目してー」(研究代表)と合わせて、国際比較研究調査及び、文献資料調査を遂行することができ実り多い収穫を得ることができた。アメリカでは3つの州(アリゾナ州、フロリダ州、カリフォルニア州)にある大学及び、学校訪問(教師、授業参観)、いじめの子ども(不登校)を持つ親との交流・インタビュー調査を実施する事ができ、学校に行けない・行かない子どもの包摂の問題が教育の課題として浮上した。特に、アメリカの移民の子どもの包摂問題、韓国・日本の不登校の問題について相互交流も深めた。研究という実践の場を通して、国際的なネットワークの中で中核的な役割を担うことにより、研究者自身の発展のみならず研究の国際学術研究交流の発展に大きく寄与できたとともに、国際共同研究の基盤の構築の更なる強化に貢献できたと考える。本研究を通して得た大きな収穫だと言える。 本年度の主な研究成果は日本語、韓国語、両言語により国内・国際学会(韓国日本教育学会)において公表できた。さらに、韓国の教育学・社会学・政治学などの研究者との研究交流を持つことにより、本研究に関する自己研鑽を深めることができた。2022年度の研究成果は研究調査のみならず多面的に実り多い研究活動だったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、競争原理を超える学びの実現を目指し、子どもたちの生き方を支えるASの実践が果たして学んだ後の持続可能な移行性をもつものであるのか否か、AS卒業性の移行問題を詳細に検討するものである。新型コロナウィルスの状況が少し落ち着いてきているものの、今後においても油断できない状況が続くと予想されることから、本研究課題について1年延期(2024年3月まで)して実施することを視野に入れつつ、2023年度は具体的には、第1に、当初計画をしていた、AS卒業生の進路実態および困難な内容をAS類型別共通点と差異を浮き彫りにし、彼・彼女らが、キャリアパス構築のために、現在抱えている困難とはなにか、その実態を調査によって実証的に明らかにする。第2に、<第1の課題>から得られた結果に基づき、AS卒業者が進路・労働市場への移行ために、卒業されている学校と地域・行政との連携が具体的にどのように行われているのか、それぞれの関係者にインタビュー調査を実施する。現在、ASの場を供給する主体が急速に広がるなかで、ASで学んだ子ども・若者の最善の利益を保障するあり方を考える上で、主体間の連携はますます重要とされる。今後はこれらの研究成果を、国際学会及び国内の研究・実践場においてその成果を広く公開することにしたい。
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