研究課題/領域番号 |
19K02524
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
太田 美幸 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (20452542)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | スウェーデン / ジェンダー / 発達文化 / 女性運動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、スウェーデン民衆運動に内包される教育的機能がジェンダー平等化にいかに寄与してきたのかを解明することを目指すものである。スウェーデンでは、1960年代の制度改革を経てジェンダー秩序が劇的に変化した。変化の兆しが現れた当時においては、女性たちの生き方の算段や自己実現の構想が大きく変わり、日常生活を支える実践知の獲得の仕方も変化を余儀なくされたはずである。本研究ではこうした状況を「発達文化」の変容過程と捉え、新たな自己実現のイメージを形成しその実現の手立てを構想した女性たちにとって女性運動がいかなる意味を持っていたのかを探り、それがジェンダー秩序の転換において果たした役割を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、スウェーデンにおける女性運動が人々の意識や行動特性の変化にいかに関与し、女性の社会参加にいかに寄与してきたのかを解明することを目指すものである。1950年代まで、同国においても女性は主婦とパートタイム労働者の二重の役割を担うという考えが支配的であったが、1960年代の制度改革を経て ジェンダー秩序が劇的に変化した。先行研究ではその要因として、女性運動の組織率とその社会的影響力の大きさが指摘されてきた。この点をふまえて、本研究の目的は、スウェーデンの女性運動がいかにして強い影響力を持ちえたのか、ジェンダー秩序の転換に向けての人々の意識の変化はいかに進行していたのかを 解明することにある。 2022年度は、女性参政権運動をはじめとする女性運動にかかわった人々の記録、女性労働者たちが書き残した手記・回想録などを主な資料として、1930年代から1950年代にかけての専業主婦の急増と1960年代におけるその急減の過程を分析し、良妻賢母イデオロギーの質的変容とそれに伴う家事改革の様相を描いた単著を刊行した。20世紀半ばまでに展開した多様な女性運動の内部においては性別役割をめぐる葛藤が多角的に議論されていたが、家事労働と労働市場への進出をめぐる女性たちの取り組みについての分析は上記の単著において一定の成果を残すことができた。 他方、諸運動においてはジェンダー平等の実現にはリプロダクティブ・ライツとセクシュアル・ライツが不可欠であるという認識が共有されており、その獲得が一貫して目指されていたが、この点についての分析は2022年度までに終えることができなかった。そのため補助事業期間を1年延長し、2023年度に現地に渡航して資料収集やインタビュー調査を実施して、セクシュアリティをめぐる人々の意識の変化を扱う単著を2023年度末までに完成させることを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年夏までスウェーデンに長期滞在し、本研究を基課題とする国際共同研究強化(A)にかかる調査を優先しておこなっていたが、COVID-19感染拡大による移動の制約があり、現地滞在中に予定していた調査ができなかった。そのため、2022年度の夏季に再び国際共同研究強化(A)による現地調査を実施し、その後、現地に引き続き滞在して本研究にかかる資料収集やインタビュー等を実施した。ただし、勤務校等の業務により調査のための期間が限られたものとなり、必要な資料の一部を入手することがかなわなかったため、本研究の補助事業期間を1年延長し、2023年度に再度現地調査を実施したうえで本研究の総括をおこなう予定である。本研究の成果は2冊の単著により公表することを予定しており、うち1冊は2022年度末に『スヴェンスカ・ヘムの女性たち―スウェーデン「専業主婦の時代」の始まりと終わり』(新評論、2023年3月)として刊行した。2022年度末の時点では、もう1冊の執筆にかかる調査も半分程度終えている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度から2023年度にかけて本研究の成果を単著2冊により発表することを目指しており、うち1冊については2023年3月に刊行した。2冊目については、2022年夏季に実施した現地調査および2023年前半に実施予定の調査にもとづき2023年度末までの完成を目指しているが、これまでの調査はほぼ予定どおりに進んでおり、2023年度夏季に順調に現地調査を終えることができれば、年度末までに完成することが見込まれる。
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