研究課題/領域番号 |
19K02528
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 西南学院大学 (2020-2023) 山口大学 (2019) |
研究代表者 |
田中 理絵 西南学院大学, 人間科学部, 教授 (80335778)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 児童虐待 / 支援 / 支援機関 / 子ども支援機関 / 社会化 / 連携 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究のリサーチ・クエスチョンは、①子ども期だけでなく長期的生活史から虐待の影 響の共通点を実証的に解明すること(虐待児童の社会化研究)、②児童虐待の支援機関の連携を阻む要因の析出と、連携を促進する要因の解明、③施設措置から家庭的養護委託へと社会的養護が転換期を迎えるにあたって、養護児童の生活がどのように変化するのかを明らかにする事の3点であり、それぞれが大きな研究課題である。 そこで、学校教員・児童相談所職員・児童施設職員・社会福祉士・法機関職員・医師等、児童虐待にあたる多くの機関の協力を得て、これら課題を地道に解明していく。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、子ども期に「被虐待児童」と社会的に認知されるに至った成人を捉えて、児童虐待経験者の社会化過程を長期にわたって解明することである。これまでアプローチの困難性から捉え損ねてきた虐待経験者(=当事者)の視点に焦点を当て、彼らがどのような社会化を経て親になるのかについて、丁寧な 生活史調査から解明していくと同時に、虐待対応・支援機関の連携を阻む要因の特定も目指した。具体的には、教育・福祉・医療・法機関の虐待問題の担当者・専門家へ面接調査を実施し、概念創出法によって虐待対応に関するそれぞれの機関の目標・手立て・限界の共通点と相違点を比較分析する。これらの調査分析は虐待の再生産の問題解明の糸口にも繋がり、児童福祉等の現場に対しては応用可能で有益な知見の提示が可能になると期待できる。 本研究では、児童相談所や学校、福祉施設における直接観察および聞き取り調査、また成人後の虐待経験者に対するインタビュー調査によってデータ収集をすることを調査方法としていたが、しかし2022年度までのコロナ禍対策・対応によってそれら施設・機関は外部者との接触を極力控えていたこと、また対象者に対して対面での調査がしにくかったこともあり、できることとして、虐待に関する保育所・幼稚園・保護者への意識調査(アンケート調査)を実施した。特に、どういう養育者・保育者が虐待に対して予防する意識が高いのか、あるいは不安感が高いのかについて分析を行い、2023年度は、その分析結果を日本子ども社会学会、日本保育学会、日本社会病理学会において発表した。 また、子どもの年齢を引き上げ、小学校高学年の子どもを持つ保護者に対しても自分が虐待を行う危険性に関する意識調査(アンケート調査)を実施した。その成果については、2024年度に公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究のねらいは、当事者の主観から長期にわたる生活過程を実証的に明らかにすることであったが、2022年度までのコロナ禍対策・対応によって十分なラポールの形成および対面による調査が困難な状況であった。特に、家族を形成し始めている被虐待経験者へのインタビューは、対象者の子どもの年齢が低いことなどもあり、家庭訪問による聞き取りを控えざるを得なかった。 2023年度は、コロナ感染症が第5類に引き下げられたこともあり、再び調査実施のため児童養護施設職員との交流、子ども期に虐待を受けた成人の方への調査依頼を行い、快諾を得ている。同時に、対面での調査が難しかった時期に行った、保育所・幼稚園職員および保護者への意識調査(アンケート)の分析結果を公表したことから、児童年齢を引き上げ、小学校高学年の子どもを持つ保護者への自身の虐待危険性に関する意識調査を行ったが、2024年度はその分析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、計画していた期間を延長して調査研究を継続させて頂くが、本研究の最終年度にあたり、これまで行った保育者・幼稚園教諭および幼児・児童の保護者に対する児童虐待への意識調査の結果についてまとめる予定である。特に、立場が異なる人たちがそれぞれ児童虐待についてどのように認識しているかを多角的に浮かび上がらせたい。 【実証研究】児童虐待への対応機関職員への面接調査 令和5年度3月に保育所職員へ「虐待対応の手引き」(厚生労働省)が作成されるなど、児童相談所だけでなく、児童虐待に対してさまざまな保育・教育機関が 早期に発見し対応することがますます期待されるようになった。対応するには専門的知識や保護者と関わる経験が必要であるが、そうした社会的要請に対して必ずしも十分な研修が積まれているわけではなく、現場では戸惑いも見られる。そこで2023年度は、児童虐待の最前線にいる児童福祉司、ソーシャルワーカー等への聞き取り成果について、第60回中国地区児童養護施設研究協議会で施設職員に対して発表させていただいた(2023年6月)。2024年も引き続き調査をさせていただくことで、9月に行われる児童養護施設を中心とする研修会ですぐに現場の職員へ研究成果の公表を行う予定である。 また、普通の保育所・幼稚園の教職員・保護者に対して行った児童虐待への関心に関するアンケート調査の結果を2023年度に3つの全国学会で発表したが、同時に小学校高学年の児童をもつ保護者に対する「自分が児童虐待を起こす危険に関する自己認識」調査を実施した。現在、その分析を行っている最中であるが、本年度はその成果も含め、小学校の教職員や児童福祉司など専門職員への面接調査を実施したい。具体的には、親に対してどのように対応し、虐待を発見・特定し、子どもの救済を試みるのかに焦点を当てる。
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