研究課題/領域番号 |
19K02613
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
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研究機関 | 国立教育政策研究所 (2022) 奈良教育大学 (2019-2021) |
研究代表者 |
横山 真貴子 国立教育政策研究所, 幼児教育研究センター, 総括研究官 (60346301)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 預かり保育 / 絵本 / 幼稚園 / カリキュラム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、幼稚園教育要領(2017)において作成が求められている幼稚園の「預かり保育」のカリキュラムを、絵本に着目して開発する。そのため、3~5歳児まで、同一の対象の発達を3年間追跡し、①幼稚園の4時間の教育時間と、②教育時間外の「預かり保育」、③家庭での子どもと絵本の関わりを、保育観察、保育者へのインタビュー、保護者への質問紙調査を縦断的に実施する。同時に「預かり保育」に先進的に取り組む園の訪問調査を横断的に行う。これらにより、子どもの生活と学びをつなぐ「預かり保育」の絵本カリキュラムを、(a)絵本リスト、(b)絵本環境、(c)絵本から発展する活動、(d)学びの4点に着目し、開発する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、幼稚園教育要領(2017)において作成が求められている幼稚園の「預かり保育」のカリキュラムを絵本に着目して開発することである。「預かり保育」は、実施形態も利用する園児の実態も多様であるため、カリキュラム作成は容易ではない。そこで本研究では、子どもが生活する場のどこにでもある絵本に着目し、①縦断調査で子どもの生活全般を取り上げ、子どもと絵本との関わりの発達的変化を学びを中心に描き出しながら、②横断調査で先進園を訪問調査し、③「預かり保育」の絵本カリキュラムを開発することを目指す。 2022年度は、協力園のクラス編成及び預かり保育の体制が大きく変化した。新たに満3歳児保育が開始され、預かり保育も週3回から土日を除く週5回の実施となり、11カ月間にのべ166回実施された(2021年度94回)。そのため、全体的な傾向の把握を重視し、①縦断調査では全クラスの利用状況を調査した。利用者はのべ2,229人、1回の平均利用者は13.4人だった。利用回数は0回22人(20.8%)、1~30回65人(61.3%)、100回以上は3人(2.8%)であった。 預かり保育の環境、子どもの活動も変化した。満3歳児の利用者が3学期に増加することを踏まえ、低年齢児向けの絵本を増やし、くつろぐスペースとして大判のカーペットを敷いた絵本コーナーを入口から目に入りやすい場所に設置した。その結果、絵本コーナーの利用率が高まり、保育者の関りも増えた。保育者がコーナーにいると、子どもが来る頻度も上がり、自分で絵本を読む姿も増えた。絵本コーナーをどのように設置し、保育者がいかに関わるかが、子どもの絵本への関りに大きく影響した。カリキュラム作成においては、預かり保育における絵本の位置づけをどう捉え、環境を設定していくのかを明確にすることの重要性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、縦断調査、横断調査とも、十分に実施できなかった。加えて協力園での縦断調査では、園のクラス編成、預かり保育の実施体制が大きく変更されたため、預かり保育の利用状況も変化した。そのため、前年度までの研究との連続性が保たれず、「預かり保育」の絵本カリキュラムの作成も再考が余儀なくされた。もとより多様な形態が特徴の預かり保育である。汎用性の高いカリキュラム開発のためには、今年度の状況変化に伴う利用状況を踏まえ、改めてカリキュラムを編成することが必要となった。また横断調査として、新型コロナウイルス感染症の収束後に実施予定だった先進園の視察訪問も、カリキュラムを取り寄せ、内容の分析は進めたが、実際に園を訪問することはできなかった。 さらに協力園では次年度において、預かり保育の時間帯の拡大が検討されている。現在の保育終了後の午後に加え、保育開始前の朝の時間帯、及び長期休暇中の平日も実施する予定である。多様な形態の預かり保育に対応可能なカリキュラム開発のためにも、研究期間を延長して実施し、汎用性の高い「預かり保育」の絵本カリキュラムの作成を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は2022年度までに得られた3,4,5歳児の縦断研究の結果を踏まえながら、再度5歳児の縦断調査を行う。また横断調査として、預かり保育先進園への視察調査を実施する。これらの結果を総合的にまとめ、預かり保育の絵本カリキュラムの作成を目指す。 (1)縦断研究では、月に1回程度、5歳児を対象に①幼稚園の正規の教育時間及び②預かり保育の観察を実施する。これまでの結果をもとに、①幼稚園の正規の教育時間については、以下4点について観察する。(a)絵本との関わり、(b)絵本環境、(c)絵本に関わる活動、(d)学び。場面は、写真撮影とともにビデオ録画し、フィールドノーツへも記録する。加えて保育者へのインタビューを行い、保育者の保育観や絵本の位置づけなどについて尋ねる。②幼稚園の預かり保育についも①同様、4点について観察する。預かり保育の部屋全体を録画できるようにビデオカメラを設置し、写真撮影、フィールドノーツへの記録も実施する。また①同様、預かり保育担当の保育者へのインタビューも実施する。①②は、研究結果を保育者、預かり保育担当者と振り返り、絵本環境の再構成を行うアクション・リサーチの手法をとる。③家庭に関しては、学年末3月に、保護者に対象児の(a)家庭での絵本との関わり、(b)絵本環境、(c)絵本に関わる活動、(d)学びについて問うアンケート調査を実施する。この調査は、全学年を対象とする。(2)横断研究として、預かり保育のカリキュラムを作成、実施している先進園を訪問調査する。 (1)(2)の結果をまとめ、預かり保育の絵本カリキュラムを作成する。また研究成果は、国内の所属学会(日本乳幼児教育学会:12月、会場:名古屋市立大学、及び日本発達心理学会:2024年3月、会場:大阪国際交流センター)で発表するとともに、作成したカリキュラムの冊子を作成するなどして、公表する。
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