研究課題/領域番号 |
19K03011
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
|
研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
粂野 文洋 日本工業大学, 先進工学部, 教授 (50442512)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
|
キーワード | Project Based Learning / ソフトウェアエンジニアリング / リスク分析・予測 / マルチエージェントシミュレーション / 深層学習 / 社会実装PBL / リスク分析手法 / 機械学習 / リスク分析 / 社会実装教育 / PBL |
研究開始時の研究の概要 |
担当教員や学生以外のステークホルダからシステム開発の要請を受け,その開発・提供および保守を演習テーマとする形態のPBL(本研究ではこれを社会実装型PBLと呼ぶ)は,開発実務に近い体験による教育効果が期待できる.一方,第三者からの要請を受け,開発した成果を提供することから,他の形態のPBLと比較して様々な高いリスクが存在する.そのため,演習の実施には,教育上かつプロジェクト上のリスク管理が非常に重要となる.そこで,本研究では,従来のリスク管理手法や推論技術,予測技術を発展させ,社会実装型PBLに適用できる新たなリスク分析手法の確立を目指す.
|
研究実績の概要 |
本研究は社会実装型PBL(担当教員や学生以外のステークホルダが抱えているITに関わる課題を解決し,実際に利用してもらうことを前提としたシステムを開発する形態のPBL)を対象としたリスク分析手法を提案することを目的としている.過去のPBL演習によって蓄積された様々なデータから,分析対象となるチームのプロジェクトで発生しうるリスクの識別および予測を行う手法を確立することを目指すものである. 2019年(本研究の初年度)には,深層学習を中心とした機械学習の適用可能性を分析すべく,機械学習応用の文献調査を行った.その結果はサーベイ論文として国際ジャーナル(IOS Press Intelligent Decision Technologies)に掲載されている. 2020年および2021年でマルチエージェントシミュレーションに基づくリスク分析手法の開発を行った.社会実装PBLで考慮すべきリスクの中でも,テーマ内容に依存しない共通のリスクとして,スケジュール遅延や作業負荷の偏りのリスクに焦点をあて,マルチエージェントモデルによって学生のプロジェクトをモデル化し,リスクを予測する手法を考案し,様々な条件で実験を繰り返し行った. 2022年では考案したリスク予測手法の妥当性を検証する分析を行った.これらの結果をソフトウェア工学に関する国際会議JCKBSE2022(International Joint Conference on Knowledge-Based Software Engineering)に投稿し,発表を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ソフトウェア開発現場におけるリスク分析を系統的に実施する手法として,シミュレーションを行う研究が多く行われている.しかしながら,これらの研究は企業におけるソフトウェア開発(プロフェッショナルな構成員による開発プロジェクト)を対象としており, 知識やスキル,学習能力,意欲などで発展途上の学生を構成員とするプロジェクトには適用が難しい. 本研究が対象とする社会実装PBLで考慮すべきリスクは様々であり,開発内容にも依存している.そこでまずは内容に依存しない共通のリスクとして,スケジュール遅延や作業負荷の偏りのリスクを対象としたリスク分析手法の設計を行った.そのためにマルチエージェントモデルによって学生のプロジェクトをモデル化し,リスクを予測する手法を考案し,様々な条件のもとでシミュレーション実験を繰り返し行った.チームの構成員をエージェントとしてモデリングし,プロジェクトを実施するための行動を定義することで自然にプロジェクト活動を表現でき,さらにスケジュールや作業負荷についても自然に表現することができる.モデリングにあたってはより現実的なプロジェクトを表現するために,プロジェクト内の作業間の依存関係(PERT図で表現される)もモデリングの対象とし,マルチエージェントシミュレーションモデルを記述した. シミュレーション実験の結果,作業分担の方法の違いが,スケジュール遅延や作業負荷の偏りのリスクに関係している可能性があることがわかった.このような結果が実際の演習でも該当するかどうか,すなわちシミュレーション結果の妥当性を検証するために,演習の最終回にプロジェクト振り返りのアンケートを実施した.その結果,実際の演習でも同様の傾向があることが明らかとなった.
|
今後の研究の推進方策 |
現在のシミュレーションモデルはスケジュール遅延や作業負荷の偏りのリスクを対象としたものである.簡単のために,エージェントの能力やタスクの依存関係のみを導入しており,ソフトウェア開発プロセスに固有の様相を取り入れていない.したがって,ソフトウェア開発以外のPBLにも本手法を適用できる一方,より忠実にモデリングをおこなうためには,固有の様相を取り入れることが必要となる.国際会議JCKBSE2022での発表時の議論においても,開発チーム以外の重要なステークホルダである依頼元も何等かの形でモデル対象とし,リスクを評価したほうがよいのでないか,という指摘もあった. また,シミュレーションに基づく手法以外にも,構成員(学習者)の知識やスキルに関するデータや過去に実施された演習のデータなど,データをより積極的に活用・分析し,リスクを識別,予測する手法についても検討が必要である. さらに機械学習のような日々進化しつつある技術の適用を社会実装型PBLの開発テーマに入れることには技術的リスクと運用面でのリスクが存在することがわかっている.一方で社会的な期待も大きく,第三者のステークホルダからの要望で,テーマとして検討しなければならない事態も考えられる.機械学習に限らず,IoTやVRのように普及進展が急速で社会的に注目されている技術でも同様のことが想定される.こうした状況に対応するためにPoC(Proof of Concept:実証実験)を題材とした社会実装型PBLの進め方やリスク管理手法についても,事例調査も進めながら,検討を進めていく予定である.
|