研究課題/領域番号 |
19K03164
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09080:科学教育関連
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
太田 伸也 東京学芸大学, 教育学部, 名誉教授 (50322920)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 空間の想像力 / 対象と視点 / 数学教育 / 空間図形の指導 / 正四面体 / 空間図形 / 変換 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,「対象/視点」の意識化を,3次元空間の問題解決過程で必要とされる「数学の方法」と捉え,空間の想像力育成を目指す授業への提案として具体化しようとするものである。3次元空間の問題解決過程における「対象/視点」の変容を促すためには,教材に対応させて予想される「対象/視点」についての分析が必要である。また,3次元空間の問題を考えるときには「対象/視点」を顕在化することが協働的な問題解決に必要である。以上のように「対象/視点」の意識化の役割を明確にした上で,空間図形指導における「数学の方法」としての「対象/視点」を顕在化させるテキストと授業書を作成する。
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研究実績の概要 |
3次元空間の問題解決における生徒の活動では,解決に都合のよい「対象/視点」(何をどこから観るか)の選択や変更が行われていることに着目し,これを数学の方法として顕在化させる授業の試行とその考察に引き続き取り組んだ。 本年度の取り組みの1つとして,「正四面体は正方形にみえるか」をテーマとする授業(令和4年9月)の記録について「対象/視点」の枠組みから分析と考察を進めた(太田・中逸・松原,2023)。あえて中学校1年で空間図形の学習前に授業を試みたのは,特別な知識を前提としなくても「対象/視点」の顕在化を目標とする授業が可能であることを確かめるためである。実際,正四面体の模型を動かす観察は正方形に見えるかを探る目的での「対象/視点」の変更を試みる活動であり,対象や視点を顕在化させる活動として価値が認められた。例えば,「発表者が立体模型を観る視点」を視覚でとらえ,自らの視点と模型との関係に置き換えて理解しようとする活動が予想以上に多くみられたこと,視覚に頼りつつ模型の向きや直線や平面の位置関係を図に表す活動,みえる形は正方形かひし形かを議論する場面で対象と視点との距離を変化させて説明する活動などである。 もう1つの取り組みとして,太陽の高さの求め方をテーマとする授業(中学校1年)の構想を「対象/視点」の観点から分析し(松原・川村・太田,2023),2023年9月に附属小金井中学校1年で授業を試行した。さらに,令和6年度まで研究期間の延長が見込まれたことから,「円柱を斜めに平面で切断したとき展開図の形はどうなるか?」に焦点をあてた授業(東京都内公立中等教育学校4年),「北極での太陽の見え方」をテーマとする教材研究の授業(教員養成課程3年次学生で実施)に取り組んだ。これらの授業についての「対象/視点」の枠組みによる分析と考察は来年度に継続し,テキストとして整理する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染拡大の影響により,本研究では「対象/視点」の顕在化を目標とする授業の試行事例が不足していたが,研究期間の延長が認められたことで,昨年度には実践事例を3通り試みることができた。この授業の分析と考察を論文として発表するとともに,本研究の取り組み全体をテキストとして整理するために,令和6年度への研究期間延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間がさらに令和6年度まで認められたことから,テキストの開発を進め,令和5年度に取り組んだ授業の分析と考察をいかした事例を取り入れたテキスト集の作成に取り組む計画である。具体的には,「太陽の高さの求め方」をテーマとする授業(中学校1年で2023年9月に実施)での生徒の活動を「対象/視点」の枠組みによって分析すること,「円柱を斜めに平面で切断したとき展開図の形はどうなるか?」をテーマとする授業(東京都内公立中等教育学校4年で2023年9月に実施)において模型を利用して考える場面での生徒の活動を「対象/視点」の枠組みによって分析すること,また,「北極での太陽の見え方」をテーマとする授業(教員養成課程3年次学生における教材研究として2023年12月に実施)でみられた活動を「対象/視点」の枠組みによって分析することである。 なお,最終年度にあたり,これまでの事例をテキストとして整理するが,昨年度同様,現学習指導要領での指導内容との対応にとらわれず,今後の可能性として考える。テキスト化する場面は大きく2通りに分類し,1つは「対象/視点」の顕在化そのものに焦点をあてる授業,もう1つは「対象/視点」を顕在化させる活用場面としての授業である。
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