研究課題/領域番号 |
19K03193
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
増田 匡裕 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 教授 (30341225)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 類似性 / コンフリクト / ピアサポート / 対人コミュニケーション / Q方法論 / 混合研究法 / ソーシャルサポート / 多次元価値 / 喪失体験 / ミックストメソッド / グリーフケア / 友人関係の発達過程 / 対人援助 / ダイアログ / 共同主観性 / ピア・サポート / グリーフ・ケア / ソーシャル・サポート |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、同じ体験を持つ人や同じ立場の人同士の対人援助であるピア・サポートに必然的に伴う「類似性・共通性」が「等価性」を持つことへの期待や過信が故に発生する対人葛藤のメカニズムを理論化し、改善法の提案をするものである。調査の最初の段階は探索的な事例収集であり、ピア・サポート・グループを対象とした質問紙・ネット調査で「あなたの場合と一緒にしないで欲しい」と感じる事例を収集し、分析的帰納で「等価性」に関わる葛藤のパターンを抽出する。これに並行してインフォーマントに聞き取り調査を行いケース・スタディの結果と照合した上で、「類似性・共通性」の呈示が「等価性」と相容れない現象のモデル化を試みる。
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研究実績の概要 |
本課題の延長後の活動は、ピアサポート活動の当事者とのラポールの維持の交流活動・研究打ち合わせを継続することで、ピアサポートで関係者の「思い」がすれ違うことを具体的に調査する手法を模索することに費やされた。その一方で、文献レヴューの結果、質的・量的調査法の両方を組み合わせる混合法の実践に着手した。具体的にはQ方法論の実用化と過去のインタヴュー記録を用いた再インタヴュー調査である。 Q方法論については研究は進捗した。本課題申請時のリサーチ・クエスチョンに立ち止まった上で、「総論賛成・各論反対」の構造を可視化する手法として、国内でも過去30年ほとんど例のなかったパイロット研究を実施したのがこの年度の成果である。ある文学作品(探偵小説シャーロック・ホームズ・シリーズ)の同好の士(シャーロキアン)が集まる趣味の会合に集まった40代から80代までの男女23人を対象に、全作品の「語り合いたい度合い」の順位づけ作業(Qソート)を依頼した。シャーロキアンを対象として研究をパイロット研究としたのは、シャーロキアンは全作品が60篇あることを理解した上で同好の士との交流を楽しんでいるからである。研究参加者全員が評価対象の全項目に十分な理解をしていることがQ研究法の前提であり、「コンコース」と呼ばれるこの項目リストを作成するための作業を省略できるからである。 研究の結果シャーロキアンは5タイプに分類され、60篇の作品への選好基準が5つあるという認知構造が抽出され、シャーロキアンへのフィードバックから得られた回答から5つのユニークな世界観の解釈が容易になった。これにより、共通の関心という類似性がゆえに明らかになる相違点を説明する手法としてQ方法論が有効であることが確認できた。 Q方法論については国内版の調査ツールがないため、本課題の目的にその開発を含めることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度から着目したQ方法論の実用性の確認は十分にできたが、それを踏まえてピアサポート研究に応用するためのツール、ウェブを用いた日本語の回答フォームの作成を年度末にする予定であったが間に合わなかった。これはシャーロキアン対象の研究で一斉配布・一斉回答の方式を取った、分析結果解釈に別の機会を設ける必要があったためである。会合は2か月ごとの開催のため、結果的に半年を要した。また、シャーロキアンといえども回答漏れがあり、これがQ方法論の実践で発生する一番の問題であることを再認識した。これらを防止する方策を考えた上で回答フォームの作成を依頼できるアウトソーシング先を探すのに時間を要した。 これらの問題は、我が国の心理学分野において30年以上にわたってQ方法論が忘れ去られていたため、再発見の過程に伴う困難である。 一方、ラポール形成済みのピアサポート実践者に対する再インタヴューについては、本報告作成時点では、研究倫理委員会の審査中である。
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今後の研究の推進方策 |
Q方法論については、入力フォームの仕様書の作成段階に入っており、専門業者に打診中である。ピアサポートにかんするQ方法論を用いた調査の項目群(コンコース)の作成準備に入っている。国内に「先達」がいないため9月にアメリカ合衆国で実施される国際的な研究団体の調査出張して専門家と直接具体的な情報交換を行う。当初は7月の混合研究法の学会での発表の機会を用いる予定であったが、急速な円安による現地滞在費の高騰で発表を諦め、発表先は国内学会に切り替えた。 再インタヴューについては、研究倫理委員会の委員との協議が順調であり、現場で違和感のない調査の実施が準備可能な段階に入っている。
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