研究課題/領域番号 |
19K03200
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
松本 友一郎 中京大学, 心理学部, 教授 (30513147)
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研究分担者 |
吉田 琢哉 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 准教授 (70582790)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 組織 / silence / voice / 多元的無知 / 沈黙の螺旋理論 |
研究開始時の研究の概要 |
企業などの組織において,誰もが思っていることであるのに誰も口にしないことがある。たとえば,現代社会の世論において残業を美徳とする考えは少なくとも表面上は劣勢にある。しかし,世論においては劣勢にあるはずの考え方が組織内では優勢であることも多い。では,なぜ残業に対する否定的な考えを誰も口にせず,現状を維持することになるのか。本研究は,そのような現象が生じる要因を組織内のダイナミクスという観点から検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は組織内において従業員の間で残業などに対するsilenceが維持される要因について検討することを目的としている。なお,ここでのsilenceとは,従業員が思っていることを発言しない沈黙を指す。職場におけるsilenceは,残業の他にも育児休業の取得を言い出しづらい等,様々な場面で見られる。本研究では,その原因の1つとして多元的無知に着目している。たとえば,残業の場合,他の人も残業している互いの様子を見て残業しているだけで,個々人の本音では,業務が終了すれば定時に帰って良いと皆が思っているというような状況が多元的無知と呼ばれている。 これまでに社会人を対象とした横断調査で職場における多元的無知が様々な文脈で見られることを確認した。その後,大学卒の新卒社会人を対象に2020年度から縦断調査を開始した。この調査は,組織に入った後に社会的な環境の影響をどう受けてsilenceが維持されるようになるのか検討することを目的としていた。しかし,1年後の2021年度に実施した2回目の調査で,統計解析を行うのに十分な数の回答が得られなかった。そこで,2021年度中に調査会社に依頼して改めて新卒社会人を対象に縦断調査を開始した。その結果,2022年度には2回目のデータを十分に得ることができた。この縦断調査について分析した結果,自分が忙しい時に他者から仕事を頼まれた場合にどう対応するかという文脈において,入職1年後のsilenceが入職時の回答者本人の考えや行動よりも,入職時に推測した職場の考え方から影響を受けることが見いだされた。ただし,それ以外の文脈で同じ結果は得られず,組織への適応過程でsilenceが生じるメカニズムは文脈によって異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
データの不足からやり直した縦断調査は分析に必要な分のデータが回収できた。その分析も終え,学会において成果を発表した。しかし,社会人とは別に予定していた中高生等の学生を対象とした調査は,新型コロナウイルスによる社会状況を考慮して引き続き延期せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
社会人対象の一連の調査は完了したため,成果をまとめて論文を投稿する。また,職場におけるsilenceは組織に入ることで生じるのか,それ以前の発達過程において既にそのような兆候が見られるのか検討するため,当初,中高生を対象とした調査も実施する計画であった。この中高生対象の調査については,調査会社に委託し,モニターとして登録されている保護者を介してデータを取得する等の方法を検討する。
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