研究課題/領域番号 |
19K03210
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
杉浦 淳吉 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (70311719)
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研究分担者 |
吉川 肇子 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (70214830)
西田 公昭 立正大学, 心理学部, 教授 (10237703)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 社会の分断と統合 / ゲーミング / リスクコミュニケーション / 集団間葛藤 / 説得的コミュニケーション / 合意形成 / 化学反応ゲーム / ESG投資 / 多数派予測 / 意見表明 / 共通利益 / 多属性態度モデル / 共通目標 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、社会の分断と統合のプロセスに関する2つの課題を達成する。(1)社会心理学における集団間葛藤の解決の知見と研究手法を用いて、意見表明による集団間葛藤とその解消のプロセスを解明する。その手法として目的の異なる集団間に部分的に共通した目標があることを自らが発見できるゲームを開発する。(2)立場の異なる双方の目標が一致するかのように提案して説得する戦略的な意見表明を取り上げ、カルトのマインド・コントロールのプロセスを援用して検討する。こうした共通目標の気づきによる相互理解の促進戦略のプロセスから、社会の統合に関するゲームの開発と評価を行う。
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研究実績の概要 |
2022年度は、これまで開発してきた「社会の分断と統合」をテーマとするゲーミングを「説得モデル」と「合意形成モデル」の2つのゲーミング・モデルとして体系化を進めた。 第1に、説得モデルでは、経済格差をモデル化した「説得納得ゲーム」(SN game; Sugiura, 2022)をベースとして開発した「エコファンディングゲーム」(EF game, 杉浦・三神, 2022)を改変し、多様化する社会の包摂をモデルに組み入れた実験ゲーミングを新たに開発した。このゲームでは、説得的コミュニケーションにおける送り手と受け手それぞれの意図の予想を促す仕組みをゲームのルールで導入した。72名がこのゲームに参加し、相手の立場を予想することで、参加者それぞれが双方の立場を理解して行動する可能性が高まることが示唆された。 第2に、合意形成モデルでは、利害対立の当事者の役割から意見表明の柔軟性(一面的・多面的)を検討する利害調整ゲーム「ステークホルダーズ」(杉浦・吉川・西田, 2022)における「意見表明ボード」を、利害対立の当事者の立場を考慮しながら第三者が議論する合意形成ゲーム「市民プロフィール」(杉浦・大沼・広瀬, 2021)に導入し、その効果を比較した。65名がゲームに参加し、討論についての参加者の評価と討論時間との関連について検討した。その結果、一面的な意見表明では討論時間が短い場合に評価は高く、多面的なスタイルでは討論時間が長い場合に評価が高くなっていた。意見や価値観が多様化し、それぞれの目標が異なるが故に合意形成の達成が難しく、討論に多くの時間を要するような課題において、多面的な意見表明のスタイルを担保し、共通の目標を探し易くする仕組みを導入することで、目標達成に近づけることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の感染流行と予防対策の観点から、実験及びフィールドワークに関して計画を変更し、感染予防を優先事項として研究を進めた。本研究でこれまで開発してきた複数のゲーミングの実験結果を踏まえて新たなゲーミング実践を行い、それぞれの結果を比較しながら、それらのゲーミングについてシステムとしての再構成を進めた。当初に計画した点でみると若干の遅れがあるが、一方でこれまでのゲーミング実験の結果から、発展的な枠組みを構築し、再分析も含めた体系化が可能であると判断し、研究期間をさらに1年延長することとした。
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今後の研究の推進方策 |
当初の対面で計画したしていたゲーミング実験に加え、2020-21年度においてオンラインでのゲーミングの実践も取り入れることで、ゲーミング設計における対面とオンラインとの比較を通じた体系化が可能であると判断し、既開発のゲーミングの体系化と理論の構築を進め、論文と書籍での出版を進める。開発したゲーミングは、学習教材としてアウトリーチできるよう、実施マニュアルを含めた教材の整備を進める。
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