研究課題/領域番号 |
19K03285
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
佐藤 健二 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 教授 (10318818)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | トラウマ / 筆記 / 心身の健康 / 心的外傷後ストレス反応 / マインドフルネス / セルフコンパッション / 心身健康 / 構造化筆記 / 外傷後ストレス反応 / 心的外傷後成長 / 認知 / 健康 / 認知機能 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,トラウマに関する感情や思考の筆記が心身の健康・認知機能(記憶力等)の向上に及ぼす影響をマインドフルネス(対象をあるがままに捉えること)や感情神経科学の観点から検討することである。まず,過去の筆記のテキストを分析して,効果的な筆記の仕方を明らかにする。経験した感情や思考をマインドフルに筆記している程,脳機能が活性化され,心身の健康・認知機能が増進すると予想される。マインドフルネス強化筆記開示の効果を,従来の自由に筆記する群,実験後の予定を筆記する群と比較し,それが従来の方法よりも心身の健康・認知機能が増進するかどうかを検討し,簡便な健康増進技法を実社会に提供する。
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研究実績の概要 |
トラウマの筆記による心身の健康の増進という研究課題に関して,まず,トラウマを有すること,心的外傷後ストレス反応(post-traumatic stress reactions: PTSR),心身の健康の関連性を検討する必要がある。トラウマを有する個人をPTSRの高低で2群に分け,トラウマが無い個人を含めた 3群の心身の健康(身体的症状,不安・不眠,社会的活動障害,うつ傾向の4因子)を比較した。4因子について,仮説1.PTSR高群はトラウマ無し群より有意に高い,2.PTSR低群はトラウマ無し群より有意に高い,3. PTSR高群はPTSR低群よりも有意に高いであった。 大学生172名(男性55名,女性116名,その他1名,平均年齢19.16歳)に外傷体験調査票,改訂出来事インパクト尺度日本語版(以下IES-R,PTSRの程度を測定),全般的精神健康調査票28項目版(以下 GHQ-28,上記4因子から構成)を施行した。倫理的配慮として調査に協力することは任意であり,参加しなくとも一切の不利益は生じないことを説明した。IES-Rは25点以上で心的外傷後ストレス障害の陽性が疑われることから,有効回答者135名の内,トラウマを有する個人(82名)について,25点以上の32名をPTSR高群,25点未満の50名をPTSR低群とした。4因子について,PTSR高群はトラウマ無し群, PTSR低群よりも有意に高かったが,PTSR低群とトラウマ無し群との間に有意差は認められなかった。 仮説1,3は支持され,仮説2は支持されなかった。トラウマを有していたとしても,PTSRが低い場合は,トラウマが無い状態と同等の心身の健康状態であり,トラウマを有し,PTSRが高い個人こそが,心身の健康状態が悪く,支援の対象であることが示唆され,支援対象の明確化と言う点において,本研究の意義は大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体的には,進展していると言える。これまでに,トラウマと心的外傷後ストレス反応,心身の健康の関連,トラウマの筆記が心身の健康・認知機能に及ぼす影響,どのような筆記内容が心身の健康および認知機能と関連しているか,マインドフルネスが心身の健康に及ぼす影響が明らかにされてきているからである。ただ,感情神経科学的観点からの検討に必要な生理機器の選定と購入,これまでの研究成果に基づいた実験の実施が遅れている。2020年度からのコロナ禍により,実験の実施,生理機器の実機の検討が困難となり,また,研究代表者が新たに2つの組織(臨床心理学専攻,総合相談部門)の長となり,業務が増大したこと,教室の代表者であり全学教職科目を担当してきた教員の後任補充人事の選考委員長として1年間にわたって,その業務を遂行してきたこと,昨年度から新たに委員長職に就いたことから,生理心理学・感情神経科学分野の専門家へのヒアリングおよび実験を実施することが出来なかったためである。こうした点から「やや遅れている」と評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
まず,当該分野(生理心理学,感情神経科学)の専門家へのヒアリングを実施して,感情神経科学的研究に必要である,背外側前皮質の血流量を測定する生理機器の選定と購入を行う。次に,これまでの研究成果に基づいて,心身の健康および認知機能の増進に寄与するであろう,トラウマ筆記の教示文の開発に関連する研究を立案・実施する。どのような言葉の増大が心身健康および認知機能の増大と関連しているのかを明らかにする。この際,自身の感情や認知を言語化する能力を測定する質問紙も実験参加者に施行し,そうした傾向性が結果に及ぼす影響も検討する。この研究の実施によって,心身の健康・認知機能を増大させるトラウマ筆記法を開発し,統制条件と比較することによって,その効果を検証する。
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