研究課題/領域番号 |
19K03292
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 (2022) 埼玉医科大学 (2019-2021) |
研究代表者 |
和氣 大成 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 研究員 (80815845)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 医学的対処可能性 / アルツハイマー病 / バイオマーカー / 知る権利 / 発症前診断 / アミロイドPET / 医療倫理 / 意思決定支援 / 告知 / 生命倫理 / バイオエシックス / 共同意思決定 / 倫理 |
研究開始時の研究の概要 |
いまだ完全な治療法のないアルツハイマー病の発症リスクが予測可能になりつつある今、発症前診断の安全かつ効果的な告知方法を早急に確立しなくてはならない。本研究では、もの忘れの不安がない健常高齢者と、軽度認知障害患者を対象とし、性格傾向の違いなどが告知の受け止めにどう影響し、本人と家族の心理や行動が告知後にどう変容するかを明らかにする。それを基にアルツハイマー病発症前診断を安全かつ効果的に告知するためのマニュアルを開発する。真実を知り自己決定する権利と尊厳を重んじることで、本人と医療者が一緒に今後の方針を決める共同意思決定に基づく新たな認知症医療のあり方の先駆けとなることを目指す。
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研究実績の概要 |
アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβの蓄積を防ぐ薬剤(一般名アデュカヌマブ)が世界で初めて米国食品医薬品局(FDA)で迅速承認されたものの、その承認を至る科学的なプロセスに関する疑義が広がった。日本でも厚生労働省は承認見送り(継続審議)と決断した。ところがその後、同じくアミロイドβを標的とした別の薬剤(一般名レカネマブ)は、認知機能の低下を抑制した十分なエビデンスを示すことに成功したとしてFDAに迅速承認され、科学コミュニティから驚きとともに受け止められた。日本でも承認が目指されているが、対象となる患者が限られているためすべてのアルツハイマー病患者が使えるわけでなく、脳出血などの副作用のリスクも懸念されており、保険適用になった際でも財政をひっ迫させる恐れがある。さらに、レカネマブを用いたグループの認知機能の低下の抑制の割合は、プラセボを投与されたグループのそれに比べ27%少なかったと発表されたが、このベネフィットが上記のリスクと比較して妥当性があるのか、リスク・ベネフィット評価の観点からの議論も起こっている。以上の状況を踏まえ、まずは新たな根本治療薬であるレカネマブが、本研究が対象とする医学的対処可能性となりうるかの判断について、論文、学会発表などの資料を収集した。さらに、神経科学や精神医学、応用倫理学など複数の関連分野における専門家から、オンラインや対面を含めて広く意見を集めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の前提は、アルツハイマー病が医学的対処可能性がない、すなわち、予防法や根本的治療法がないという科学コミュニティのコンセンサスが確立しているというものであった。しかしレカネマブが認知機能の低下を抑制する十分な科学的根拠を示すことに成功したとして、専門家集団のコンセンサスに変化が生じた。このため、まずはレカネマブの登場がアルツハイマー病に対する医学的対処可能性となるかについての調査する必要が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き新たなアルツハイマー病の根本治療薬の開発状況を間を置かずに広く収集する。同時に、新薬の登場を受けて日本の医療現場がアルツハイマー病の発症前診断をどのように進めようとしているかについても、専門家から十分な情報と見解を収集していく方針である。
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