研究課題/領域番号 |
19K03300
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
大澤 香織 甲南大学, 文学部, 教授 (30462790)
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研究分担者 |
伊藤 大輔 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (20631089)
瀧井 美緒 岩手県立大学, 社会福祉学部, 講師 (50846318)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | トラウマ / 初期支援 / コンピテンス / 教育・研修 |
研究開始時の研究の概要 |
自然災害や事件・事故などによって受けたトラウマによって,心の健康が損なわれてしまう前に行われる初期支援(トラウマ初期支援)を実践できる専門家への要請の声が高まっている。しかし,トラウマ初期支援を行う上で必要な支援能力(コンピテンス)については,未だ十分に明らかにされていない。本研究では,トラウマ支援を経験してきた専門家を対象に調査を行い,トラウマ初期支援に必要なコンピテンスについて,具体的に明らかにする。明らかになったコンピテンスを高め,効果的なトラウマ初期支援を行える実践家(公認心理師,臨床心理士等),および一般の人々を養成するための教育・研修プログラムを開発し,その効果を検証する。
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研究実績の概要 |
本研究は,「実践家」と「一般の人々」それぞれがトラウマ初期支援に求められるコンピテンス(専門的な知識やスキルなどの基本的な支援能力)について,その構成概念を整理・検証すること(目的①),そのコンピテンスを高め,トラウマ初期支援の質向上を目指した心理教育・研修プログラムを開発すること(目的②)を目的としたものである。 新型コロナウイルス感染症の流行によって研究の遂行が困難となりながらも,これまで入手可能な学術文献等からコンピテンスの整理に有用となりうる情報の探索と収集,整理を継続してきた。しかし,文献のみでは不十分な部分もあり,それらを補うための手段の一つとして,トラウマ初期支援に関連する研修・ワークショップに参加することが考えられた。幸い,オンライン方式の研修環境の整備が進み,中止・延期されていた研修・ワークショップの再開が増えてきたこと,特に2022年度に入ってからは従来の対面形式に戻す学会等が増え,国内外の出張の制限も緩められたことから,本研究課題に関連しうる研修・ワークショップに複数参加し,情報収集を試みた。そこで得られた知識やスキル等は,コンピテンスの整理のみならず,トラウマ初期支援の研修・教育プログラムの作成にも大いに活用できるものと考えられる。 また,最近では実装科学が注目を浴びてきている。本研究での研修・教育プログラムも,開発後の社会実装を見据えて研究を進めることが重要と考えられる。そのためにも,ユーザーの声を反映した研修・教育プログラムを作成していくことが不可欠と考えられた。そこでトラウマ初期支援に関する実態とニーズを把握することを目的に,トラウマ初期支援を行う可能性のある専門職者(主に心理職)と非専門職者を対象に調査を実施した。得られたデータを整理・分析し,研究分担者らと議論を行った。調査結果については,2023年度の学会等にて発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題については関連する先行研究が乏しく,研究プロトコル等が十分に体系化されていないところがある。そのために最新の知識や情報を随時キャッチアップする必要があることはもちろん,研究者の専門分野外の情報・知識の探索・収集も要する。その結果,こうした作業に予想以上にエフォートを割かれ,それが当初の計画よりも研究が遅れている要因の一つとなってきた。それに加え,研究活動に支障をもたらしてきた新型コロナウイルス感染症の流行の収束が予測困難であること,それによる研究者側にかかる負担(本研究課題に関わる研究者は全員大学での業務を担っており,現場で感染拡大状況に応じた臨時の対応や検討を求められる場面が増え,これらと両立しながら研究を進めることは研究者にとって大きな負担となり,疲弊する要因ともなってきた)も鑑み,2021年度には研究分担者らと研究内容を見直し,立て直しをはかった(目的①であるコンピテンスの構成概念の検証を主とし,それを基に心理教育・研修プログラムを作成・提案するまでとした)。本研究課題の補助事業期間の最終年度である2022年度以降,徐々に感染症流行前の状況を取り戻しつつあるものの,それによって研究遂行の速度が劇的に変わることはなく,最終年度に本研究課題の完遂に至ることは困難であったため,補助事業期間を延長するに至った。それでも,エフォートが多く割かれる地道な作業ではあるものの,トラウマ体験者とその支援者にとって有用かつ有効なプログラムの開発には不可欠なものと位置づけ,丁寧に研究を進めていくことを重視することとした結果,支援者(ユーザー)側の実態・ニーズを把握することを目的とした調査の実施に至ることができた。調査によって得られたユーザー側の声は,教育・研修プログラムの開発の大きな後押しになりうるものと考えられる。以上より,上記の区分のとおりに評価することとした。
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今後の研究の推進方策 |
トラウマ初期支援に求められるコンピテンスの構成概念について,これまで整理してきたものを基に研究分担者らと最終検討を行い,その中で必要と判断される場合には8月頃までを目途に対応する(追加調査等)。また,実施した調査結果をふまえつつ,整理されたコンピテンスに準じた教育・研修プログラムを作成し,その内容について研究分担者らと確認・修正を行う(~10月頃)。可能であれば,内容について外部の専門家等の意見や評価を受け,それらも反映するようにし,次の研究課題へとつなげられるようにする。あわせて,教育・研修効果の評価指標(尺度)についても確認・検討を行う。
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