研究課題
基盤研究(C)
不安症や強迫症などの精神疾患に対する認知行動療法は、薬物療法に劣らない治療効果を発揮するが、提供できる医療機関や治療者の数は限られている。そこで、認知行動療法が奏効する可能性が高いと判断される患者に優先的に提供していくためには、治療反応性が高いと予測することが有効である。本研究では、認知行動療法の治療効果を、認知機能検査とMRI脳機能・形態画像により、従来より高い確率で予測できる因子を探索する。
認知行動療法は、患者の認知や行動をより適応的なものへと変容させていくことを援助する治療法であり、うつ病、社交不安症等の不安症、および強迫症などに対して薬物療法に劣らない治療効果を発揮することがわかっている。しかしながら、本邦の医療現場において、認知行動療法を希望する患者全員に提供できる医療機関や治療者の数は依然として限られている。そこで、認知行動療法が奏効する可能性が高いと判断される患者に優先的に認知行動療法を提供していくために、あらかじめ治療反応性を予測する手法を確立することを目的とした。本年度は、認知行動療法を受ける予定の不安症9名、強迫症7名、健常対照者33名をリクルートし、症状評価、MRI検査、認知機能検査を実施し、認知行動療法を完遂した患者には、治療後の症状評価を行った。また、認知行動療法の治療効果予測の候補因子の探索のため、社交不安症を対象とした認知行動療法の治療効果と関連する安静時脳機能結合を探索した。MVPAによる解析により抽出された左視床と右下前頭回を結ぶ安静時脳機能結合を重回帰分析したところ、治療前のLSAS得点より得られる値よりも高値であったことから、治療効果予測に有用である可能性が示唆された。また、国際的多施設共同研究により、認知行動療法を実施している世界13施設の子ども168名と成人318名の強迫症患者を対象に、どの脳部位の皮質厚・表面積、皮質下領域の体積が認知行動療法の治療応答を予測できるかを検討した。その結果、成人では治療効果を予測できる部位はなかったものの、子どもの強迫症に対する認知行動療法の作用機序に右前頭皮質領域が関与していることが示唆された。本研究は、2022年12月に国際学術誌Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatryに受理された。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染症の蔓延にともない、認知行動療法を受ける不安症と強迫症患者のリクルートが遅れたため。
患者と健常対照者のリクルートと症状評価、MRI検査、認知機能検査を引き続き行うとともに、前年度までに得られた各種MRI画像と心理指標と治療効果との関連性を調べるためのデータ整備を行うとともに、集積したデータを用いて解析を進める。
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すべて 国際共同研究 (24件) 雑誌論文 (31件) (うち国際共著 10件、 査読あり 28件、 オープンアクセス 20件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 7件) 備考 (3件)
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