研究課題/領域番号 |
19K03414
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
花村 昌樹 東北大学, 理学研究科, 教授 (60189587)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 混合Hodge理論 / コホモロジー理論 / Hodge複体 / Hodge構造 / 代数多様体 / カレント / コホモロジー / Borel-Mooreホモロジー / コホモロジー作用素 / 混合Hodge構造 / Cauchy-Stokes公式 / 半代数的集合 / 対数的極をもつ微分形式 / 対数的微分形式 / 代数的サイクル / 高次Chow群 |
研究開始時の研究の概要 |
複素代数多様体のコホモロジーは混合Hodge構造を持つが,そのHodge構造を与える「Hodge複体」という代数的対象を研究する.従来知られていたHodge複体の構成は層の抽象論に基づいて構成されるもので,具体的な情報を得たり計算するためには,より明示的なHodge複体のモデルを与えることが不可欠である.位相的チェインと,微分形式のみを用いて与えられるHodge複体を与えることを目的とする.
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研究実績の概要 |
コンパクトでスムースな代数多様体Xと正規交叉因子の対H, Yに対し, Hodge複体L(X-Y;H)であって, 次の性質を満たすものを構成した. 一般にHodge複体Lは,Q-部分(フィルターづけをもつQ上の複体)と C-部分(2つのフィルターづけをもつC上の複体)およびその間の比較同型からなり,そのコホモロジーHodge構造を与える構造物である. これはDeligneのHodge理論をBeilinsonがさらに精密化して与えた概念であり, Deligne コホモロジーとの関連において重要な役割を持つ. (a) L(X-Y;H)のQ-部分は, 空間の3つ組(X, Y; H)上の位相的なチェインのなす複体である. (b) L(X-Y;H)のC-部分は, XおよびY, Hの上のカレントの複体と,その間の自然な包含射,制限射を用いて記述され, ウェイトフィルターづけが自然に与えられる.(c) L(X-Y;H)は空間対(X-Y, H-Y)のコホモロジーHodge構造を与える. (これをホモロジー的なHodge複体と呼ぶ.) 他方でDeligne-Beilinsonの構成した「抽象的」Hodge複体はやはり空間対 (X-Y, H-Y)のコホモロジーのHodge構造を与えるが,条件(a), (b)を満たさないことに注意する. それに対してL(X-Y;H)は明示的な対象であり,従って原理的にはそれを用いた計算が可能である. このL(X-Y;H)についてさらに次が示された. (d) Deligne-BeilinsonのHodge複体とL(X-Y;H)の間にHodge複体としての同型が存在する. このために, (1)Yが空の場合,(2)Hが空の場合のそれぞれの場合にHodge複体の構成を行い,(d)の事実を示した.一般の場合はこれらの場合を統合して結果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 上で述べた複体L(X-Y;H)の構成について,Hが空の場合にそれを行うことに時間の多くが必要であった.そのため位相的なチェイン複体を層のレベルで導入した.解析的な実多様体の三角形分割の存在を用いて半解析的なチェインの理論を構成した.その複体が自然なウェイトフィルター付けを持つこと,およびそれが「正しい」ものであることを示した. 2. 比較同型(d)を得るためには,Hodge複体を同型を除いて変形する技術(push-out)が必要であり,それを系統的に発展させた.そこで得たいくつかの事実は他の文脈(例えば後述のenhancementの理論)でも有用であることが分かった.また,微分形式の複体とコチェイン複体を積構造も込めてチェインレベルで比較することが重要な要素であった. 3. 一般の場合の複体L(X-Y;H)は,Yが空の場合と,Hが空の場合を統合するにあたり,ホモロジー代数的ないくつかの工夫を要した. 4. 研究の過程で得られた微分形式の複体のenhancement(強化)という概念は有用であり,さらに発展が見込まれる.例えば一つの因子に関しては,その微分形式の複体からのGysin写像(順像写像)を許容するものである(通常は微分形式は引き戻ししか持たない). 因子の代わりに一つの部分多様体についても同様のenhancementを構成できる. 5. 複体L(X-Y;H)の関手性についての研究をすでに開始している.そこでは上の微分形式の複体のenhancementが本質的である.
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今後の研究の推進方策 |
1. 微分形式の複体のenhancement(強化)という概念を発展させその理論を完成する.具体的には,代数多様体の有限個の部分多様体を与えたとき,それらの微分形式の複体からのGysin写像を許容し,それ以外は通常の微分形式と同様に振る舞う複体を構成する.また「強化された複体」の関手的振る舞いを調べる. 2. これを用いて,複体L(X-Y;H)の関手性を確立する.具体的には3つ組(X, Y; H)に対する空間対(X-Y, H-Y)のコホモロジーの反変または共変関手性を持つ場合に,それをHodge複体のレベルに持ち上げるということである. 3. 一般論に従うと,Hodge複体が与えられると対応していわゆるDeligneコホモロジーを計算する複体が得られる.我々の 複体L(X-Y;H)にこれを適用して,空間対(X-Y, H-Y)のDeligneコホモロジーを考察する.特に曲面の場合に具体的に計算する. 4. すでに得られている構成を拡張し,スムースと限らない任意の代数多様体X,また部分多様体Y, Hに対して,Hodge複体L(X-Y;H)であって空間対(X-Y, H-Y)のコホモロジーを与えるものを構成する.そのためには,DeligneのHodge理論におけるsimplicial resolutionの技法を適切に改変をして用いる.
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