研究課題/領域番号 |
19K03422
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
稲場 道明 京都大学, 理学研究科, 准教授 (80359934)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | モジュライ / 有理接続 / モノドロミー / 不確定特異点 / パンルヴェ方程式 / 接続 / 一般モノドロミー保存変形 / シンプレクティイク形式 / モジュライ空間 / シンプレクティック形式 / 接続のモジュライ空間 / 不確定接続 / 可積分系 |
研究開始時の研究の概要 |
不確定特異点を持つ接続のモジュライ空間上には,ストークスデータを保存するという意味での一般モノドロミー保存変形が定まっており,この微分方程式系の解は葉層構造をなす.代数幾何学的手法により,確定特異点を持つ接続のモジュライ空間から不確定特異点を持つ接続のモジュライ空間への退化を構成することができるが,このモジュライ空間の族の上に一般モノドロミー保存変形の拡張を構成することが本研究課題の主要目的である.
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研究実績の概要 |
射影直線上の階数2の有理接続で極因子の次数が4となるもののモジュライ空間の族の上には(一般)モノドロミー保存変形が定まり、パンルヴェ1~6型方程式の初期値空間となるべきものとなる。しかしこのモジュライ空間が岡本初期値空間と同型になることは自明に従うわけではない。確定特異点型の場合には、岩崎氏と齋藤氏との共同研究においてΦ接続のモジュライ空間を導入することによって有理接続のモジュライ空間のコンパクト化を構成した。これが坂井氏による有理曲面(あるいは齋藤氏による岡本・パンルヴェ対)と同型になることを示し、結果的に有理接続のモジュライ空間が岡本初期値空間と同型になることが言えた。 この結果を不分岐と分岐を両方許す不確定特異点型の場合に拡張して、パンルヴェ1~5型の初期値空間のコンパクト化をモジュライ理論的に構成しようという研究を光明氏とともに実行し、証明の完成一歩手前まではたどり着いたと認識している。モジュライの対象の定式化、モジュライ空間の構成とその射影性、安定性の議論による対象の特定、モジュライ空間からヒルツェブルフ曲面への射の構成、例外因子の集合論的な意味での記述までは既に証明済みとなっている。次年度にはこの証明の完結を目指したいと考えている。 Biswas氏、光明氏、齋藤氏との共同研究で、確定特異点型の場合のフレーム付き接続のモジュライ空間の上のシンプレクティイク形式とポアソン構造の構成に関する結果を出し、それに加えて、放物接続のモジュライ空間上の大域代数関数のなす環の超越次数がモジュライの次元の半分以下になるという著しい結果を出した。このことから、放物接続にモノドロミー表現を対応させるリーマン・ヒルベルト写像が代数的ではない複素解析的な同型を与えることがわかる。この論文を完成させて投稿することができ、現在査読結果待ちの状態である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分岐接続のモジュライ空間の定式化とその構成、その上のシンプレクティイク構造と一般モノドロミー保存変形に関する集大成の論文を昨年3月に出版することができたのだが、この結果に関してzoomによる講演を5月に行った。その中で今後の更なる研究発展の方向性を示すと同時に、様々な質問を受けたことから、より広い知見を得ることもできた。 パンルヴェ型の有理接続のモジュライ空間のコンパクト化に関する研究は、光明氏が積極的に計算を推し進めてくれたおかげで飛躍的に進展した。極因子を変形したモジュライ空間の族を考えるという研究代表者自身のアイデアも取り入れることにより、見通しのよい証明の枠組みが出来上がった。あとは具体的な計算によるモジュライの非特異性とblow-upの正確な記述を残すだけとなり、完成一歩手前までたどり着いたと言えるので、順調な進展していると言える。 春から夏にかけて、廣惠氏、山川氏と研究交流を行い、新しい研究の芽も見出すことができた。お互いに十分な時間の確保が難しいので、すぐに結果にはできないかもしれないが、将来は研究結果を生み出すことにつながると見込まれる。それと同時に、「パンルヴェ方程式の幾何学とその周辺」という題名の研究集会を廣惠氏・山川氏と共同で企画し、2024年3月に東京理科大学で実現することができた。この研究集会では、パンルヴェ方程式に関わる研究者だけでなく、関連の深い分野の研究者も交えて講演をしてもらった。参加者からは純粋な興味に基づく質疑や討論が促進されて、研究代表者にとっての知見を得るだけでなく、参加者の多くの研究促進にも貢献できたのではないかと思う。この研究集会は次年度も実施予定の方向となり、今後の研究の発展をもたらす効果も期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
射影直線上階数2の有理接続で極因子の次数が4となるもののモジュライ空間のコンパクト化について光明氏と共同で研究しており、これを推し進める予定である。このコンパクト化は、パンルヴェ1~6型方程式の初期値空間のコンパクト化として知られる坂井氏による有理曲面(あるいは齋藤氏による岡本・パンルヴェ対)に同型になると期待している。これまでの研究で、証明の完結一歩手前までたどり着いており、モジュライ空間の非特異性とヒルツェブルフ曲面のblow-upと同型になることの正確な議論ができれば完結する見込みである。例えば分岐接続のところだけで見るとblow-upの順番が求めるものに一致するかどうかは見通しが持てない。しかし極因子を変形するunfoldingのアイデアを用いることにより、見通しのよい議論は得られており、あとは具体的な対象に対する計算によって議論を完遂したいと考えている。 まだ手を付けていない今後の研究の方向性としては、不確定特異接続のモジュライ空間上のシンプレクティック形式と他の研究結果によるものとの一致を示すこと、有理接続のモジュライ空間の既約性で未解決の場合の考察、ストークスデータのモジュラ空間の特異点解消と有理接続のモジュライ空間との比較など、その他色々あるが、若手研究者などと共同で取り組んだ方が効果的と思われる。2024年3月に立ち上げた研究集会「パンルヴェ方程式の幾何学とその周辺」での研究交流から更なる研究発展の可能性を示唆する知見が得られたので、今後少なくとも2回程度は、この研究集会の企画を続けたいと考えている。共同企画者の廣惠氏と山川氏それぞれと研究打ち合わせの機会も作りながら、研究集会の企画を進めたいと考えている。
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