研究課題/領域番号 |
19K03424
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊吹山 知義 大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (60011722)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | パラモジュラー形式 / 代数的保型形式 / 超特異アーベル多様体 / 種の理論 / 次元公式 / L 関数 / モジュライ / 類数 / ジーゲル保型形式 / 4元数的エルミート形式 / 微分作用素 / 特殊関数論 / ラングランズ予想 / 類数公式 / ゼータ関数 / pullback formula / アイゼンシュタイン級数 / 特殊多項式 / 4元数的エルミート群 / アーベル多様体 / 四元数的エルミート形式 / 保型的微分作用素 |
研究開始時の研究の概要 |
保型形式とはある種の高度な対称性を持つ解析関数のことで、数の存在の様子を記述するガロア表現や整数論と深く関わる対象である。本研究は定義も見かけも異なる保型形式が、実は本質的には全く同じ重要なデータを内包するという何種類かの観察を精密化し、証明しようとする試みである。その過程で自然に現れる微分作用素や特殊関数論も研究する。以上の対象は暗号理論にも利用される超特異幾何学を記述する算術的手段にもなっている。これらの多くの数学的対象の重層的交わりを総合的に研究する。
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研究実績の概要 |
(1)レベルが素数 p のパラモジュラー群に対するジーゲル保型形式(パラモジュラー形式)の、対合に関して、+1 およびマイナス -1 になる空間の次元公式を論文にまとめた。このうち、プラスに対応するものは偏極(1,p) に対するクンマー曲面のモジュライに付随する保型形式環を与え、特にウェイト3のものは、この標準因子と対応しており、申請者の次元公式を用いて、この次元が 0 なるような素数レベルを完全に決定した。これ以前には V. Gritsenko, C. Poor. D. Yuen 等の小さな素数での個別的な実験的な結果があったが、これをすべての素数で決定したものである。 (2) 2次体の極大とは限らない整数環の種の理論はガウス・ディリクレ以来の古典的な整数論の花形であったが、いわゆる種指標の L 関数の具体的な公式はごく最近、金子昌信、水野義紀が結果を出版するまで知られていなかった。筆者はこの別証を以前から保持していたが、今回、固有イデアルがみな局所単項であるという事実に注目して、種指標の値の古典的な具体的な記述などをすべてアデールで書き直し、前記の L 関数の公式についての非常に明快な短い証明を与えた。申請者の知る限り、整数論の長い歴史にもかかわらず、このような記述は初めてである。 (3) Chia-Fu Yu(台湾中央研究院), V. Karemaker(ユトレヒト)と、超特異アーベル多様体の、central leaf の個数や偏極の個数等に関して、その個数が 1 になる多数の幾何学的な対称の決定をおこない、論文にまとめた。 (4) R. Salvatti Manni, G. Mondello(ローマ), S. Grushevsky(アメリカ)と主偏極アーベル多様体のモジュライの moving slope の評価を研究史、申請者の微分作用素の理論を応用して論文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パラモジュラー形式と代数的保型形式に関する申請者の極めて具体的な対応予想(いわゆるラングランズ予想の一種)は、最近、外国の数名の研究者によって解決されており、これにより当初のこの部分の研究目的は達成されていたと言える。これにより、対合による固有空間の次元公式を申請者が素数レベルで確定させたのは進化である。もう一つの大きな研究目標、つまり領域の制限に関して保型性を保つ微分作用素の理論は、少なくともジーゲル保型形式に関しては、理論的にも具体的にもほとんど完全なる記述が得られたと言える。以上は当初の計画以上に進展したところである。一方で、パラモジュラー形式と半整数ウェイトのジーゲル保型形式の比較、これと微分作用素を通じての、ヘッケ作用素の固有値の合同に関する Harder 予想の研究については、まだ十分わかっていない。半整数ウェイトの等価物と思われる2次ヤコービ形式の低いレベルでの構造定理については、それなりに進展があり、これがこの方面の第一歩になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 低いレベルに関する2次ヤコービ形式の構造定理を具体的に求め、これらの次元公式、およびヘッケ作用素の固有値などをもとに、整数ウェイトのパラモジュラー形式との間にあり得る対応関係を調べる。これはパラモジュラー形式に関する Harder 予想を記述するための基礎となると考えられる。ここではヤコービ形式の構成については、ランキン・コーエン型の微分作用素を本質的な手段として用いる。またパラモジュラー形式との比較においては、具体的な関数に対しての実験を行うことになる。このため、数式処理ソフトおサービスを更新するなどの準備をする。 (2) アーベル曲面についての一般化志村谷山予想について、ウェイト2のパラモジュラー形式を具体的に調べるために、2次体の極大でない環に関するヒルベルトモジュラー群に関するヒルベルト保型形式からのリフトを調べる必要が生じる。この部分については、具体的なカスプの構造などもあまりはっきりしておらず、想定よりも複雑なようであるが、種指標の L 関数の公式などを援用しながら研究する。 (3) 以上について、この分野に造詣の深い、青木宏樹、Cris Poor, David Yuen などと研究討論を行うため、直接会って研究討論を行う。 その他、適宜、国内外の研究集会に出席、発表などをおこない、国内外の研究者と研究討論を行う。 (4) その他、超特異アーベル多様体のモジュライ軌道、アイゼンシュタイン級数の引き戻し公式、その他の関連する研究を適宜行うと共に、以前から進めている、代数的保型形式と幾何学に関する本の執筆を継続する。
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