研究課題/領域番号 |
19K03460
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
中江 康晴 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (80506741)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | トート葉層構造 / 左順序付け可能基本群 / アノソフ流 / Birkhoff section / 結び目群の全射準同型 / モンテシノス結び目 / essential lamination / L-space予想 / アノソフ流の手術 / 左順序付け可能性 / トーラス束結び目 / 左順序付け可能 / L空間予想 / 3次元多様体 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、低次元トポロジーにおいて強力な不変量となっているヒーガードフレアーホモロジーと、古典的な位相不変量である基本群の性質を結ぶ、L空間予想に関する研究を行う。特に、結び目や絡み目に沿ったデーン手術や、分岐被覆によって構成される閉3次元多様体に着目し、その多様体の基本群が左順序付け可能になるための条件を得ることと、余次元1の葉層構造であるトート葉層構造の具体的な構成を目指す。また、アノソフ流の閉軌道に沿ったデーン手術にも着目することで、トート葉層構造とアノソフ流の力学的性質との関連も研究を行う。
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研究実績の概要 |
基本群の左順序付け可能性をR-coveredアノソフ流の存在を用いて示す手法に関連して、野田健夫氏(東邦大学理学部)と共同研究を進めた。8の字結び目に沿った2-手術で(2,4,5)-orbifold上の単位接束となる多様体が得られることが知られており、これによる推移的R-coveredアノソフ流である測地流に、8の字結び目による種数1曲面束と同じモノドロミーをもつ種数1のBirkhoff sectionを構成し、この研究成果に関する口頭発表を行った。これは、1-手術に対し(2,3,7)-orbifoldに対して同様の構成がDehornoyの論文によって得られていたものの新しい例となっている。 結び目群の性質に関連して、北野晃朗氏(創価大学理工学部)と共同研究を進めた。二つの結び目に対するそれぞれの結び目群の間に全射準同型がある場合、それら二つの結び目の性質、特に種数やアレキサンダー多項式に関する特徴を関連づけることができる。8の字結び目は二橋結び目であり、8の字結び目の結び目群に全射準同型を持つような結び目群を持つ結び目について研究を行った。このような全射準同型をもつ結び目のうち、ロンジチュードがこの全射準同型によって自明な元に写るものの構成を行い、全てが曲面束結び目になるような無限族を構成し、学会や研究集会において口頭発表を行った。 アノソフ流の閉軌道に沿った手術の手法に関連して、市原一裕氏(日本大学文理学部)と共同研究を行った。2021年に出版した論文の内容のうち、アノソフ流によって得られる葉層構造が横断的に向きづけ不可能な場合については未解決であったため、この問題の解決のため、Asaoka、Bonatti、Martyによるpositive Birkhoff sectionの構成を適用する検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アノソフ流の閉軌道に沿った手術により新たなアノソフ流を得る手法について、野田健夫氏と定期的にオンラインまたは対面により研究打ち合わせをして共同研究を進めている。DehornoyのBirkhoff sectionの構成を発展させて、(2,4,5)-orbifoldに対して8の字結び目の曲面束としてのモノドロミーと同じモノドロミーを持つ種数1のBirkhoff sectionを構成した。これは8の字結び目の2-手術で得られる多様体に対するものであり、現在は3-手術で得られる(3,3,4)-orbifold上の単位接束の測地流に対して、同様の構成をする研究を行っている。 結び目群の間の全射準同型に関連する北野晃朗氏との共同研究により、8の字結び目と結び目群の間の全射準同型をもつ結び目の構成を行い、全て種数が2であり曲面束となっている結び目の無限族と、全て種数が3であるが曲面束となっていない結び目の無限族を得た。いずれもこれらの全射準同型はロンジチュードを自明な元に写すものとなっている。前者はsymmetric unionとなっており、後者はsymmetric unionではない結び目である。この構成で得られた結び目は、アレキサンダー多項式が8の字結び目のアレキサンダー多項式の2乗ともう一つの結び目のアレキサンダー多項式の積の形になっており、この構成をさらに一般化する研究を進めている。 2021年に出版した市原一裕氏との共同研究の論文のうち、アノソフ流に付随する葉層構造が横断的に向きづけ不可能な場合に未解決であった部分について、Birkhoff sectionの構成を結び目に沿った手術の観点から考察し、Asaoka、Bonatti、Martyによるpositive Birkhoff sectionの手法を用いるための検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題のテーマであるL-space予想に関連して、野田健夫氏と、基本群の左順序付け可能性を導くR-coveredアノソフ流の構成を、閉軌道に沿った手術の観点から行う。8の字結び目に沿った3-手術で得られる(3,3,4)-orbifold上の単位接束の測地流に対する、種数1で8の字結び目のモノドロミーと等しいモノドロミーを持つBirkhoff sectionの構成を継続して行う。その構成のためには、(3,3,4)-orbifold上の適切な測地線を定める必要があり、そのような測地線の構成に関する研究を行う。また、さらに一般に閉軌道に沿った手術で得られる多様体のR-coveredアノソフ流の構成について研究を行う。 北野晃朗氏と進めている結び目群の間の全射準同型に関する研究をさらに進めて、構成の一般化を行う。このような全射準同型を持つ構成を特にモンテシノス結び目について行っており、モンテシノス結び目はL-spaceとなる手術をもつ結び目を含んでいるため、L-space結び目の存在や手術で得られる多様体の基本群の左順序付け可能性との関連についての研究を進める。 種数1曲面束結び目に沿った手術で得られる多様体のアノソフ流に対し、安定/不安定葉層構造が横断的に向きづけ不可能な場合についてのR-coveredアノソフ流の構成について、Birkhoff sectionの構成の観点から、市原一裕氏と研究を進める。
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