研究課題/領域番号 |
19K03466
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐藤 進 神戸大学, 理学研究科, 教授 (90345009)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 曲面結び目 / 2次元結び目 / 3重点数 / ブランチ点 / 射影図 / 仮想結び目 / 交差多項式 / ねじれ多項式 / 奇ねじれ数 / クシイ変形 / 不変量 |
研究開始時の研究の概要 |
1 次元の結び目は射影図を用いることでさまざまな不変量を生み出し, 幅広い応用とと もに活発に研究されてきた. これに対し2次元の結び目の研究はその視覚化の困難さから構成と分類の両面で立ち遅れている. 本研究では曲面結び目の射影図が内包する複雑さを考察し, 4 次元空間の中の曲面結び目を実際に目で見て扱えるレベルまで落としてその性質を解明する. 古典結び目の研究と曲面結び目の射影図とを組み合わせることで, 曲面結び目の新しい不変量を探索し, 古典結び目と曲面結び目の類似性と相違性に着目しながら曲面結び目の分類と構成につなげる.
|
研究実績の概要 |
4次元ユークリッド空間に滑らかに埋め込まれた閉曲面を曲面結び目といい、特に球面の埋め込みを2次元結び目という。また、曲面結び目を3次元ユークリッド空間に射影した像で、その自己交差集合に4次元における上下の交差情報を与えたものを、曲面結び目の射影図という。射影図は離散的な3重点とブランチ点を持ち、特にすべての射影図にわたる3重点の個数の最小値を曲面結び目の3重点数という。3重点数を用いて曲面結び目(特に2次元結び目)を分類することは、曲面結び目理論における基本的課題である。 前年度までの研究において、3重点数が4以下である2次元結び目の決定を行ったが、その際に曲面結び目の射影図の自己交差集合の重要性を認識するに至った。そこで本年度は、自己交差集合に着目して、それが2次元結び目の自己交差集合である場合に満たす性質について研究を行った。これまでの研究で、2次元結び目の最小射影図(3重点数を実現する射影図)において、2つのブランチ点をつなぐ2重点線分上に3重点がちょうどひとつ存在することはないことがわかっていた。2次元結び目の切断面に現れる絡み目のプロパー性やこれまでに開発した手法を用いることで、この結果を次のように一般化できることがわかる:2次元結び目の射影図の2つのブランチ点をつなぐ単純2重点線分に対し、それがミドルシートと横断的に交わる3重点の個数は偶数である。 3重点数を用いて2次元結び目を分類するためには、自己交差集合となりうるグラフの候補のリストを作成することが重要である。上記の結果を用いることで、射影図がブランチ点を持つ場合に、多くの候補を除外できることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次元結び目を3重点数を基準にして分類するためには、与えられた個数の3重点をもつ自己交差集合に着目して、そのグラフをリストアップすることが必要である。そのために、正の種数をもつ曲面結び目では一般に成り立たないような、2次元結び目の場合に特有な性質をを利用することができる。 本年度の研究では、射影図が特にブランチ点を持つ場合に、2つのブランチ点をつなぐ単純2重点線分上の3重点を調べ、2重点線分がミドルシートと横断的に交わるような3重点が偶数個あるなど、その性質を明らかにすることができた。この結果は、2重点線分がちょうど1個の3重点数を通過するならば、その3重点は消去することができることを意味している。 本年度、および昨年度までの研究により、2次元結び目特有のさまざまな性質を明らかにすることができ、自己交差集合の特徴付けに関する研究を大きく進展させることができたといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、2つのブランチ点をつなぐ単純2重点線分上に、ある種の3重点が必ず偶数個存在することがわかった。この結果が単純とは限らない2重点線分に対しても拡張できるかどうかを調べるために、2次元結び目の射影図を3次元ユークリッド空間の中のトーラスで切断したときに現れる断面の絡み目が持つ性質について研究を進めていきたい。その性質を明らかにすることで、正則とは限らない射影図における2重点円周に対しても、その特徴付けを与えることが期待できる。
|