研究課題/領域番号 |
19K03474
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
服部 広大 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (30586087)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 写像のエネルギー / 特殊なホロノミー群 / 四元数ケーラー多様体 / 幾何学的量子化 / 調和写像 / キャリブレーション / 超ケーラー多様体 / K3曲面 / スペクトル構造 / 正則切断 / ボーア・ゾンマーフェルトファイバー / 測度距離空間 / 測度付きグロモフ・ハウスドルフ収束 / ケーラー多様体 / 正則切断の局所化 / シンプレクティック多様体 / グロモフ・ハウスドルフ収束 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、微分幾何学的な構造に対してグロモフ・ハウスドルフ位相の概念を一般化し、それを豊富な直線束をもつコンパクトケーラー多様体全体のなす空間に適用する。これは射影代数多様体の列に対して収束の概念を定義することに相当する。そして、射影代数多様体の列の極限として現れる距離空間の構造を研究することによって、複素幾何学とシンプレクティック幾何学を繋ぐ枠組みを作り、幾何学的量子化への応用を目指す。
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研究実績の概要 |
2023年度は、リーマン多様体の間の写像のエネルギーに対して、それを最小化する写像について研究した。特に、一つのリーマン多様体を固定した際に、恒等写像がそのホモトピー類のなかでいつpエネルギーを最小化するか、という問題に着手した。ここでpは1以上の実数定数である。一般のコンパクトリーマン多様体に対して、恒等写像はpエネルギーの臨界点であることが知られているが、最小点であるとは限らない。実際に、n次元の標準球面の場合、pがn以上ならばpエネルギーをホモトピー類の中で最小化するが、pがn未満であるとそうではないことが知られている。また、実射影空間の場合は恒等写像が2エネルギーを最小化することもCrokeの研究によって明らかにされている。 研究代表者は、pエネルギーを含むより広いクラスのエネルギー汎函数を定義した。そしてキャリブレートされた写像の概念を応用し、コンパクト四元数ケーラー多様体の恒等写像によって最小化されるエネルギーのクラスを具体的に挙げることに成功した。ここで現れるエネルギー汎函数は従来考えられていたpエネルギーを含まないが、その変異体と考えられるようなエネルギー汎函数であり、リーマン幾何学において新たに研究対象とするべき汎函数のクラスを導入することができた。また、この結果により、コンパクトな四元数ケーラー多様体の恒等写像を含むホモトピー類上で、4エネルギーの値の下限が正となることの証明を与えた。ただしこの結果自体は、四元数射影空間の場合にはHoisingtonによる先行研究によってすでに示されており、またWhiteによって1986年に証明された結果から導くことも可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度までに研究代表者が導入した、キャリブレートされた写像の概念を応用し、恒等写像のエネルギー最小性に対して新たな知見を得ることができるようになった。写像のエネルギーに対する理解が深化し、キャリブレーションの有効性が明らかになったので、本研究課題は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、キャリブレートされた写像のさらなる具体例を探し、その応用を研究する。シンプレクティック多様体上のラグランジュファイブレーションは、幾何学的量子化における実偏極と呼ばれる重要な対象であり、特にボーア・ゾンマーフェルトファイバーの個数がリーマン・ロッホ数と一致する具体例が数多く観察されており、研究代表者の以前の研究において、この問題を測度付きグロモフ・ハウスドルフ収束の観点から捉える事に成功している。ラグランジュファイブレーションを与える写像を、キャリブレートされた写像とみなすことにより、この観点の研究に新たな視点を与えることが期待される。このためには、どのような微分形式によってキャリブレートされるのか、その定式化を明らかにすることが求められる。また、幾何学的量子化では、実偏極に収束するケーラー偏極を研究対象とするが、これを写像として捉える見方は現時点では明らかになっていない。前量子化束の単位円周束と、底空間の複素構造の組からなるデータを、ある空間の間の写像とみなすことができるかどうかを研究する。
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