研究課題/領域番号 |
19K03490
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 哲也 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00710790)
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研究分担者 |
大槻 知忠 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (50223871)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 低次元トポロジー / 正結び目 / 矯飾的手術 / 矯飾的交差 / 組みひも群 / 結び目 / オープンブック分解 / 接触幾何 / 量子トポロジー |
研究開始時の研究の概要 |
量子トポロジー・接触トポロジーともに現在活発に研究され、進展が著しい3次元のトポロジーの研究分野であるが、それぞれの分野の課題や未解決問題や目標は大きく異なり、二つの研究分野間の交流は活発とは言えない。近年、二つの分野に相互関連や応用があることを示唆する結果が得られており、二つの分野に密接な関連があることが期待される。このような現状を踏まえて、接触幾何の情報を量子不変量あるいはそれに関連した不変量から得ること、また逆に量子不変量に関連する情報を接触幾何の手法や情報から得ることを研究し、二つのトポロジーの分野の統合を目指す。
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研究実績の概要 |
昨年に続き、結び目のpositivityについての研究を継続した。従来の結び目のpositivityを包括的に扱えるようにpositiveの概念を拡張・一般化しする新たなクラスとして連続的概正結び目の概念を導入し、その性質をさらに発展させた。連続的概正結び目は正結び目・概正結び目の持つ多くの性質を持つことを示した。特に、連続的概正結び目の多項式不変量は様々な非自明な性質を持つことを明らかにした。また、一般化だけでなく、議論の枠組みを連続的概正結び目に一般化・拡張することにより、正結び目について帰納的な議論を行うことが可能となり、正結び目・概正結び目のConway多項式の係数について、これまでの結果の大幅な改良に成功した。
また、矯飾的手術・矯飾的交差予想についても研究を行った。鏡像的な矯飾的手術について、Heegaard Floerホモロジーを含む現在までに定義されている三次元多様体・結び目の様々な不変量の計算を経ることで、新しい有益な障害を得ることに成功した。特に、得られた障害を具体的に計算することや、その振る舞いの理論的な考察により、鏡像的な矯飾的手術の非存在をいくつかのクラスの結び目について示すことに成功した。また、矯飾的交差予想については、先行研究の手法や考えをより高次の不変量を用いて拡張することにより、より広い場合について矯飾的交差の非存在を確認することができた。
また、結び目の図式の肥沃性という性質について、接触幾何由来の不変量であるself-linking numberを活用することにより、既知の結果の大幅な改良に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題としていた接触構造と量子トポロジーのより直接的なつながりを得るまでは至っていないものの、これまであまり活用されていなかった量子トポロジーでの不変量を、矯飾的手術や矯飾的交点といった具体的な問題に活用することに成功した。また、接触幾何の観点から重要になる結び目などのpositivityについて、拡張を考察することにより、より一般的な枠組みを与えることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
接触構造との関連からは、今回導入した連続的概正結び目が強擬正(strongly quasipositive)という性質を持つかが重要な問題となる。強擬正は接触幾何でのself-linking numberによる特徴づけが予想されているため、self-linking numberと結び目のpositivityとの幾何的な考察を進めていく。self-linking numberやThurston-Beenquin numberといった接触構造由来の不変量については、HOMFLY,Kauffman多項式といった量子不変量による評価式が存在する。このような評価式と結び目のpositivityとの関連を詳細に調べることにより、ある種のpositivityを持つ結び目について、接触構造と量子不変量との関連がより直接的に得られないかを考察する。
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