研究課題/領域番号 |
19K03495
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
赤穂 まなぶ 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (30332935)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | シンプレクティック多様体 / Lagrange部分多様体 / トーリック多様体 / Polygon空間 / 境界付き多様体 / Morseホモロジー / Floer理論 / Morse理論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は, 境界付き多様体のMorse理論の構成と, そのFloer理論への応用である. 従来, 閉Riemann多様体においてMorse関数からMorse複体とその上の代数構造を構成する方法が知られていたが, 一方, 境界付き多様体については, その構成方法は未だ不明な点が多い. また, 境界付き多様体のMorse理論をトイモデルとして持つFloer理論として, 凹型のエンドを持つシンプレクティック多様体における Lagrange部分多様体のFloer理論について研究する.
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研究実績の概要 |
閉シンプレクティック多様体のLagrange部分多様体のFloerホモロジーは、あるループ空間上のMorseホモロジーと解釈することができる。これまで本研究代表者は、ある非コンパクトなシンプレクティック多様体におけるLagrange部分多様体のFloer理論を通じて、境界付き多様体のMorse理論の研究を行ってきた。当該年度は、シンプレクティック幾何にMorse理論が現れる状況として、主にシンプレクティックトーリック多様体とPolygon空間の2つの場合の周辺について調べた。シンプレクティックトーリック多様体とは実トーラスの作用とその作用に関する運動量写像を持つシンプレクティック多様体であり、その運動量写像を用いてMorse関数を構成することができる。また、シンプレクティックトーリック多様体は非斉次座標に関して複素共役を取る操作により反シンプレクティック対合写像を持ち、その対合写像の固定点全体はLagrange部分多様体となる。Polygon空間とはシンプレクティックトーリック多様体に似た性質を持つシンプレクティック多様体であり、稠密な開集合上で実トーラスの作用と運動量写像を持つ。また、自然な反シンプレクティック対合写像を持ち、その固定点全体はLagrange部分多様体となる。これらシンプレクティックトーリック多様体とPolygon空間については多くの研究があり、例えばHausmannとKnustonによりPolygon空間とその対合写像の固定点全体からなるLagrange部分多様体のコホモロジー環などが計算されている。当該年度はまだこれらのテーマに着手したばかりで飛躍的に新しい成果は得られていないが、シンプレクティック幾何においてMorse理論が具体的に現れる非常に重要な場面として注目している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで本研究代表者は、接触多様体のシリンダーをエンドに持つ非コンパクトなシンプレクティック多様体における、ある非コンパクトなLagrange部分多様体のFloerホモロジーを通じて、境界付き多様体のMorse理論の研究を行ってきた。2021年度はこれらの研究内容の見直し作業に入り、シンプレクティック幾何におけるMorse理論の研究として、シンプレクティックトーリック多様体にまで研究対象を広げた。当該年度においては、まず2021年度報告の今後の研究の推進方策で計画した、シンプレクティックトーリック多様体の非斉次座標を用いた複素部分多様体およびLagrange部分多様体の構成について考察した。また、運動量写像を用いて構成したMorse関数によるシンプレクティックトーリック多様体の胞体分割を観察した。さらに当該年度は、Polygon空間と呼ばれるシンプレクティック多様体も扱い、Polygon空間が持つbending作用と呼ばれるトーラスの作用の固定点の様子を調べることにより、Polygon空間の微分同相類について(指導する大学院生とともに)考察した。実はこれらのテーマに関してはすでに多くの先行研究があり、現時点で本研究代課題はまだ基本的な情報収集とその整理を行なっている段階であり、残念ながら数学的に新しい結果はまだ得られていない。しかし徐々にではあるが、シンプレクティックトーリック多様体の非斉次座標と複素部分多様体、反シンプレクティック対合写像の固定点全体のなすLagrange部分多様体、およびPolygon空間のbending作用に関する理解が進んだと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続きシンプレクティック幾何に現れるMorse理論を中心に研究を進める。まず、シンプレクティックトーリック多様体に関して具体的には、(1)シンプレクティックトーリック多様体の非斉次座標を用いて構成した複素部分多様体およびその上の複素直線束の複素幾何的な性質について (2)反シンプレクティック対合写像の固定点全体からなるLagrange部分多様体のトポロジーについて (3)Delzant多面体のGuilleminポテンシャルによるLegendre変換の余接束におけるLagrange部分多様体の交差理論について、などのテーマが挙げられる。また、Polygon空間に関しては(1)(2)(3)に対応して、(4)Polygon空間の適切な複素部分多様体およびその上の複素直線束の性質について (5)polygonの辺の長さを変化させたときのPolygon空間のトポロジー、および平面Polygon空間のトポロジーについて (6)Polygon空間の``Delzant多面体''のLegendre変換の余接束におけるLagrange部分多様体の交差理論について、などのテーマが考えられる。これらについてはすでに多くの先行研究があり、恐らく今後はまだしばらく基本的な情報収集とその理解に時間が割かれると思われるが、2021年度と当該年度における準備のもと、次年度は最初のとっかかりとなる何か数学的に新しい結果が得られるものと期待している。
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