研究課題/領域番号 |
19K03510
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
田中 仁 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 講師 (70422392)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 加重の理論 / Hausdorff content / L^p空間 / 共役空間 / Orlicz-Morrey空間 / sparse作用素 / Fefferman-Stein型不等式 / n重線形埋蔵定理 / Hardy-Littlewood最大作用素 / 分数べき積分作用素 / 正作用素 / Orlicz空間 / 分数べき作用素 / 荷重の理論 / ノルム不等式 / 最大作用素 / 特異積分作用素 |
研究開始時の研究の概要 |
荷重の理論は,作用素の荷重付ノルム不等式を統制するための理論であり,作用素の値域に関する情報を陽的に与えることのできる理論です.本研究は,いくつかの作用素について,その荷重の理論の進化と精密化とを企図しています。
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研究実績の概要 |
荷重の理論は、作用素の荷重付ノルム不等式を統制するための理論です。それは、作用素の値域に関する情報を陽的に示すことのできる理論です。本研究では、いくつかの作用素について荷重の理論の進化と精密化とを企図しています。 Lebesgue測度に変えてHausdorff contentという量により定義されたL^p空間の共役空間の理論は、D. R. Adamsの基本的な論文“Choquet integrals in potential theory”Publ. Mat., 42 (1998), no. 1, 3--66において展開されています。この論文において、基礎付けとなる一つの共役不等式に証明の不備を発見し(不備であることの反例を示しています)、改めてその証明を与えることに成功しました。20年間正しくない可能性のある事実が信じられていたことに驚いています。今年度、この不等式は、Hausdorff contentという量を、さらに2進立方体が造る正作用素に基づくキャパシティーという量に変えた枠組みにおいても成立することを確認しました。この結果は、このキャパシティーにより定義されたL^p空間の共役空間の理論を導くものです。 2020年、強力な道具である2進立方体の枠組みを超えて、2進直方体の新たな枠組みの下で開上双対領域においてn重線形埋蔵定理を示すことに成功しました。2022年、これの応用として、doubling荷重が造る直方体型分数冪積分作用素に対するHardy-Littlewood-Sobolevの不等式の成立を確認しました。この定理の立方体バージョンはL. I. Hedbergにより見出された、各点において立方体型分数冪積分作用素をHardy-Littlewoodの最大関数で評価する手法によります。直方体バージョンでは機能しません。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実解析的手法による調和解析の分野において、多重線形作用素の研究は現在世界的な一つの潮流となっています。1999年、Nazarov, Treil, Volbergは「双線形埋蔵定理」(bilinear embedding theorem)とよばれる単純な形を持つ荷重付双線形ノルム不等式の成立を特徴づける定理を与えました。彼らは制御理論にその源流を持つBellman関数の手法を用い、1次元かつHilbert空間の場合を取り扱いました。2009年、Lacey, Sawyer, Uriarte-Tueroは、この結果をd次元かつ上双対領域とよばれる部分へ拡張しました。彼らは2進立方体を用いたcorona分解の手法によっています。2012年、Hytoneは、この上双対領域の結果に対する初等的な別証明をparallel corona分解という新たな手法により与えました。2014年、私はParallel corona分解とWolffポテンシャルを用いることで、さらに下双対領域にこれらの結果を拡張し完全なものとしました。 多重線形化の流れを受け、2015年、私は「3重線形埋蔵定理」(trilinear embedding theorem)の研究に着手し、2016年、Wolffポテンシャルを反復して用いることでさらに一般のn重線形埋蔵定理を示すことができました。2020年、強力な道具である2進立方体の枠組みを超えて2進直方体の新たな枠組みの下で、開上双対領域において、n重線形埋蔵定理を示すことに成功しました。 この定理を応用することで、特異性のより強い積型分数べき作用素に対する荷重の理論が展開でき、これは手法としても全く新しいものです。2022年、この手法によりdoubling荷重が造る直方体型分数冪積分作用素に対するHardy-Littlewood-Sobolevの不等式の成立を確認しました。
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今後の研究の推進方策 |
Hausdorff contentという量により定義されたL^p空間上で定義されるsparse作用素の行き先は、Orlicz-Morrey空間の共役空間であることが分かりましたp=1のときは、完全な特徴づけが与えられています。それは、Orlicz-block空間の新たな簡明な特徴づけにもなっています。しかし、p>1のときは残念ながら完全な特徴づけには未だ至っていません。何とかしたいと願っています。 n重線形埋蔵定理は、新たな視点を与えるものであることを再認識しました。この切り口でさらなる探索を進めたいと思います。
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