研究課題/領域番号 |
19K03515
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 (2021-2022) 愛知教育大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
佐久間 紀佳 名古屋市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (70610187)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 自由確率論 / 無限分解可能分布 / レヴィヒンチン表現 / ランダム行列 / 擬無限分解可能分布 / メキシコ / レヴィ過程 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では自由確率論におけるレヴィヒンチン型表現の研究を行う. 確率分布に対してその特性関数がレヴィヒンチン型表現を持つものと持たないものがある. 前者の中で特にレヴィ測度が符号付き測度ではなく測度であるとき, それは無限分解可能分布となる. 本研究課題ではこの自由確率論における類似を研究する. またそれに対する, ランダム行列の構成を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究課題に関わる成果「On freely quasi-infinitely divisible distributions」を改訂した。 特に自由擬無限分解可能分布かつ擬無限分解可能分布になるような例の部分や自由擬無限分解可能分布の性質に関わる部分の改訂を行なった。ブール独立性と呼ばれる非可換確率論におけるテンソル独立、自由独立と並んで重要な独立性の元での自己分解可能性について研究を行なった。ブール自己分解可能分布の概念を導入し、特に正規分布のブール自己分解可能性について調べた。正規分布のブール自己分解可能性は全ての正規分布については言えず、ある分散/平均の値を境目にその様子が変わることが判明した。一方でブール自己分解可能分布の確率分布の性質は自由自己分解可能分布と比較的似ていることもわかった。結果として自己分解可能分布、自由自己分解可能分布、ブール自己分解可能分布と三つの自己分解可能分布のクラスの性質がそれぞれを比較しながらかなり整理された。 令和4年度はメキシコCIMATでメキシコ人研究協力者Arizmendi、大阪大学矢野孝次、Jose-Luis Perezらとレヴィ過程、無限分解可能分布などを扱う大規模な日墨確率論研究会を開いた。そこで非可換確率論における自己分解可能分布について発表を行なった。 また確率論シンポジウムで非可換確率論における自己分解可能分布についての講演を行い、日本語でのまとめを執筆した。本研究課題を進める中で、多くの擬無限分解可能分布についての問題点が明らかになった。一方でその攻略方法の新しいアイデアも出てきた。これらについて補助期間を延長し、もう少し検討、整理して次の研究の船出の準備を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた自由擬無限分解可能分布の導入と例の構成は思うようにある程度進行した。特に懸案だった初期論文の改訂も進んだ。大きな点では自由擬無限分解可能分布と擬無限分解可能分布双方に対応する分布があるような特性3つ組を見つけることに成功した。これにより当初未解決だったMarek Bozejkoによる問題を肯定的に解決することができた。細かな点では自由ポアソン分布の重ね合わせ(離散分布による複合自由ポアソン分布と言っても良い)を形式的に考えた際、その離散分布を符号付測度に変えた場合の分布の存在範囲について一般論はまだ展開できていないものの、前の未解決だった部分を組み合わせ論的な議論で減らすことができた。 またブーリアン畳み込みについての自己分解可能分布についてはほぼ狙い通りの結果を得ることができた。他方で全ての正規分布がブール自己分解可能になるとは限らないなど、これまで予想していたこととは異なった結果も出てきた。そのため新しい問題が生まれた。また逆に正規分布がブール自己分解可能であることの証明にその判定法定理を構成したため、他の分布でも同様の問題を考えてみて、ブール自己分解可能性が意味するところを深く調べていくことが必要であるとわかった。 これができたら「当初の計画以上」と主張しようと思っていた自由擬無限分解可能分布に対するランダム行列モデルの構成はまだできていない。これは自由擬無限分解可能分布に対する極限定理のようなものが完成できないと従来知られている自由無限分解可能分布のランダム行列の拡張による構成はできない。これは少し難しそうな問題であるので多少実現できる範囲を狭めても違うアイデアから考えていく必要があるだろう、という見立てがたった。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた自由擬無限分解可能分布の導入と例の構成は思うようにある程度進行したため今回の研究で残った課題について進めていく。特に自由擬無限分解可能分布の構成方法について色々新しいアイデアがいくつか生まれた。それらについて一つ一つ検証していくことが次の研究の第一歩となると考えている。 また具体的な場合の計算ができているが一般論が展開できていないものがまだ数多くある。たとえば自由ポアソン分布から作る自由擬無限分解可能分布についてはその存在証明の一般論がまだ構築できていない。確率論におけるポイヤの定理のようなものを見つける必要がある。また自由擬無限分解可能分布と擬無限分解可能分布双方に対応する分布があるような特性3つ組を見つけることに成功した。自由無限分解可能分布と無限分解可能分布の間では極限定理によるそれぞれの対応付けがわかっているが、擬無限分解可能分布レベルでは自由確率論の場合と確率論の場合との対応づけをどうやってすれば良いかがまだ全くわかっていない。言い換えれば形式的に同じ特性3つ組で対応する分布が存在することがわかっているだけである(これだけでも十分に探すのは困難であったが)。この点について考察していく必要がある。このためにはある程度確率論における擬無限分解可能分布についてももう少し深く考察しておく必要があるのではないかと考えている。特に確率過程のレベルでの研究などがその鍵を握っているのではないかと考えている。その意味で最近擬無限分解可能分布と関連付ける確率過程のアイデアquasi-infinitely divisible processesなども現れているのでその考え方がどの程度今後の一般論の展開に使えそうかを検討する。
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